カフェや駅、テーマパークなど、人が集まるような場所へ出かけた時、喧嘩をしている男女を見かけることがある。不思議なことに、男性同士、女性同士のケースはまずない。男女一組サシでやりあっていることが圧倒的に多い。声を荒げていなくても、醸し出す雰囲気で「あ、この人たち喧嘩してる」とすぐに分かる。できればその場をすぐに去りたいところだが、待ち列やカフェなどで遭遇してしまった場合、一部始終を見守ることになってしまう。

一度気になりだすと、まず「喧嘩の原因は何なのだろう」と思いを巡らす。だいたいの場合、"既に始まっている喧嘩を途中から見る"というケースが多い。映画を途中から観る時、なかなかついていけないのと同じで、何せ主役の二人とは初対面である、分からないことだらけだ。しかし、気をつけたいことがある。決して聞き耳を立てないことだ。他のことに気を取られている振りをして、素知らぬ顔で見守ろう。

喧嘩は、些細なことがきっかけで始まる。人前での喧嘩となれば、なおさらだ。ドラマで見かけるような、「コップの水を相手に浴びせる」、「相手をひっぱたく」という展開を迎えることは、まずない。ピリオドを打つのは、

「帰る。」

という、捨て台詞と退座である。こちらとしては"やれやれ"という気持ちにさせられる。同じ場所へ帰らなければならない同棲中の二人や夫婦の場合、こんなに潔い幕引きは見られない。

さて、喧嘩の火種になるのは、態度もさることながら、言葉の使い方である。

「疲れた。」 「暑い(寒い)。」 「まだ?」 

という言葉は、「それって、自分のせい?」と、責められているような気になるものだ。こういう時は、「ちょっと休まない?」、「今日、暑いね」、「待つねぇ」など、表現を変えて相手に投げかけたい。これなら、相手の相槌も「そうだね」で済む。喧嘩には発展しないだろう。

 

― 人前で喧嘩をする人は、周りが見えていない。聞いていないようで聞いている人たち、見てないようで見ている人たちがたくさんいる。囲まれていると言ってもいいいだろう。言葉を上手に選んで、二人だけの時間を仲良く過ごしたいものだ。