オウム真理教に"NO"を突き付けた坂本弁護士。
坂本弁護士一家の所在は、誰にも分からなかった。
失踪後、自宅からオウム真理教の「バッジ」が見つかっている。
部屋には、争った跡があった。
ところが、警察の腰は重いものだった。
相手は正規の宗教法人である。「宗教弾圧」の声も日増しに大きくなった。
どうしても本格的捜査に身が引けたのだ。
しかもマスコミの捜査かく乱の報道が続いていた。
坂本一家の目撃情報も放送されていたのだ。もっとも、それも教団による攪乱であった。
この頃に、彼らがとんでもない武装化を進めていることを認識しているマスコミは皆無だった。
そうじてテレビ局は、オウムの応援団になっていた。それは視聴率を稼いでくれるからに他ならなかった。
連日、ワイドショーは彼らを追った。
坂本弁護士は、なぜ教団と接点を持ったのだろう。
ある日、彼はジャーナリスト「江川紹子」から、オウム出家信者の家族が困っている、という相談を受けた。
その信者の救出を手助けして欲しいという。
独自に調査を始めると、とんでもない宗教法人だと分かった。
行方不明の出家信者もいるようだ。
教祖「麻原彰晃」なる如何わしい人物は、ときおりテレビにも登場している。
坂本弁護士は、TBSの取材を受けた。『まったく、捨て置けない邪教集団だ。カルトのようだ』と力説する。
ところが、TBSは放送する前に、この弁護士取材ビデオを「早川紀代秀」に見せてしまう。
「早川」は驚愕する。その日に教祖「麻原」に報告した。
--これで一家の命運が決まってしまった。
--ポアせよ。
まだ世間では、一連の不可解な事件を、オウムの犯行だと思わなかった。
そして、悪夢が。。
坂本弁護士の自宅にオウム顧問弁護士を名乗る男がやってきた。
何も疑わずに妻はドアを開けた。ところが見知らぬ男たちが数人入り込んだ。
彼らの目的は、一家を皆殺しすることだった。
坂本夫婦は羽交い絞めにされ、さらに筋肉弛緩剤を注射されてしまう。
彼らは、山中に埋められてしまったのだ。
計らずも「江川紹子」が導き、「TBS」が後押ししたともいえたのではあるまいか。
坂本弁護士に非はなかった。ましてオウムは、子供まで殺すとは--