反アパルトヘイトを掲げて政府と対峙---黒人活動家「スティーブ・ビコ」の生涯 | ブロッコリーな日々

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反アパルトヘイトを掲げて政府と対峙

---黒人活動家「スティーブ・ビコ」の生涯

1987年製作/アメリカ
原題:Cry Freedom
配給:ユニヴァーサル=UIP

監督:リチャード・アッテンボロー

出演:ケヴィン・クライン、デンゼル・ワシントン、ペネロープ・ウィルトン

 

アパルトヘイト(人種隔離)政策をとる南アフリカ共和国を舞台に、自由な理想社会を叫ぶ黒人男性と

彼を支持する白人男性との熱い友情を描く壮大な叙事詩的映画。

舞台は、1975年11月24日、南アフリカ共和国ケープ州クロスロード黒人居留地。

突然、静寂を打ち破って次々と黒人たちを虫けらのように襲う武装警官の集団がいた。

 

大地は黒人たちの叫び声とともに血で染まって行く。

この事実は無視され、平穏無事に公衆衛生が行なわれたという放送が数時間後にラジオから流された。

 

黒人運動家のスティーヴ・ビコ(デンゼル・ワシントン)を白人差別の扇動者だと批判していた「デイリー・ディスパッチ」新聞の編集長ドナルド・ウッズ(ケヴィン・クライン)は黒人の女医ランペーレ(ジョゼット・シモン)に案内されて、ビコを訪れた。

 

ビコは、ウィリアムズ・タウンで公権喪失の宣言を受け拘束下にあったが、何ら臆することもなく、許可地以外の黒人居留地にウッズを案内した。

ウッズは自分の新聞社に2人の黒人を雇った。彼は、自分の信じる道を歩き続けるビコに心を揺り動かされた。

 

ビコは幾度となく逮捕され、警察の暴力を受けていたがひるむことなく自分の考えを主張し続け、日に日に支持者を増やしていった。

しかし、ある日、彼が作りかけていた村が覆面の男たちに襲われた。

この中に警察署長がいたことを知ったウッズは、クルーガー警視総監(ジョン・ソー)に訴えたが、全ては彼の命令で動いていたのだった。

 

やがてウッズにも監視の眼が向けられ始め、彼の新聞社で働き出していた2人の黒人が逮捕された。

その頃、独房に入れられていた黒人男性が自殺するという事件が起こったが、調査の結果、看守が糸で吊ったマペトラの人形を囚人に見せたという事実が判明する。

このような不穏な動きによって、ケープタウンの黒人学生集会に参加するために旅立ったビコは、途中の検問で逮捕されてしまった。

狂気のような拷問の続くなか、1977年9月12日、彼は遂に帰らぬ人となってしまった。

 

この知らせは人々に涙を溢れさせ、ウッズの心に堅い誓いを立てさせた。自由を求めた闘士ビコの姿を全世界に伝えることを。

この頃、彼への弾圧は激しくなり、更に妻や子供たちまでもが危険にさらされ出した。

命の保障さえもない状況のなか、彼はビコの死の真相を暴き、英国へ行くことを決意した。

 

家族以外の人間とは同時に1名以上とは接触できないという厳重な監視の許、ビコとの友情に生きようとするウッズのひたむきな姿に心打たれる妻のウェンディ(ペネロープ・ウィルトン)。

 

ウッズが閉塞状況の中で書いた原稿を国外へ持ち出そうという計画が練られた。

そして1977年大晦日。

 

ウッズは不滅のビコの姿を胸に、妻と5人の子どもたちとは別々のルートながら、自由の証を手にするために、壮烈で危険な逃避行に旅立った。。

「南アの黒歴史を学ぶ、衝撃の実話」

人種隔離政策アパルトヘイトが施行される1970年代の南アフリカ共和国を舞台に、反アパルトヘイトを掲げて政府と対峙しながらも殺害された黒人活動家スティーブ・ビコと、彼の死の真相を持ってイギリスに亡命した白人記者ドナルド・ウッズの交流を描いた、実話を基にしたヒューマンドラマである。

人類史でも有数の恥ずべき政策に各国が経済制裁に乗り出した1987年公開の本作は、後にスパイク・リー作品でアメリカの黒人解放活動家マルコムXを演じたデンゼル・ワシントンが、国家的弾圧の中で正義のために戦い続け、最後はその卑劣な刃に倒れたビコを好演し、その意思が友人ウッズを通じて波及していく様に心打たれる作品だ。

ネルソン・マンデラの解放と共にこの政策は終焉を迎えた。そしてこれは遠い彼方の地の他人事ではなく、世界的経済制裁の中で利益のために貿易を続け「名誉白人」というこの上ない不名誉な称号に喜んでいた日本人にも決して無縁ではないと思う。

 

見逃した人には激しくおススメ。