私の住むK県の、とある建物にまつわる話です。

この話は、私のクラスをはじめ、一部で一時期噂になりました。


それは三階建ての小さな建物で、お世辞にも綺麗とは言えません。

隣にはガソリンスタンドがありましたが、何年か前につぶれてしまい、今は空き地になっています。

建物には、廊下と呼べるほどのモノもなく、一つの階に扉は一つしかありません。

それぞれ、とある業者が入っているらしのですが、名前も聞いたことのないようなもので、営業しているのかすら分かりません。


そんな建物にも、エレベーターが一つ備わっています。

手前の階段を通り過ぎると、すぐにそれは見えてきます。

中はとても狭く、大人3人入るのが精一杯といった感じです。

そして、そのエレベーターには不思議な力があるというのです。


黄昏時に、真っ赤な蝋燭を持ってエレベーターに乗ります。

すると、あるはずのないボタンが増えているというのです。

そのボタンを押すと、赤い蝋燭に勝手に火が灯ります。

エレベーターの扉が開くと、その先は真っ暗で一歩踏み出すと底に無数の灯りがポツポツと灯り始めます。

それは全て蝋燭の灯りで、蝋燭の高さ太さはそれぞれ違っており、一つ一つに名前が記されています。

つまり、あの有名な「命の残量を示した蝋燭の広がる空間」へ行けるというのです。


その数え切れないほどの蝋燭の中から自分の名前の入った蝋燭を見つけると、自分の寿命を延ばすことができるんだそうです。

蝋燭の間には管理人と呼ばれる者がいて、自分の蝋燭を見つけると現れます。

管理人は真っ黒いフードつきの服を着た盲目の男だと言われていますが、骸骨姿の死神だという説もあります。

その者は到底人間とは思えないようなおぞましい声で

「生贄は何処だ」

と問うそうです。


そうしたら、ただ黙ったまま持ってきた赤い蝋燭を差し出します。

すると管理人は一度だけ、赤い蝋燭と引き換えに、他人と自分の蝋燭を取り替える権利をくれます。

自分より太く、長く、火の輝きが強い蝋燭を選べば延命できます。

ですが、終始口を開いてはいけません。

一言でも喋れば、あっという間に首を狩られてしまいます。


この部分には色々な説があり、

・赤い蝋燭と自分の蝋燭を取り替えられる。

・赤い蝋燭で火力を調節し、蝋燭の溶ける速度を抑えられる。

・管理人から新品の蝋燭を貰うことができ、赤い蝋燭で好きなだけ炎を移せる。

などがあります。


しかし、自分の蝋燭を探すには制限時間があるというのです。

それは夕陽が完全に沈むまでだそうです。

つまり、黄昏から夕陽が沈むまでの短い時間で何十億という蝋燭の中から自分のを見つけなければならないということです。

時間が来ると、エレベーターはひとりでに閉まり、建物の一階へと戻っていくんです。

見つけられなくても、その時までに再びエレベーターに乗れば戻れますが、寿命は赤い蝋燭のものになってしまいます。

エレベーターの扉が閉まると同時に蝋燭の灯りも全て消え、自分でも気付かないうちに管理人に首を狩られてしまいます。

管理人の出てこない、別の説ではその空間から永久に出られなくなります。


その建物は割と人の通る道に面しているのですが、日が沈むと時折エレベーター前に真新しい蝋が落ちていたり、無人のエレベーターが1階に来るそうです。

あくまでも噂ですが。



終わり