号泣したバルセロナ---柔道金メダル「吉田秀彦」
『最初はただの物真似でも何度も繰り返すうちに
自分の形になっていくものです』
--「吉田秀彦」
彼の切れ味鋭い「内股」は、左の引手で大きく崩した相手を太ももではね上げるケンケン内股だ。
その手法でバルセロナ五輪男子柔道78㌔級で6試合すべてに1本勝ちをする。
だが、このオリンピックの男子柔道、国民の関心は彼の先輩の「古賀稔彦」だった。
古賀は、「平成の三四郎」と謳われていた、いわば柔道界のヒーローであった。
ところが、古賀稔彦は、深刻なアクシデントに見舞われるのだ。
稽古中にケガをしてしまう。その相手がなんと後輩の「吉田秀彦」であった。
吉田は自分の成績よりも古賀のケガの具合のほうが気がかりだった。
その「古賀稔彦」の71㌔級の出番は翌日なのだ。
彼は試合後の取材の場で、「古賀先輩も金メダルを取ってくれると思います。ふたりで一つのメダルです」
と、エールを送った。
古賀稔彦は、見事に期待に応えてくれた。日本選手団にも歓喜の輪が広がった。
その古賀先輩の隣で号泣する「吉田秀彦」がいた。。