アメリカにケンカを売り、石油メジャーを出し抜いたマーク・リッチ
マット・デイモン主演で映画「キング・オブ・オイル」の製作が発表された。
マーク・リッチとは一体、何者なのだろうか。
米俳優マット・デイモンが演じるのは、世界最強の相場師と呼ばれたマーク・リッチを題材とする伝記映画「The King of Oil(原題)」である。
ベルギー出身のリッチは、スイスの商品取引大手グレンコア社の創設者として知られている。1983年にイランとの不正な石油取引でアメリカ検察当局から訴追され、米連邦捜査局の10大指名手配犯に名が挙がった人物である。
その後、クリントン大統領の特赦により免罪となり、2013年に78歳で死去している。
巨大な国際石油資本が支配する独占市場をグローバルにだれでも取引できる競争市場(原油のスポット市場)を創設し、「石油市場の民主化」を実現した20世紀最大のコモディティトレーダーである。
一方で、アメリカが禁輸国に指定しているイラン、南アフリカ、キューバや、その他発展途上国の独裁国と原油をはじめとする鉱産物の取引を行い、巨万の富を築きながらも、納税を免れたアメリカ史上最大の脱税王であり、最大の悪魔であり、売国奴だ。
彼は、冤罪を訴えるも、「国賊」と決めつけるアメリカ司法省から逃れるために、スイスに移り住む。
17年後、熱心なクリントン支持と献金のおかげで、クリントン大統領の在職最終日に特赦を受ける。
だが、メディアからのバッシングはやまず、帰国がかなわず、子供の死に目にも会えなかったという。
ただ、メディアが流す「マーク・リッチ像」とは異なり、リッチはイスラエルとパレスチナの和平プロセスを支援したり、パレスチナ自治政府のための訓練プログラムを実施したりしている。
また、アメリカの禁輸制裁国と取引をして、そこに住む貧しい国民たちを豊かにしたことも確かである。
偉大なトレーダーであり、売国奴であり、脱税王であり、最大の悪魔などとレッテルを貼られた、地球を相手に取引した謎だらけのマーク・リッチの真実の姿が明らかになる。
スケールの大きさは、日本人を圧倒するほどだ。
これが実話だというから、現実は映画よりも奇である。