横山秀夫原作「クライマーズハイ」の衝撃。
この物語では、御巣鷹山の事故現場を一切登場させることなく進行するのだ。
本作は、単なる山の小説ではない。山の小説と同時に仕事と組織の小説でもある。
主人公の「悠木」は、群馬県の地方紙「北関東新聞」のベテラン社会部記者である。
1985年8月12日、衝撃的なニュースが飛び込んできた。なんと乗客520人を乗せた日航ジャンボ機が長野と群馬の県境で消息を絶ったという。続いて続報が流された。墜落現場は群馬県の御巣鷹山だと判明する。
こうして、「北関東新聞」の最も長い一日が始まった。地方紙で繰り広げられたこの一日は、どの中央紙にも負けないほどの濃密な空間を描き切っていた。孤軍奮闘する熱血漢の「悠木」を取り巻く部署間の対立から始まり、社内派閥までを貫いていく墜落事故。
横山秀夫は、「プロジェクトX」式の勝者の主人公は描かない。敗北の美学こそ彼が求めるものである。
必ず映画を観て自問自答してください。
「このオレは、真に自分自身を生きているのか」と。