実話「死にゆく妻との旅路」
---夫婦でいることは罪ですか?投げかけられた疑問
監督:塙幸成
主演:三浦友和、石田ゆり子
1999年12月、夫婦でワゴン車に乗って旅をしている最中に末期がんだった妻が車内で亡くなる。
この保護者遺棄致死事件として報道された実話を、三浦友和と石田ゆり子主演で映画化。
当事者の夫・清水久典さんによる同名手記をもとに、死と向き合いながら9カ月間にわたって旅を続けた夫婦の深い愛を描きだす。
「物語のあらすじ」
石川県七尾市。
清水久典は、バブルの崩壊によって経営していた縫製工場が傾き、多額の借金を抱えることになった。その額総額4000万円。
大腸癌の施術を受けたばかりの妻ひとみを娘夫婦のアパートに残し、金策に奔走するも成果を得られずにいた。
危機的状況の中で2人は、特別な計画も立てずに、なかばやけになって、ワゴン車で日本全国を旅することになる。
しかし、旅の途中で妻の病状はますます悪化していく。
清水ひとみは、大腸がんの手術を終え退院を迎えていた。娘の沙織が荷物をまとめ、沙織の住む家にひとみを連れていく。
沙織には赤ん坊が生まれたばかりだった。赤ん坊の世話で慌ただしい娘を眺め、ひとみは窓際に座り外に視線を向ける。
ひとみは、金策に駆けずり回っている夫の帰りを待っていた。
久典の姉は、自己破産をするようにと勧めた。1日中考え込んだ久典は、妻・ひとみに自己破産はしないと告げる。
ひとみも娘の沙織の家に帰ることを拒否し、久典と一緒にいることを選択する。
やがて、夫婦の旅が始まる。
車中泊をし、海を見に行き、ハローワークへ仕事を探しに行く。ランチに寄ったレストランで、ひとみはこれが初めてのデートなのよと久典に笑いかけた。田んぼのはずれで久典はひとみの髪の毛を切ってあげる。ひとみは、いつも自分のことを「お母さん」と呼ぶ久典に、これからは名前で呼んでくださいと微笑みかけた。
兵庫県姫路市で姫路城を訪れ、ハローワークへ行き職を探す。50歳を超える久典に仕事はなかった。
さらに他市のハローワークを訪れるが、久典の仕事は見つからない。この頃から、ひとみの身体の具合は段々と悪くなっていく。
海辺で車中泊をしていると、駐在の警察官が車内を覗き込み、久典に免許証の提示を求めてきた。
無職の久典に、「変なことは考えないように」と、近くで老夫婦が車内で餓死していた話をする。
度々腹部の痛みを堪えているひとみに、病院へ行くことを提案するが、ひとみは決して「うん」とは言わなかった。
ひとみの具合は日に日に悪くなっていく。ショッピングセンターへ出かけても、ひとみは体調不良を訴え、久典はベンチにひとみを座らせる。ひとみを1人ベンチに残して、2階の吹き抜けからひとみの様子を眺めていた久典は、堪えきれずその場に蹲り、声を殺して泣いた。
やがてひとみは1人で歩けなくなり、食べ物を食べてもすぐに吐くようになっていく。
釣竿の1つを改良し、釣りをしている間何かあったら糸を引っ張って鈴を鳴らすようにとひとみに渡す。
最初は遠慮がちだったひとみは、段々と何度も久典を呼び付けるようになる。
そして、久典に暴言を吐くようになり、痛みを堪える呻き声が1日に何度も聞こえるようになった。
秋口になると、ひとみに紙おむつが必要になった。
久典は、動けないひとみの体を丁寧にタオルで拭き、ひとみが好きなアイスクリームを口に含ませる。
けれど、ひとみはアイスを飲み込むこともできなくなっていた。
ひとみは泣きながらカミソリで手首を切り自殺を図る。
しかし、久典を1人にはできないと泣き、久典はそんなひとみの頭をそっと撫でた。。
やがて--
罪状、保護責任者遺棄致死罪にて逮捕。。
作品を観ていて、夫婦の愛情の深さが身に染みた。
長くは生きられないと感じた妻・ひとみが、夫・久典と二人だけの旅をし、今まで夫婦として出来なかったことや、
やりたかったことを実行する場面が感動的だ。
見逃した人には激しくおススメ。。