巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督
---サスペンス・ミステリー映画の傑作
1954年製作/アメリカ
原題:Dial M for Murder
配給:ワーナー・ブラザース日本支社
監督:アルフレッド・ヒッチコック
主演:グレイス・ケリー
ロンドンの住宅地にあるアパート。
その1階に部屋を借りているトニー(レイ・ミランド)とマーゴ(グレイス・ケリー)のウエンディス夫妻は、表面平穏な生活を送っているように見えたが、夫婦の気持ちは全く離ればなれで、マーゴはアメリカのテレビ作家マーク・ホリデイ(ロバート・カミングス)と不倫な恋におちており、それを恨むトニーは、ひそかに妻の謀殺を企てていた。
トニーはもとウィンブルドンのテニスのチャンピオンで、金持ち娘のマーゴはその名声にあこがれて彼と結婚したのだが、トニーが選手を引退してからは、彼への愛情が次第にさめていったのである。
トニーは大学時代の友人でやくざな暮らしをしているレスゲートに、巧みに持ちかけて妻の殺人を依頼した。
計画は綿密で、トニーはマークと一緒に夜のパーティーに出かけてアリバイをつくり、レスゲートにアパートへしのびこませる。
約束の時間にトニーはアパートへ電話をかけ、マーゴが電話に出たとき、かくれていたレスゲートが後ろから絞殺するというてはずだった。
しかし、実際には絞められたマーゴが必死にもがいて鋏でレスゲートを刺殺してしまった。
トニーは、マーゴがマークとの不倫をレスゲートにゆすられていたので彼を殺したという印象を警察に与え、マーゴを罪におとし入れた。
マーゴは死刑を宣告され、処刑の前日までトニーの陰謀は発覚しそうにもなかった。
だが、ひそかに調査を進めていたハバード警視は、レスゲートが使ったアパートの鍵のことから事件解決の緒口をつかみ、遂にトニーの犯罪をあばいた。
原作が舞台劇なのでトリックにリアリティを欠く印象だが、良くできたストーリーだと思う。
愛人の推理作家が完全犯罪など成立しないと言い、実際夫の計画は想定通りには進まない。
だが、予想外の結果を有利な方に利用する対応力が夫にはあった。
愛人が女を救うために夫に提案する偽装が、夫の未遂に終わった計画そのものという面白さがある。
当然だが、グレース・ケリーは美しく、特に赤いドレス姿と事件時の白のナイトウェア姿は素晴らしい。
ヒッチコック演出の妙を感じないではいられない。清楚なグレース・ケリーを不倫妻の被害者役で使うヒッチコック流皮肉が、この映画最大の狙いだと思う。
見逃した人には激しくおススメ。