第二種金融商品取引業協会への加入はリスク管理の視点で! | 実践!金商法コンプライアンス

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金融商品取引業に関する法令等・登録申請・社内体制を実践解説!
不動産アセットマネジメント会社、外資系ファンド会社など顧問先多数。
金融商品取引法分野に専門特化した特定行政書士國府栄達がお伝えします。


金融法務コンプライアンスの専門家@日本橋の行政書士國府です。


このブログをお読みいただきありがとうございます!

昨年から一部のファンド業界や不動産業界で注目されている話題があります。それは・・・



「当社は、第二種金融商品取引業協会に加入すべきか?」



というもの。

実は、多くの第二種金融商品取引業の登録を受けている金融商品取引業者(以下「第二種金融商品取引業者」といいます。)は、平成26年5月30日付で公布された改正金融商品取引法によって、同法が施行される平成27年5月末(遅くとも5月29日までには施行される予定です。)までに、次のいずれかの対応が求められているんです。


<選択肢①>
認定金融商品取引業協会である「第二種金融商品取引業協会へ加入する。


<選択肢②>
第二種金融商品取引業協会へ加入しない場合は、この協会が定める自主規制規則に準じた内容の社内規則を作成し、かつ、この社内規則を遵守するための体制を整備する。


私も、昨年から・・・

「協会加入の趣旨はよくわかったけど、かかる費用が高いよね・・・」

「それなりの費用を負担して、得られるメリットが今一わからないんだよね・・・」

といった声を業界関係者の方々からよく耳にしています。


そこで、今回は第二種金融商品取引業者の第二種金融商品取引業協会への加入の問題を中心に、金融商品取引業協会への加入についての私見を少し整理してみました





1.法改正に至った経緯

平成19年9月30日に金融商品取引法が施行してから今日に至るまで、実にたくさんの第二種金融商品取引業者が誕生しました。

様々な分野で活躍する第二種金融商品取引業者がいる一方で、この第二種金融商品取引業者による不祥事や不適切な行為もたくさん起こっている現実があります。

これまで第二種金融商品取引業者の多くが、業界の自主規制機関である第二種金融商品取引業協会に加入していない実態があり、金融当局は
第二種金融商品取引業者の多くが協会の自主規制規則(業界団体の自主規制ルール)に服することなく業務を行ってきたことが、このような不祥事を招いた原因の一つだと考えたようです。

そして、今後、第二種金融商品取引業協会がその自主規制機能や牽制機能をもっと発揮していくことによって、業界の不祥事や不適切な行為を未然に防いでいく必要があると・・・


ただ、第二種金融商品取引業者の多くが、この協会に加入していない現状を考えると、
まずは多くの第二種金融商品取引業者に協会へ加入してもらい、協会への加入率を向上させる必要が前提としてあるわけです。


そこで、昨年の第186回通常国会で金融商品取引法が改正され、改正金融商品取引法によって、(まだ協会に加入していない)第二種金融商品取引業者は、平成27年5月末までに・・・

第二種金融商品取引業協会へ加入する
②同
協会へ加入しない場合は、同協会が定める自主規制規則に準じた内容の社内規則を作成し、かつ、この社内規則を遵守するための体制を整備する

といった
いずれかの対応が求められることになりました。
(改正後の金融商品取引法第29条の4第1項第4号二)


出典:「金融商品取引法等の一部を改正する法律(平成26年法律第44号)に係る説明資料」(平成26年5月、金融庁)
(URL:http://www.fsa.go.jp/common/diet/186/01/setsumei.pdf


この法改正によって、協会への加入が促進され、協会による牽制機能が確保されることが期待されています。


また、協会に加入しない第二種金融商品取引業者に対しては、少なくとも協会が定める自主規制規則に準じた内容の社内規則の作成とこれを遵守するための体制が整備されることになっていますので、いずれの場合であっても協会の影響が第二種金融商品取引業者に及ぶことになります。





2.協会加入・社内規則の整備等は登録拒否事由である!


改正金融商品取引法によって、
第二種金融商品取引業者に前述の①または②のいずれかの対応が求められることになったわけですが、ここで第二種金融商品取引業者の皆様には注意していただきたいことがあります。

それは、この要求は「第二種
金融商品取引業の登録拒否事由(登録拒否要件)として課せられたものである」ということです。
(改正後の金融商品取引法第29条の4第1項第4号二)

もし、改正金融商品取引法が施行した時点で、第二種金融商品取引業
協会への加入もせず、また、同協会の自主規制規則に準じた内容の社内規則も作成していない第二種金融商品取引業者は、登録拒否要件に該当し、行政処分の対象となります。

つまり、どちらの対応もできていないことは、第二種金融商品取引業の登録を受ける(または既に受けた登録を維持する)ための要件を満たしていないことになり、金融商品取引法第51条に基づく業務改善命令、または同法第52条第1項第2号に基づく業務の停止(最大6ヶ月間)、最悪の場合は登録の取消しといった行政処分の対象となってしまうのです。

また、仮に「第二種金融商品取引業協会に加入しない」という選択をとった場合、この協会非加入の第二種金融商品取引業者が作成した社内規則の内容が、「同協会の自主規制規則に準ずる内容のものとは認められない!!」となってしまいますと、やはり登録拒否要件に該当し、行政処分の対象となってしまうのです。

社内規則に不備がある場合も行政処分の対象となってしまう点にも注意が必要なんですね。


協会の加入・非加入の選択は、単にそのコストだけでみるのではなく、この法令違反リスク(行政処分リスク)も十分に加味した上で慎重に考えるべきです。





3.新規登録申請のときから協会の加入・非加入を選択

改正金融商品取引法が施行した後、第二種金融商品取引業の(新規)登録申請を行う場合は、もちろん登録申請を行う時点で、

第二種金融商品取引業協会へ加入する
②同
協会へ加入しない場合は、同協会が定める自主規制規則に準じた内容の社内規則を作成し、かつ、この社内規則を遵守するための体制を整備する

といったい
ずれかの選択をしなければなりません。

この法改正により、登録申請の時点(参入段階)で、金融当局により協会へ加入するか否かの確認がとられ、もし協会に加入しない場合は、協会の自主規制規則に準じた内容の社内規則が作成されているか、また、この社内規則を遵守するための体制が整備されているかについて審査が行われることになります。

なお、登録申請の際に、仮に②を選択した場合は、登録申請者が作成した社内規則を金融当局へ提出することになりますので、申請時に必要な社内規則を一式準備しておく必要もあります。
(改正後の金融商品取引業等に関する内閣府令(案)第10条第1項第2号)





4.第一種金融商品取引業者と投資運用業者も同じ!

改正金融商品取引法の施行日
までに、①金融商品取引業協会へ加入する、②協会へ加入しない場合は、同協会が定める自主規制規則に準じた内容の社内規則を作成し、かつ、この社内規則を遵守するための体制を整備する、といったいずれかの対応が求められるのは、何も第二種金融商品取引業者だけではありません。

同様に、登録申請の時点(参入段階)で、協会へ加入するか否か、協会に加入しない場合は、協会の自主規制規則に準じた内容の社内規則が作成されているか、また、この社内規則を遵守するための体制が整備されているかどうかが審査されるのも、第二種金融商品取引業者だけではありません。


これは、第一種金融商品取引業者と投資運用業者も同じです!


実は、第一種金融商品取引業者と投資運用業者については、従前から金融商品取引業協会に加入していない業者に対して、金融当局による協会の自主規制規則等を考慮した監督が行なわれることになっていました。

また、金融当局は、協会に加入していない業者に対しては、協会の自主規制規則を考慮した社内規則の作成や変更を命じることもできました。(改正前の金融商品取引法第56条の4)

しかし、従来からあるこの仕組みは、この度の法改正によって新たに登録拒否要件として整備された前述の①、②と趣旨が重複するために廃止されることになります。

その代わりに改正金融商品取引法の施行後は、第一種金融商品取引業者と投資運用業者も第二種金融商品取引業者と同様の登録拒否要件(前述の①、②)が課せられることになります。(改正前の同法第56条の4は削られ、以後は同法第29条の4第1項第4号二が適用。)


ただ・・・

日本証券業協会に加入しない
証券会社(第一種金商業者)
金融先物取引業協会に加入しないFX会社(第一種金商業者)
投資信託協会に加入しない投資信託の運用会社(投資運用業者)
投資顧問業協会に加入しない資産運用会社(投資運用業者)

というのは、正直稀ではないかと思うのです。

なので、第一種金融商品取引業や投資運用業の世界では、従来から協会加入が促進される環境にあったことから、この法改正によって「協会に加入すべきか?それとも社内規則を整備するか?」といった問題は起こらないはずです。

(ただ、第一種金融商品取引業と第二種金融商品取引業の両方の登録を受けている場合などは、第二種業の登録を受けている関係でこの度の法改正への対応が必要となりますが・・・)





5.結局のところ協会へは加入すべきか?

以上、第二種金融商品取引業者を中心に協会加入についてみてきました。

結局のところ、協会に加入するかどうかの問題は、第二種金融商品取引業者の立場で考えると、
改正金融商品取引法に基づいて新たに求められる登録拒否要件(改正後の同法第29条の4第1項第4号ニ)に関する前述の「2」でみた協会に加入しないことによる法令違反リスク(行政処分リスク)、ひいてはレピュテーションリスクに対し・・・

①自社で受け入れて、コントロールしていくのか
②費用を伴って協会に加入することでリスクの軽減(リスクヘッジ)を図るのか

というリスク管理の問題になるのではないかと私は考えています。

最終的に、自社でこのリスクを受け入れ、十分にコントロールすることができるのであれば
協会へ加入する必要性は乏しいと思います。

逆に、自社でこのようなリスクを極力受け入れたくない、またはコントロールできる能力がない、あるいはその自身がないということで
あれば、協会に加入してリスクヘッジを図るほか方法はありません。

また、両方とも対応したくない場合は・・・廃業するしかありません。


協会加入の問題は、結局のところ費用を伴い法令違反リスク(行政処分リスクを軽減するのか、出費を抑えてこのリスクを全面的に受けれるのかの問題です。


私も費用対効果の問題は依然として残るものの、法令違反リスク(行政処分リスク)、
レピュテーションリスクを回避するといった点から、ご相談をいただく第二種金融商品取引業が本業または中核を担う企業様には、早めの協会加入を勧めているところです。

(協会加入にだって相応の手続きと期間を要しますよ!)


協会加入について迷っている、検討中である第二種金融商品取引業者におかれましては、仮に協会に加入しなかった場合の
法令違反リスク(行政処分リスク)やレピュテーションリスクが顕在化した場合に、自社が被る(かもしれない)損失の金額と、第二種金融商品取引業協会への加入に伴う入会金や年会費の金額を一度天秤にかけてみると良いかもしれません。



そして、協会への加入・非加入を問わず、結局のところ、第二種金融商品取引業者は
協会の自主規制規則を守らなければならないことに変わりはないんですよね。

協会非
加入の場合であっても、協会の自主規制規則に「準じた」社内規則の整備と遵守が義務付けられているわけですから。

だとしたら、その基準となる自主規制規則を作成し、管理している協会のサポートや指導を直接受けられる環境のほうが・・・と考えるのが自然なわけです。



協会への加入について、未だ検討中の業界関係者の皆様にとって、少しでも何かの参考になれば幸いです!



アーネスト行政書士事務所
金融法務コンプライアンスの専門家@行政書士國府栄達



金融商品取引業(第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業、投資助言・代理業、投資運用業、適格投資家向け投資運用業)の登録申請、不動産証券化ビジネスに関する金融商品取引法対応、コンプライアンス・マニュアル、社内規程・社内規則の作成、コンプライアンス研修(社内研修)の企画・講師は、金融商品取引法分野に専門特化した行政書士にお任せください!


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