これは私が中学一年生のときに体験した不思議にまつわる物語です…
私の家のそばには、Y山という道路に面した山があります。
Y山には、人間が捨てたゴミがあふれていて、その光景を見たときに「まるで墓場みたいだ」と思ったことを覚えています。
Y山に面した道路は薄暗く、不気味で一通りも少ないので、昔はよく神隠しが起こったそうです。
ただ、神隠しといっても、それは人間が犯した罪の行為であったため、怪異とはまったく関係が無かったのですが…
とにかく、そういった場所であるためによく「霊が出る」という噂を聞きました。
私はそんなY山の近くで、ある不思議な体験をしたのです…。
当時の私は中学校生活にも慣れ、同じことだけが繰り返される単調な日々に嫌気がさしていました。
そんなある日、私は「霊が出る」というY山まで行ってみることにしたのです。
その時、私はいつもと違うことをすれば、何かが変わるかもしれないという淡い希望を抱いていたのでした。
そして黄昏時、Y山の近くに着きました。
そこには廃墟などもあり、とても不気味な場所でした。
私は愚かしい希望を抱いた自分を心から呪いました。
もう帰ろうと思った時に
「ニャアオ」という、猫の鳴き声がしたのです。
驚いて振り返ると、私のすぐ近くに黒猫が座っていました。
不思議と恐怖などは感じませんでした。
その黒猫には首輪がついていなかったので野良猫なのだろうと思い、喉のあたりを撫でると、黒猫はゴロゴロと目を細めて喉を鳴らしました。
随分と警戒心の薄い野良猫だなぁと思いつつ、しばらく黒猫を撫でた後、帰路に着きました。
それからというもの、休日にはY山に行き、黒猫を撫でたり猫缶をあげたりしました。
私は黒猫に「クマ」という名前をつけて呼びました。
クマは最初は戸惑っていましたが、次第に慣れたのか「クマ」という名前を気に入ったようでした。
そんな日々が半年ほど続いたある日、「野良猫が轢かれた」という噂を聞き、居てもたっても居られなくなった私は、学校帰りにY山へと赴きました。
クマはなかなか見つからず、不安になりはじめたころ「ニャアオ」という猫の鳴き声がしました。
私は鳴き声がした方へと行きました。
すると、空が雄雄しく広がる開けた場所にクマが居ました。
ほっと胸を撫で下ろし、ふと空を見上げると、目の前に虹色に輝く美しい雲が浮かんでいました。
あとから知ったのですが、それは「にしき雲」、という滅多に見ることができない雲なのだそうです。
クマが見せてくれたのだろうかと思い、「ありがとう、クマ。」と言うとクマは満足そうに「ニャア」と鳴いたのです。
私はそのとき、クマと巡り会えてよかった、と心から思いました。
しかし、その日を境に、クマの姿を見ることはなくなりました。
私はそれから何度も何度もY山へと行き、クマを探したのですが、何処にもクマは居ませんでした…。
今では私も中学三年生になり、受験のために勉強する日々が続いています。
そんなとき、クマのことを思い出すと、私はなんだか懐かしいような悲しいような…そんな、不思議な気持ちになるのです。
終わり。