先日のアースガーデン夏とUPLINKの『おいしいコーヒーの真実』トークショーにearchメンバーのMIHOが出演してまいりました!

『日本のフェアトレード―世界を変える希望の貿易』
を先日出版されたばかりの長坂寿之先生とのトークです☆
長坂先生は、大学時代からフィピリンでのボランティア活動に関わられたのち、日本貿易機構(ジェトロ)に勤務。70年代はシドニー、80年代はニューヨーク、90年代はアムステムダムに在住。在住先でもボランティア活動に積極的に関わり、身体障害者への労働支援や企業の社会貢献などについて調査されたりしていたそうです。
2000年に一度、フェアトレードの本の出版を考えられたそうなのですが、まだ時機ではなく、それから8年経った今年、待望のフェアトレード本が完成しました。そんな長坂先生とのやりとりをこちらでは主に7月11日のUPLINKでのものをご報告します♪
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(押野) さっそく今日の映画の感想を長坂先生からお願いします。
(長坂) 「おいしい真実」を観るのは、今日の鑑賞で実は4度目なんです。私は映画評論もやったりしますが、同じ映画でも見るたびに何かの発見があります。ですから4度目にしてやっと見えてくるところもあるのです。
フェアトレードというよりは、まさに世界で何が起こっているのかを伝えてくれる映画でしたね。そうしたことがあらためてわかりました。主人公の彼が海外の地で販売ルートを探す、しかし、先進国の人たちはあたかも彼らに対して今のまま貧しいままでいろとでも言っているかのよう・・・。
先進国の農業補助金の話もありました。市場経済の素晴らしさは確かにその通りですね。アメリカ連邦準備委員会の元議長だったアラン・グリーンスパン氏も日経新聞に履歴書を書いていましたが、政府が介入せずに市場経済に任せておくことが最も適切なことだと言っています。いわゆる経済学上で議論される市場とは、あくまでも対等な関係にある者同士が取引をする前提で考えられています。
しかし、実際には対等な取引の関係などありえない。立場の弱い者はどうしても強い者の言いなりとなってなってしまう・・・。開発途上国の多くは農業国です。先進諸国が工業製品について優位にあるように、本来は開発途上国は農産物について優位であるはず。しかしそうはならない。先進諸国は多額の補助金で開発途上国の作物よりも安い価格で輸出をする・・。為替取引きにしてもそうです。現物の取引に必要なお金は、今しも世界で出回っているお金の15%程度に過ぎません。残りの85%はいわゆる投機的なマネーなのです。こうした投機マネーが悪さをして様々な国々で混乱が引き起こされ、最終的に貧しい人々が一番被害をこうむります。
アダム・スミスは市場をして「神の見えざる手」に委ねなさいと言いましたが、行過ぎた市場経済は、いわば「見えざる悪魔の手」となっています。これでは、開発途上国の人々が豊かになれるわけが無い。私たちは、フェアトレードがあるということは、もう一方にはアンフェアトレードがあることを知らなければなりません。
(押野) 鈴木さんはどうでしょうか。お店をやっていてお客さんとのふれあい・つながりから得られる感触のようなものは・・・。
(鈴木) ぐらするーつ渋谷店をやっていますが、小売のほかに地方のお店に対しての卸売りのようなこともやっています。そうした中で思うのは、販売すればするほど自分も一人の消費者なのだなと気がつかされるのです。例えばお店をひけて、家に帰る途中でどこかで買い物をするわけです。販売する側、買う側といった立場は違うのですが、実は同じというか・・。
(押野) 長坂先生はずいぶん前からフェアトレードに関心をお持ちのようですが、いつ頃から?
(長坂) 若い頃からボランティアには携わっていましたから、FTという言葉はなんとなく知っていましたが、最も印象に残ったのは、オランダに駐在したときにFLOを見てからですね。マックス・ハーフェラールという団体がフェアトレードのコーヒーをオランダで売り出していて、これを全国に普及するための手段として認証制度を作った。第三世界ショップがほとんどの自治体にはある。しかし、FT商品をいくら開発しても、世界ショップに行かないと消費者は手に入れることができない。これをオランダじゅうの店で売りたいということから認証制度を設けて普及させたのです。
私はFLOの認証制度ができた草創期から見ていたので特に印象に残っています。フェアトレードの普及方法としては、ショップ系と認証系という二つの系統になっていますが、双方が相互乗り入れして発展してもらいたいという気持ちです。
そうした思い入れもあって、2000年にフェアトレードについて書いてみたのですが、当時日本の出版界ではまだ「フェアトレード」という言葉が定着していませんでしたから、原稿を持っていってもどこの出版社も相手にしてくれませんでした。そこで、もっと知るべきことがあろうということで、ここにいる鈴木さんらの協力を得て、とりわけショップの人たちに現場のことも含めて伝えたいことを書いてもらった訳です。
そうすると、日本で活動している様々な活動団体やショップにはそれぞれにストーリーがあるのです。自分が編集したこの本「日本のフェアトレード」も、ショップの方々にお願いして原稿を書いてもらっているのですが、自分の編集した本でありながら、ショップの方々のページをめくると感動して、今でもドキドキするぐらいです。しかし、鈴木さんの話はもう何回も聞いていますから慣れてしまっていますけれども(笑)。
沖縄のショップを経営している人の話ですが、そもそも地元には基地問題を抱えたりしていて、平和運動に関心があった。そこに新たにフェアトレードという市民運動を知り、これを沖縄の平和運動の一環として取り入れてショップを作った。店内はスピリチュアルな雰囲気のとても素敵なお店です。このように地域によってフェアトレードの取り入れ方、受け容れ方が違うのも興味深いです。
(押野)鈴木さんもこの本では執筆に協力されているのですが、何について知ってもらいたいという気持ちが強かったですか?
(鈴木) そうですね、自分たちが何をやったのか、やってきたのか、ということよりも、地方で頑張っているショップの方々の気持ちを本に書き表したい、伝えたいという気持ちが強かったですね。東京にいると、フェアトレードを何となくでも知っている人はそこそこいる訳です。しかし、地方ではフェアトレードと言ってもまず全然知られていない。また先ほどの沖縄の話にもありましたように、地方には地方の問題があり、フェアトレードだけをアッピールすることはできない。そうした地元の問題の一つのコンテンツとしてフェアトレードを紹介する、という感じなのです。
先だって北海道のフェアトレードのイベントに呼ばれて行ってきたのですが、会場で繰り広げられているのはフェアトレードだけではなくて、例えばオーガニック野菜や果物が一緒に並べられているのです。必ずしもフェアトレードだけを前面に出してのアッピールではない・・・、これは響くものがありますね、東京にいるからかえってこうしたことに気がつかないでいることも多いのでしょう。
(長坂) これからショップを立ち上げたいと考えている人もいるかと思うのですが、鈴木さん、開店に向けての準備資金なんかはどのぐらい必要なものなのですか?実は本にも書いてもらったのですが。
(鈴木) 地域によって開業資金の規模は違ってくるのでしょうが、もちろん資金は多いに越したことはありません。スタートからどれだけ店の棚に商品を並べられるのかということでもありますし・・・・、そうですね、300万円から・・ぐらいですかね。人によっては全然そんなことでは足りなくて500とか700とか言う人もいますが。自分たち(ぐらするーつ)は仲間同士で合計300数十万円を集めて、それなりに10年以上やってこれていますから、まぁ、まずはその位であればやってやれないことはない、と自分は思っています。
(押野) 欧米での様子なのですが、ラベル商品とショップとは併存している感じなのですか?
(長坂) 実はその質問には答えたくないというか・・・。最初にFLO認証を作った当時は、とにかく国じゅうのスーパーでFT商品を取り扱ってもらいたいという想いが強かったんです。そうして例えばコーヒーを広く普及してゆくには焙煎業者を巻き込んだ形で進めざるを得ない。独自にフェアトレードのフィールドを持っている(独自の販路を持っている)FT団体の必死の想いとでも言うか・・。認証制度がある方が企業にとっては参入がしやすい訳です。自らがフェアトレードを扱っていることを証明しなくていい。認証は認証機関であるFLOがやってくれる訳です。
そうして企業が参入してくると、こんどはスーパーでの売れ行きの方が勢いを増してくるわけです。例えばコーヒーなんかは、わざわざフィールドで頑張っている団体の店に行かなくても手に入るようになる・・・。そうすると地域のショップの売上げが伸びず経営が苦しくなるという事態にもなっている。そう言う点で、独自の販路で頑張っている団体と、一方の認証商品の普及という双方の事情の中でヨーロッパは苦しんでいる最中である、と言えると思います。
ただ、例えばこうした話を先にしてしまうと、日本ではまだ全然こうしたことを議論する段階には無いほど市場が小さいのですが、かえってフェアトレードの勢いを萎えさせてしまう心配もある・・・。
(鈴木) 日本でも最近はイオン系列の店がフェアトレード・コーヒーを扱ったり、バラの花やジュースを販売し始めていますが、まだ現状ではイオン系列しか取り扱っていないとも言えるわけで、欧米ほどの危機感は無いと思うのです。
ただ先ほど話した地方のショップでの見方で言えば近隣にイオンが開店したとすれば、それはそれである種の危機感を感じる人もいるでしょうね。いずれ日本でも欧米での悩みに近いようなことは起こりうるとは思うのだけれども、スーパーでもコンビニでもない小さな店が生き残ってゆくのに、私はそんなに悲観はしていないのです。人々に広く知らしめるには、イオンがFT商品の売上げを伸ばすことについても反対ではないのです。
ぐらするーつも渋谷という地にあって、東急ハンズや様々なファッショナブルな店がひしめく中にあっても10年以上続けてくることができた、それにお客さんがついて来てくれた・・・そういう意味での自信はありますね。なので、こうした店(ぐらするーつのような)お店がもっともっと増えたら面白いのになと思います。
(長坂) そうなんですね。ヨーロッパの現状には日本はまだまだ全然追いついていない。今は何でもがむしゃらに知ってもらう、広げるという段階です。ヨーロッパもそうした行き詰まりについていずれは解決策を探し出すでしょうし、実は、日本も「おいしいコーヒーの真実」というような映画を上映できるような状況になって、ようやく端緒についたばかり、なのです。ヨーロッパとの市場規模でいうと、日本はその30分の1の規模なのです。
(鈴木) 何かの意識調査での結果として伝えられていることなのですが、ファトレードを知っている人の割合が2.94%だというのです。認知度が80%以上というイギリスなど欧米には比べるべくも無い状況ですよね。スーパーマーケットがFT商品を扱うことで売上げが伸びれば、それは間違いなく生産者の収入を増やすことでもある。
だた、日本で暮してゆく中で、ただ単なる消費者としてフェアトレード商品を消費して終わりというのではなくて、もう一歩先の生活を実践しないとダメですよね。何というか、かしこくありたいというか、騙されないかしこさというか。
「おいしいコーヒー」の一シーンでイタリアの老夫婦がのどかにコーヒーを飲んでいる様子が映し出されているのですが、きっとこの爺ちゃん婆ちゃんたちは、生産者を本当に知らないのだろうなぁ、知らないことは・・・罪深いことなんだなぁ、なんて思います。自分が生きてゆく上でのキャパシティーなんかはたかが知れているのですが、生きているうちに人に迷惑をかけたくないなと感じます。
(押野) 長坂先生は本の中で「消費者から選択者へ」ということに触れていましたね。先生にとっての「フェアな世界」というとどんなイメージでしょう?
(長坂) フェアトレードのすばらしさはですね、世界のあらゆる問題への入り口になる、ということなのです。私が教えるゼミ生が児童労働の問題を取り扱ったフィルムを制作しているのですが、そこでの最終的な解決策はフェアトレードでした。世界の競争の中でコストのかかる大人が職を失い、代わりに賃金の安さということで子供が働かされる。それでは児童労働に反対するとして、子供が働かない場合の収入をどうしたらいいのか、こうしたことに対しての答えがフェアトレードだということなのです。
このように、フェアトレードに触れる、つまりフェアトレード商品を手にすることによって、世界のあらゆる問題について関るということができる。そして、何がフェアで何がアンフェアなのか、ということを知ることになる。不買運動、いわゆる買ってはいけないという運動も必要だが、まず、いくつかある選択肢の中からどれを買ったら「フェア」なのかを判断する。
考えてみれば「消費者」などという言葉は人をばかにした言葉ですね。手に入れたものを使って無くなしてしまうだけの存在ではなく、選択者として世界の問題との関わりを意識した存在でありたい。とにかくフェアトレードに触れてすばらしさを感じて欲しい。
そこで「フェアな世界」とは、ということなのだけれども、ここまではアンフェアな世界について話をしてきたから、その対極にある世界ということになるけれども、アンフェアな世界を改革する・・というか。 多国間を行き来するお金に税金を課するという「トービン税」というものがあります。通貨取引税とか、国際連帯税とか言われております。通貨が生み出すアンフェアな差を無くすために規制をかけるわけです。3年前にトービン税の研究会を立ち上げたのですが、G8サミットを目前にした時期に、国会議員もこれに関して勉強会を作りました。そうした関心が高まっているということは言えます。
アンフェアな差という点では食糧も同じことですね。WTOの審議拒否の話・・・国際的な市民社会運動としてのフェアトレード・・・。日本ではフェアトレードについては今後広く普及してゆくと思うのだけれども、一方でその裏側に何があるのかを考えるようにしなければならないですね。
フェアトレード運動というのは、互いが対等である関係の中での取引を広めようという運動なのです。単に児童労働は、そこの国や地域が貧しいから起こるのではない。先進国とのアンフェアな取引のなかで不平等な関係を強いられ、大人の労働者がクビを切られ、かわりに賃金がもっと安い子供たちがかりだされる。
(鈴木) 自分が考えているのは、人間として丁寧に暮すこと。なるべく丁寧に自分が使う品物を選ぶ、丁寧に食事を作る。そうした丁寧に暮す人たちを増やす作戦・・、密かに野望を抱いているのです。コーヒーも単に販売機から缶コーヒーを買って飲むのではなくて、きちんとドリップしたコーヒーを飲む。そうして丁寧に自分の身の回りのことを考えてゆく・・・。
押野さんもそうだと思うのですが、おいしいコーヒーをいれる秘訣は何ですか?言わばフェアに煎れるというか・・。
(押野) そうですね・・・・。まずは深呼吸。そうしてゆっくり煎れると全然味が違うのです。豆を挽いて表面のグズをふっと軽く吹きはらう。挽いた粉をドリップする前に、おまじないとして真中あたりに指で小さく窪みをつけて、そこにほんの数滴のお湯をたらして馴染ませる。ゆっくり20秒間は数えます。あとはゆっくりお湯を注いで行く。そうすると本当に美味しいコーヒーがいれられるのです。
(鈴木) おまじないは大事ですよね。気持ちを込める、気持ちの丁寧さがあらわれる。
============== <Question Time> ================
Q1:映像の中でもコーヒーショップで働く従業員の姿がありました。実はそうした企業に勤める人たちが何も知らない現状がある。そうしたコーヒー業界に従事する人たちへのフェアトレードの概念の普及について思うところはありますか?
A1:(鈴木) その業界に従事する人、そうでない人、消費者の人・・・、特にそうしたことを知ってもらうにあたって分け隔ては無いと思うなぁ。そうしたことが解らないということが普通だという状況を変えないとダメでしょうね。自分も含めて、消費する日本人としての責任は等しくみんなにあると思うのです。
(長坂) この映画ができたこと自体が実はこの業界にとっては非常に衝撃的なことなのです。スターバックス・コーヒーは毎月20日にレギュラー・コーヒーとしてフェアトレード・コーヒーを出しているのですが、20日以外の日でも実はフェアトレード・コーヒーを店に置いてあるのです。スモールサイズを注文すると普通のものよりも割高なのですが、Mサイズ、Lサイズでは同じ額になります。
実は、ここで普及に関して皆さんにもできることがあるのです。まずはスタバに行ったら「フェアトレード・コーヒーを下さい」と注文してください。そうすると店員の方がそう言うことを知らないことが多いですから、根気良く「あるはずだ」と続けて下さい。そうすると店の奥から支配人が出て来て、常にフェアトレード・コーヒーが備えてあってお客さんに出せるものだということを店員に伝えてくれますから。そうして従業員にフェアトレードについて知ってもらうことができるのです。
北澤肯さんが「フェアトレード・ハンドブック」という訳本を出した中で伝えているのですが、彼は持ち帰りコーヒーの紙コップを無駄に使いたくないので、自分のポットにコーヒーを注いでくれるように店員にお願いしたらしいのですが、店員は一旦、紙コップにコーヒーを注いでから、それをポットに移し変えたのでした。北澤さんはこれに怒って、その会社(コーヒー店)にメールで事の次第を伝え、意見を述べたそうですが、そうしたら一週間後に同じ店で同じオーダーをしたら、きちんと店員が要領を得た対応をしたとのことでした。このように会社に対して求めてゆくことで(フェアトレードなどが)知らしめられて行くことができるのです。
(押野) 私からも一つあるのですが、私は以前からフェアトレードに関心を抱いていたのですが、その前にアンフェアな世界とはどういうものか覗いてみようということで、大学を卒業してからすぐに商社に勤めたのです。そこでは衣料品を海外で生産して輸入するという、まさにアンフェアな取引の現場でした。どこで働いたとしても、また海外では無くても、商品を構成するのは原材料と人件費です。そういうところに目を光らせて気がつくことはできるのではないでしょうか。自分がどういう気持ちで見てゆくのか・・・。
Q2: 映像の中でエチオピアの悲しさというか、コーヒーしか作ることができない悲しさがあります。チョコレボのイベントでもガーナ人と話をする機会があったのですが、ガーナの人たちはカカオ豆しか生産することができないということでした。フェアトレードでの取引によって、かえって単一の作物や商品しか作ることができないということなら、これは多いに疑問に思うところなのですが。
A2:(長坂) フェアトレードの理念は、モノカルチャーではなく多角化を心がけるところにあります。例えば東ティモールにおけるパルシックやピースウィンズジャパンの活動にもあるように、もともとコーヒーを主として生産していなかった場で、自生していたコーヒーをフェアトレード商品にしたのですが、それ以外に豚や牛、ニワトリなどを飼ってなるべく自立した生活の基礎をかためる。現金収入はコーヒーの輸出から得る。フェアトレードによって取引上の価格の是正をはかり、一方では自給自足できるように多角化を考えるというのが活動のあり方です。
(鈴木) タイのコーヒー生産者の現場を見に行った時ですが、コーヒーが生えている周囲で自分たちが日常的に食べるための作物を栽培していました。そしてコーヒーを売ることで現金収入を得るという生活をしていました。ですから、どうやったらそこでの生活がよくなってゆくのか、その部分をクリアしながら声をかけたり手助けしたりという・・・・そういうことをこなしてこそのフェアトレードだと思います。
Q3: 最終的に店頭で販売される一杯のコーヒーの値段なのですが、生産者はほんの数円程度の収入しか得ることができません。これなどは、例えば、日本では最終商品価格に10円上乗せすることで、それを生産者に回すことができれば大きな改善になるのではと思うのですが、なぜ企業はそういう意味でのフェアトレードを選択しないのでしょう。そしてフェアトレード以外のコーヒーが大半を占めるということのなのですが、そのアンフェアな豆との差とは?
A3:
(長坂) 企業とは何か?に迫る問いかけですね。企業は存在そのものが悪であるとすら言える。利潤を追い求める中でどこかを絞ろうとする。そうしたことがことの本質にある。市民がそれをよしとしなければ通常はそうした企業は衰退してゆくことになるのですが、経済のグローバリゼーションの中で、100円ショップに疑問を持たない私たちの生活が有ります。つまり企業に対して正常な反応を示すことができないでいる。とんでもないところに来てしまっています。これを企業倫理から見直す動き、CSRなどもそうした新しい経営システム論ですね。
(鈴木) ほんの0.5ドルの配分を2ドルにするだけの話なんですよね、生産現地では、そんなに大きな配分がなされていない分、これを増やすのにそんなに大きなお金ではない。そういうことを考える大きな転換点に来ているとは思います。やっと日本もその兆しが出てきた。
(押野) 価格の大きな部分を占める要素として広告も見逃すことができませんね。そういう点ではぐらするーつは、どうやって広告し、人々に広めてきたのですか?
(鈴木) 広告費というと月々数万円ていどですね。地味に口コミで広がったというのが真相です。例えば一夜明けて昨日に比べて今日は二倍のお客さんが増えた、というようなことになった場合に、果たして品揃えが間に合うのかということを考えると、じわじわと広がるというのがいいのかなと思う自分と、いやいやそんなことでいいのかという自分と両方います。
Q4: 別に自国の作物を守るために補助金を積み上げることが悪いことだとは思わないし、企業が利益を求めて活動することが悪いとも思えません。WTOも世界の貿易を推進するという点でそんなに悪いものだとは習わなかったのです。
A4:
(長坂) 日本のように食糧自給率が40%を切った、というような場所においてはこれを関税や補助金で守るというのは肯定されるのでしょうが、例えば補助金があるから、大量に作付けしてその結果余った作物を海外に輸出する。そうして開発途上国の作物が市場から駆逐されてしまう現実があるのです。例えば、そう言ったようなよくない事柄が数え上げただけでも10以上はあるのです、WTOの問題は。
ここでは長々と説明できませんので、その辺を「NGO発 市民社会力」という本に書きましたので宜しければ読んで下さい。
それからWTOがなぜいけないかについての一番解りやすい例としては、水の民営化の話があります。今、先進国では多くの国が水に関しては公共機関が管理していますが、ガットが廃止されてWTOが設立されたと同時に、水に関係する多国籍企業に儲けさせる目的で、開発途上国に対してだけ上下水道の民営化をWTO加入の条件にしたのです。いわば強制です。自由貿易に参加するためには自国の水を外国の民間企業に委ねなければならない。
そうして開発途上国に進出した多国籍企業は、最初のうちは貧しい人々に等しく水を供給すると、そうした整備をすると言っていたのですが、実際はそれまでタダで手に入れられていた水に値段がつけられ、お金の無い人は水が飲めなくなってしまったのです。貧困・・飢餓で死ぬということは実はほとんど無いのです。大半は飢えて体力が落ちているところで、汚れた水を飲むことで抵抗力の無い体が蝕まれて死に至るのです。きれいな水を飲むことさえできれば助かる命がたくさんあったのです。そうした状況になって人々が怒り、企業が撤退したりしている。
小泉内閣が提唱した「官から民へ」の民は、市民としてのそれではなく、民間企業を指しているのです。
企業の存在そのものが悪だ、というのは、もちろん生存する物全てがそのこと自体で、環境に対しての負荷をともなうもの。例えば私にしても生きているだけでオナラもすれば食物も食べる、資源を損ねる訳ですね。そうした中での活動というものが言わば悪ではあるけれども、なるべくそれを小さなものに留めておかなければならない。
Q5: フェアトレードの認知が広がって市場が拡大してゆくことによって、フェアトレード団体どうしで価格競争が起こることはないのでしょうか?また、ヨーロッパなどでもあったようにラベルの問題が日本でも起こることは無いのでしょうか?そうした今後のフェアトレードのあり方について聞きたいのですが。
A5:
(鈴木) 日本国内での団体の間に差ができる・・・これは別に差があってもいいのだとは思います。また、まだまだ日本においては量が少ない状況です。そうですね、そうした過当競争状態になるまでに・・・あと4~5年はかかるのではないでしょうか。イオンのフェアトレード商品は安くて、第三世界ショップのそれは高い・・・ということもあるでしょうね。それは確かに怖いことでもあります。そうしたときに、ラベルとしての商品を大量に扱うイオンのようなところと、小さなショップと何が違うのか。これは大事さと丁寧さだと思うのです。それは、ある種、ショップに求められている役割かもしれません。
イオンでどれだけ売れているのかという一方で、売れ残って廃棄されているのか・・・。どちらが丁寧な売り方なのか、そういう感覚がわかる人が増えてくれるのではないかと思っています。
(長坂) フェアトレード取引によって開発途上国で恩恵を受けている人たちがどのぐらいいるのかというと、とある統計では、700万人から1000万人程度と言われます。約10億人の開発途上国全体の人口から比較すると0.1%前後ということになるでしょう。これを3%まで増やすことがメルクマールだとすると、そこに到達するまでにまだ20年ぐらいはかかるのではないでしょうか。
また、そうしたときに過当競争とか様々な問題が発生するとして、それを解決するのはあなた方若い方々にお任せします。そこであなた方が答えを見つけてくれるでしょう。
(長坂) 最後に、先ほどのWTOの件について質問なさった方に、まだ消化不良なようですので言葉を足します。
例えば、HIV/ADISですが、これは罹患しても薬を常用していれば発症しないですむ、そうした薬が既にあるのです。世界的な特許に関して協定に加盟していないタイ、ブラジルなどでは、先進国企業の製薬技術を真似て、国が指導して自国でそうした薬を製造するようにして国民を病気から守りました。これをジェネリック医薬品といいますが。WTOは、製薬会社の利益を守るために、開発途上国に対して特許に関する法律の整備を求めました。そうすれば、企業は特許料を開発途上国から徴収することができるという訳です。
しかし、これに対しては世界のNGOから大きな批難がなされています。水にしても薬にしても生命の維持にかかわる、人権にかかわる問題ですから。そうしたようなよくない面がWTOには数を上げればきりがないほどにあるのです。
================= <END> ================
ちょっと長かったけど、いかがだったでしょうか?
6日のアースガーデンでは「市民運動としてのフェアトレード」という話から、「日本には市民運動自体が根付いていない。それは”公/公共/私”という意識がなく、”公私二元論”の社会だから」などのお話もあり、とても刺激的でした。そちらもいづれまとめられたら、と思います。
まだまだまだまだ、はじまったばかりの日本のフェアトレード!
がんばって広めて行きましょう!!

『日本のフェアトレード―世界を変える希望の貿易』
長坂先生は、大学時代からフィピリンでのボランティア活動に関わられたのち、日本貿易機構(ジェトロ)に勤務。70年代はシドニー、80年代はニューヨーク、90年代はアムステムダムに在住。在住先でもボランティア活動に積極的に関わり、身体障害者への労働支援や企業の社会貢献などについて調査されたりしていたそうです。
2000年に一度、フェアトレードの本の出版を考えられたそうなのですが、まだ時機ではなく、それから8年経った今年、待望のフェアトレード本が完成しました。そんな長坂先生とのやりとりをこちらでは主に7月11日のUPLINKでのものをご報告します♪
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(押野) さっそく今日の映画の感想を長坂先生からお願いします。
(長坂) 「おいしい真実」を観るのは、今日の鑑賞で実は4度目なんです。私は映画評論もやったりしますが、同じ映画でも見るたびに何かの発見があります。ですから4度目にしてやっと見えてくるところもあるのです。
フェアトレードというよりは、まさに世界で何が起こっているのかを伝えてくれる映画でしたね。そうしたことがあらためてわかりました。主人公の彼が海外の地で販売ルートを探す、しかし、先進国の人たちはあたかも彼らに対して今のまま貧しいままでいろとでも言っているかのよう・・・。
先進国の農業補助金の話もありました。市場経済の素晴らしさは確かにその通りですね。アメリカ連邦準備委員会の元議長だったアラン・グリーンスパン氏も日経新聞に履歴書を書いていましたが、政府が介入せずに市場経済に任せておくことが最も適切なことだと言っています。いわゆる経済学上で議論される市場とは、あくまでも対等な関係にある者同士が取引をする前提で考えられています。
しかし、実際には対等な取引の関係などありえない。立場の弱い者はどうしても強い者の言いなりとなってなってしまう・・・。開発途上国の多くは農業国です。先進諸国が工業製品について優位にあるように、本来は開発途上国は農産物について優位であるはず。しかしそうはならない。先進諸国は多額の補助金で開発途上国の作物よりも安い価格で輸出をする・・。為替取引きにしてもそうです。現物の取引に必要なお金は、今しも世界で出回っているお金の15%程度に過ぎません。残りの85%はいわゆる投機的なマネーなのです。こうした投機マネーが悪さをして様々な国々で混乱が引き起こされ、最終的に貧しい人々が一番被害をこうむります。
アダム・スミスは市場をして「神の見えざる手」に委ねなさいと言いましたが、行過ぎた市場経済は、いわば「見えざる悪魔の手」となっています。これでは、開発途上国の人々が豊かになれるわけが無い。私たちは、フェアトレードがあるということは、もう一方にはアンフェアトレードがあることを知らなければなりません。
(押野) 鈴木さんはどうでしょうか。お店をやっていてお客さんとのふれあい・つながりから得られる感触のようなものは・・・。
(鈴木) ぐらするーつ渋谷店をやっていますが、小売のほかに地方のお店に対しての卸売りのようなこともやっています。そうした中で思うのは、販売すればするほど自分も一人の消費者なのだなと気がつかされるのです。例えばお店をひけて、家に帰る途中でどこかで買い物をするわけです。販売する側、買う側といった立場は違うのですが、実は同じというか・・。
(押野) 長坂先生はずいぶん前からフェアトレードに関心をお持ちのようですが、いつ頃から?
(長坂) 若い頃からボランティアには携わっていましたから、FTという言葉はなんとなく知っていましたが、最も印象に残ったのは、オランダに駐在したときにFLOを見てからですね。マックス・ハーフェラールという団体がフェアトレードのコーヒーをオランダで売り出していて、これを全国に普及するための手段として認証制度を作った。第三世界ショップがほとんどの自治体にはある。しかし、FT商品をいくら開発しても、世界ショップに行かないと消費者は手に入れることができない。これをオランダじゅうの店で売りたいということから認証制度を設けて普及させたのです。
私はFLOの認証制度ができた草創期から見ていたので特に印象に残っています。フェアトレードの普及方法としては、ショップ系と認証系という二つの系統になっていますが、双方が相互乗り入れして発展してもらいたいという気持ちです。
そうした思い入れもあって、2000年にフェアトレードについて書いてみたのですが、当時日本の出版界ではまだ「フェアトレード」という言葉が定着していませんでしたから、原稿を持っていってもどこの出版社も相手にしてくれませんでした。そこで、もっと知るべきことがあろうということで、ここにいる鈴木さんらの協力を得て、とりわけショップの人たちに現場のことも含めて伝えたいことを書いてもらった訳です。
そうすると、日本で活動している様々な活動団体やショップにはそれぞれにストーリーがあるのです。自分が編集したこの本「日本のフェアトレード」も、ショップの方々にお願いして原稿を書いてもらっているのですが、自分の編集した本でありながら、ショップの方々のページをめくると感動して、今でもドキドキするぐらいです。しかし、鈴木さんの話はもう何回も聞いていますから慣れてしまっていますけれども(笑)。
沖縄のショップを経営している人の話ですが、そもそも地元には基地問題を抱えたりしていて、平和運動に関心があった。そこに新たにフェアトレードという市民運動を知り、これを沖縄の平和運動の一環として取り入れてショップを作った。店内はスピリチュアルな雰囲気のとても素敵なお店です。このように地域によってフェアトレードの取り入れ方、受け容れ方が違うのも興味深いです。
(押野)鈴木さんもこの本では執筆に協力されているのですが、何について知ってもらいたいという気持ちが強かったですか?
(鈴木) そうですね、自分たちが何をやったのか、やってきたのか、ということよりも、地方で頑張っているショップの方々の気持ちを本に書き表したい、伝えたいという気持ちが強かったですね。東京にいると、フェアトレードを何となくでも知っている人はそこそこいる訳です。しかし、地方ではフェアトレードと言ってもまず全然知られていない。また先ほどの沖縄の話にもありましたように、地方には地方の問題があり、フェアトレードだけをアッピールすることはできない。そうした地元の問題の一つのコンテンツとしてフェアトレードを紹介する、という感じなのです。
先だって北海道のフェアトレードのイベントに呼ばれて行ってきたのですが、会場で繰り広げられているのはフェアトレードだけではなくて、例えばオーガニック野菜や果物が一緒に並べられているのです。必ずしもフェアトレードだけを前面に出してのアッピールではない・・・、これは響くものがありますね、東京にいるからかえってこうしたことに気がつかないでいることも多いのでしょう。
(長坂) これからショップを立ち上げたいと考えている人もいるかと思うのですが、鈴木さん、開店に向けての準備資金なんかはどのぐらい必要なものなのですか?実は本にも書いてもらったのですが。
(鈴木) 地域によって開業資金の規模は違ってくるのでしょうが、もちろん資金は多いに越したことはありません。スタートからどれだけ店の棚に商品を並べられるのかということでもありますし・・・・、そうですね、300万円から・・ぐらいですかね。人によっては全然そんなことでは足りなくて500とか700とか言う人もいますが。自分たち(ぐらするーつ)は仲間同士で合計300数十万円を集めて、それなりに10年以上やってこれていますから、まぁ、まずはその位であればやってやれないことはない、と自分は思っています。
(押野) 欧米での様子なのですが、ラベル商品とショップとは併存している感じなのですか?
(長坂) 実はその質問には答えたくないというか・・・。最初にFLO認証を作った当時は、とにかく国じゅうのスーパーでFT商品を取り扱ってもらいたいという想いが強かったんです。そうして例えばコーヒーを広く普及してゆくには焙煎業者を巻き込んだ形で進めざるを得ない。独自にフェアトレードのフィールドを持っている(独自の販路を持っている)FT団体の必死の想いとでも言うか・・。認証制度がある方が企業にとっては参入がしやすい訳です。自らがフェアトレードを扱っていることを証明しなくていい。認証は認証機関であるFLOがやってくれる訳です。
そうして企業が参入してくると、こんどはスーパーでの売れ行きの方が勢いを増してくるわけです。例えばコーヒーなんかは、わざわざフィールドで頑張っている団体の店に行かなくても手に入るようになる・・・。そうすると地域のショップの売上げが伸びず経営が苦しくなるという事態にもなっている。そう言う点で、独自の販路で頑張っている団体と、一方の認証商品の普及という双方の事情の中でヨーロッパは苦しんでいる最中である、と言えると思います。
ただ、例えばこうした話を先にしてしまうと、日本ではまだ全然こうしたことを議論する段階には無いほど市場が小さいのですが、かえってフェアトレードの勢いを萎えさせてしまう心配もある・・・。
(鈴木) 日本でも最近はイオン系列の店がフェアトレード・コーヒーを扱ったり、バラの花やジュースを販売し始めていますが、まだ現状ではイオン系列しか取り扱っていないとも言えるわけで、欧米ほどの危機感は無いと思うのです。
ただ先ほど話した地方のショップでの見方で言えば近隣にイオンが開店したとすれば、それはそれである種の危機感を感じる人もいるでしょうね。いずれ日本でも欧米での悩みに近いようなことは起こりうるとは思うのだけれども、スーパーでもコンビニでもない小さな店が生き残ってゆくのに、私はそんなに悲観はしていないのです。人々に広く知らしめるには、イオンがFT商品の売上げを伸ばすことについても反対ではないのです。
ぐらするーつも渋谷という地にあって、東急ハンズや様々なファッショナブルな店がひしめく中にあっても10年以上続けてくることができた、それにお客さんがついて来てくれた・・・そういう意味での自信はありますね。なので、こうした店(ぐらするーつのような)お店がもっともっと増えたら面白いのになと思います。
(長坂) そうなんですね。ヨーロッパの現状には日本はまだまだ全然追いついていない。今は何でもがむしゃらに知ってもらう、広げるという段階です。ヨーロッパもそうした行き詰まりについていずれは解決策を探し出すでしょうし、実は、日本も「おいしいコーヒーの真実」というような映画を上映できるような状況になって、ようやく端緒についたばかり、なのです。ヨーロッパとの市場規模でいうと、日本はその30分の1の規模なのです。
(鈴木) 何かの意識調査での結果として伝えられていることなのですが、ファトレードを知っている人の割合が2.94%だというのです。認知度が80%以上というイギリスなど欧米には比べるべくも無い状況ですよね。スーパーマーケットがFT商品を扱うことで売上げが伸びれば、それは間違いなく生産者の収入を増やすことでもある。
だた、日本で暮してゆく中で、ただ単なる消費者としてフェアトレード商品を消費して終わりというのではなくて、もう一歩先の生活を実践しないとダメですよね。何というか、かしこくありたいというか、騙されないかしこさというか。
「おいしいコーヒー」の一シーンでイタリアの老夫婦がのどかにコーヒーを飲んでいる様子が映し出されているのですが、きっとこの爺ちゃん婆ちゃんたちは、生産者を本当に知らないのだろうなぁ、知らないことは・・・罪深いことなんだなぁ、なんて思います。自分が生きてゆく上でのキャパシティーなんかはたかが知れているのですが、生きているうちに人に迷惑をかけたくないなと感じます。
(押野) 長坂先生は本の中で「消費者から選択者へ」ということに触れていましたね。先生にとっての「フェアな世界」というとどんなイメージでしょう?
(長坂) フェアトレードのすばらしさはですね、世界のあらゆる問題への入り口になる、ということなのです。私が教えるゼミ生が児童労働の問題を取り扱ったフィルムを制作しているのですが、そこでの最終的な解決策はフェアトレードでした。世界の競争の中でコストのかかる大人が職を失い、代わりに賃金の安さということで子供が働かされる。それでは児童労働に反対するとして、子供が働かない場合の収入をどうしたらいいのか、こうしたことに対しての答えがフェアトレードだということなのです。
このように、フェアトレードに触れる、つまりフェアトレード商品を手にすることによって、世界のあらゆる問題について関るということができる。そして、何がフェアで何がアンフェアなのか、ということを知ることになる。不買運動、いわゆる買ってはいけないという運動も必要だが、まず、いくつかある選択肢の中からどれを買ったら「フェア」なのかを判断する。
考えてみれば「消費者」などという言葉は人をばかにした言葉ですね。手に入れたものを使って無くなしてしまうだけの存在ではなく、選択者として世界の問題との関わりを意識した存在でありたい。とにかくフェアトレードに触れてすばらしさを感じて欲しい。
そこで「フェアな世界」とは、ということなのだけれども、ここまではアンフェアな世界について話をしてきたから、その対極にある世界ということになるけれども、アンフェアな世界を改革する・・というか。 多国間を行き来するお金に税金を課するという「トービン税」というものがあります。通貨取引税とか、国際連帯税とか言われております。通貨が生み出すアンフェアな差を無くすために規制をかけるわけです。3年前にトービン税の研究会を立ち上げたのですが、G8サミットを目前にした時期に、国会議員もこれに関して勉強会を作りました。そうした関心が高まっているということは言えます。
アンフェアな差という点では食糧も同じことですね。WTOの審議拒否の話・・・国際的な市民社会運動としてのフェアトレード・・・。日本ではフェアトレードについては今後広く普及してゆくと思うのだけれども、一方でその裏側に何があるのかを考えるようにしなければならないですね。
フェアトレード運動というのは、互いが対等である関係の中での取引を広めようという運動なのです。単に児童労働は、そこの国や地域が貧しいから起こるのではない。先進国とのアンフェアな取引のなかで不平等な関係を強いられ、大人の労働者がクビを切られ、かわりに賃金がもっと安い子供たちがかりだされる。
(鈴木) 自分が考えているのは、人間として丁寧に暮すこと。なるべく丁寧に自分が使う品物を選ぶ、丁寧に食事を作る。そうした丁寧に暮す人たちを増やす作戦・・、密かに野望を抱いているのです。コーヒーも単に販売機から缶コーヒーを買って飲むのではなくて、きちんとドリップしたコーヒーを飲む。そうして丁寧に自分の身の回りのことを考えてゆく・・・。
押野さんもそうだと思うのですが、おいしいコーヒーをいれる秘訣は何ですか?言わばフェアに煎れるというか・・。
(押野) そうですね・・・・。まずは深呼吸。そうしてゆっくり煎れると全然味が違うのです。豆を挽いて表面のグズをふっと軽く吹きはらう。挽いた粉をドリップする前に、おまじないとして真中あたりに指で小さく窪みをつけて、そこにほんの数滴のお湯をたらして馴染ませる。ゆっくり20秒間は数えます。あとはゆっくりお湯を注いで行く。そうすると本当に美味しいコーヒーがいれられるのです。
(鈴木) おまじないは大事ですよね。気持ちを込める、気持ちの丁寧さがあらわれる。
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Q1:映像の中でもコーヒーショップで働く従業員の姿がありました。実はそうした企業に勤める人たちが何も知らない現状がある。そうしたコーヒー業界に従事する人たちへのフェアトレードの概念の普及について思うところはありますか?
A1:(鈴木) その業界に従事する人、そうでない人、消費者の人・・・、特にそうしたことを知ってもらうにあたって分け隔ては無いと思うなぁ。そうしたことが解らないということが普通だという状況を変えないとダメでしょうね。自分も含めて、消費する日本人としての責任は等しくみんなにあると思うのです。
(長坂) この映画ができたこと自体が実はこの業界にとっては非常に衝撃的なことなのです。スターバックス・コーヒーは毎月20日にレギュラー・コーヒーとしてフェアトレード・コーヒーを出しているのですが、20日以外の日でも実はフェアトレード・コーヒーを店に置いてあるのです。スモールサイズを注文すると普通のものよりも割高なのですが、Mサイズ、Lサイズでは同じ額になります。
実は、ここで普及に関して皆さんにもできることがあるのです。まずはスタバに行ったら「フェアトレード・コーヒーを下さい」と注文してください。そうすると店員の方がそう言うことを知らないことが多いですから、根気良く「あるはずだ」と続けて下さい。そうすると店の奥から支配人が出て来て、常にフェアトレード・コーヒーが備えてあってお客さんに出せるものだということを店員に伝えてくれますから。そうして従業員にフェアトレードについて知ってもらうことができるのです。
北澤肯さんが「フェアトレード・ハンドブック」という訳本を出した中で伝えているのですが、彼は持ち帰りコーヒーの紙コップを無駄に使いたくないので、自分のポットにコーヒーを注いでくれるように店員にお願いしたらしいのですが、店員は一旦、紙コップにコーヒーを注いでから、それをポットに移し変えたのでした。北澤さんはこれに怒って、その会社(コーヒー店)にメールで事の次第を伝え、意見を述べたそうですが、そうしたら一週間後に同じ店で同じオーダーをしたら、きちんと店員が要領を得た対応をしたとのことでした。このように会社に対して求めてゆくことで(フェアトレードなどが)知らしめられて行くことができるのです。
(押野) 私からも一つあるのですが、私は以前からフェアトレードに関心を抱いていたのですが、その前にアンフェアな世界とはどういうものか覗いてみようということで、大学を卒業してからすぐに商社に勤めたのです。そこでは衣料品を海外で生産して輸入するという、まさにアンフェアな取引の現場でした。どこで働いたとしても、また海外では無くても、商品を構成するのは原材料と人件費です。そういうところに目を光らせて気がつくことはできるのではないでしょうか。自分がどういう気持ちで見てゆくのか・・・。
Q2: 映像の中でエチオピアの悲しさというか、コーヒーしか作ることができない悲しさがあります。チョコレボのイベントでもガーナ人と話をする機会があったのですが、ガーナの人たちはカカオ豆しか生産することができないということでした。フェアトレードでの取引によって、かえって単一の作物や商品しか作ることができないということなら、これは多いに疑問に思うところなのですが。
A2:(長坂) フェアトレードの理念は、モノカルチャーではなく多角化を心がけるところにあります。例えば東ティモールにおけるパルシックやピースウィンズジャパンの活動にもあるように、もともとコーヒーを主として生産していなかった場で、自生していたコーヒーをフェアトレード商品にしたのですが、それ以外に豚や牛、ニワトリなどを飼ってなるべく自立した生活の基礎をかためる。現金収入はコーヒーの輸出から得る。フェアトレードによって取引上の価格の是正をはかり、一方では自給自足できるように多角化を考えるというのが活動のあり方です。
(鈴木) タイのコーヒー生産者の現場を見に行った時ですが、コーヒーが生えている周囲で自分たちが日常的に食べるための作物を栽培していました。そしてコーヒーを売ることで現金収入を得るという生活をしていました。ですから、どうやったらそこでの生活がよくなってゆくのか、その部分をクリアしながら声をかけたり手助けしたりという・・・・そういうことをこなしてこそのフェアトレードだと思います。
Q3: 最終的に店頭で販売される一杯のコーヒーの値段なのですが、生産者はほんの数円程度の収入しか得ることができません。これなどは、例えば、日本では最終商品価格に10円上乗せすることで、それを生産者に回すことができれば大きな改善になるのではと思うのですが、なぜ企業はそういう意味でのフェアトレードを選択しないのでしょう。そしてフェアトレード以外のコーヒーが大半を占めるということのなのですが、そのアンフェアな豆との差とは?
A3:
(長坂) 企業とは何か?に迫る問いかけですね。企業は存在そのものが悪であるとすら言える。利潤を追い求める中でどこかを絞ろうとする。そうしたことがことの本質にある。市民がそれをよしとしなければ通常はそうした企業は衰退してゆくことになるのですが、経済のグローバリゼーションの中で、100円ショップに疑問を持たない私たちの生活が有ります。つまり企業に対して正常な反応を示すことができないでいる。とんでもないところに来てしまっています。これを企業倫理から見直す動き、CSRなどもそうした新しい経営システム論ですね。
(鈴木) ほんの0.5ドルの配分を2ドルにするだけの話なんですよね、生産現地では、そんなに大きな配分がなされていない分、これを増やすのにそんなに大きなお金ではない。そういうことを考える大きな転換点に来ているとは思います。やっと日本もその兆しが出てきた。
(押野) 価格の大きな部分を占める要素として広告も見逃すことができませんね。そういう点ではぐらするーつは、どうやって広告し、人々に広めてきたのですか?
(鈴木) 広告費というと月々数万円ていどですね。地味に口コミで広がったというのが真相です。例えば一夜明けて昨日に比べて今日は二倍のお客さんが増えた、というようなことになった場合に、果たして品揃えが間に合うのかということを考えると、じわじわと広がるというのがいいのかなと思う自分と、いやいやそんなことでいいのかという自分と両方います。
Q4: 別に自国の作物を守るために補助金を積み上げることが悪いことだとは思わないし、企業が利益を求めて活動することが悪いとも思えません。WTOも世界の貿易を推進するという点でそんなに悪いものだとは習わなかったのです。
A4:
(長坂) 日本のように食糧自給率が40%を切った、というような場所においてはこれを関税や補助金で守るというのは肯定されるのでしょうが、例えば補助金があるから、大量に作付けしてその結果余った作物を海外に輸出する。そうして開発途上国の作物が市場から駆逐されてしまう現実があるのです。例えば、そう言ったようなよくない事柄が数え上げただけでも10以上はあるのです、WTOの問題は。
ここでは長々と説明できませんので、その辺を「NGO発 市民社会力」という本に書きましたので宜しければ読んで下さい。
それからWTOがなぜいけないかについての一番解りやすい例としては、水の民営化の話があります。今、先進国では多くの国が水に関しては公共機関が管理していますが、ガットが廃止されてWTOが設立されたと同時に、水に関係する多国籍企業に儲けさせる目的で、開発途上国に対してだけ上下水道の民営化をWTO加入の条件にしたのです。いわば強制です。自由貿易に参加するためには自国の水を外国の民間企業に委ねなければならない。
そうして開発途上国に進出した多国籍企業は、最初のうちは貧しい人々に等しく水を供給すると、そうした整備をすると言っていたのですが、実際はそれまでタダで手に入れられていた水に値段がつけられ、お金の無い人は水が飲めなくなってしまったのです。貧困・・飢餓で死ぬということは実はほとんど無いのです。大半は飢えて体力が落ちているところで、汚れた水を飲むことで抵抗力の無い体が蝕まれて死に至るのです。きれいな水を飲むことさえできれば助かる命がたくさんあったのです。そうした状況になって人々が怒り、企業が撤退したりしている。
小泉内閣が提唱した「官から民へ」の民は、市民としてのそれではなく、民間企業を指しているのです。
企業の存在そのものが悪だ、というのは、もちろん生存する物全てがそのこと自体で、環境に対しての負荷をともなうもの。例えば私にしても生きているだけでオナラもすれば食物も食べる、資源を損ねる訳ですね。そうした中での活動というものが言わば悪ではあるけれども、なるべくそれを小さなものに留めておかなければならない。
Q5: フェアトレードの認知が広がって市場が拡大してゆくことによって、フェアトレード団体どうしで価格競争が起こることはないのでしょうか?また、ヨーロッパなどでもあったようにラベルの問題が日本でも起こることは無いのでしょうか?そうした今後のフェアトレードのあり方について聞きたいのですが。
A5:
(鈴木) 日本国内での団体の間に差ができる・・・これは別に差があってもいいのだとは思います。また、まだまだ日本においては量が少ない状況です。そうですね、そうした過当競争状態になるまでに・・・あと4~5年はかかるのではないでしょうか。イオンのフェアトレード商品は安くて、第三世界ショップのそれは高い・・・ということもあるでしょうね。それは確かに怖いことでもあります。そうしたときに、ラベルとしての商品を大量に扱うイオンのようなところと、小さなショップと何が違うのか。これは大事さと丁寧さだと思うのです。それは、ある種、ショップに求められている役割かもしれません。
イオンでどれだけ売れているのかという一方で、売れ残って廃棄されているのか・・・。どちらが丁寧な売り方なのか、そういう感覚がわかる人が増えてくれるのではないかと思っています。
(長坂) フェアトレード取引によって開発途上国で恩恵を受けている人たちがどのぐらいいるのかというと、とある統計では、700万人から1000万人程度と言われます。約10億人の開発途上国全体の人口から比較すると0.1%前後ということになるでしょう。これを3%まで増やすことがメルクマールだとすると、そこに到達するまでにまだ20年ぐらいはかかるのではないでしょうか。
また、そうしたときに過当競争とか様々な問題が発生するとして、それを解決するのはあなた方若い方々にお任せします。そこであなた方が答えを見つけてくれるでしょう。
(長坂) 最後に、先ほどのWTOの件について質問なさった方に、まだ消化不良なようですので言葉を足します。
例えば、HIV/ADISですが、これは罹患しても薬を常用していれば発症しないですむ、そうした薬が既にあるのです。世界的な特許に関して協定に加盟していないタイ、ブラジルなどでは、先進国企業の製薬技術を真似て、国が指導して自国でそうした薬を製造するようにして国民を病気から守りました。これをジェネリック医薬品といいますが。WTOは、製薬会社の利益を守るために、開発途上国に対して特許に関する法律の整備を求めました。そうすれば、企業は特許料を開発途上国から徴収することができるという訳です。
しかし、これに対しては世界のNGOから大きな批難がなされています。水にしても薬にしても生命の維持にかかわる、人権にかかわる問題ですから。そうしたようなよくない面がWTOには数を上げればきりがないほどにあるのです。
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ちょっと長かったけど、いかがだったでしょうか?
6日のアースガーデンでは「市民運動としてのフェアトレード」という話から、「日本には市民運動自体が根付いていない。それは”公/公共/私”という意識がなく、”公私二元論”の社会だから」などのお話もあり、とても刺激的でした。そちらもいづれまとめられたら、と思います。
まだまだまだまだ、はじまったばかりの日本のフェアトレード!
がんばって広めて行きましょう!!