私はこの日の一件以来、彼女との関係について深く考えるようになった。それまでただ一緒に時間を過ごせればいい、想いを伝え合った者同士、楽しい時間を共にできればいいと思っていた。時折未来について考えることはあったものの、悩むこと、考えることを避けていたし、湧き出れば無理やり頭の中でもみ消すようにその考えを閉じ込めてきた。しかしながらこの日、閉じ込めていたものがついに抑えきれなくなって溢れ出したのだ。しかも彼女と身体を交える最中に・・・。
もし、他人に彼女のことを「好きか?」と聞かれれば迷わず「好きだ」と言える。ただ純粋に、自分が若き頃、恋心を抱いた人に対し感じた気持ちと何ら変わりはない。「好き」に意味などない。「好き」はただ感じるものだったはずだ。
少年時代、その「好き」の想いが積もり積もると、「一緒にいたい」という気持ちに変化した。やがてその気持ちは「相手に自分のことも想って欲しい」に変化していく。そしてその相手に想いを伝え、成功するとお付き合いが始まる。その後、関係が深まっていくと今度は「自分だけの人になって欲しい」という独占欲に変化したものだ。そんな恋愛を幾度か経て今の自分が存在する。
しかしながら、どうしても私はその「好き」の先にあるものを求めようとする傾向があったような気がする。要するに、「好き」の先には「結婚」という凝り固まった先入観があったのだ。結婚にはある種の責任が生ずる。それと同じように「好き」にも責任が生ずるものだと考えていたのだ。
ただ、結婚して家庭も持った自分だ。すでに若き頃の恋愛心などすっかり忘れ去っていた。そんな最中、突如として目の前に現れた彼女。関東出張中、彼女とのメールのやりとりをする内にすっかり彼女に心を奪われてしまっていた。ただ純粋に、彼女を好きだと思った。恋は盲目だとよく言ったものだ。当初はそんな「好き」から生ずる責任などすっかり忘れ去っていたのだ。そして彼女との関係を進めていく内に、少し冷静になったのか、やっとこの時になって初めて「好き」に対する責任というものに目覚めたのだと思う。
しかし時はすでに遅かった。私はすっかり彼女の魅力にとりつかれていた。今までに「好き」になったことのないタイプの女性でもある。若くお洒落で優しい彼女。そんな彼女を失うことなど、考えてみるだけでぞっとする。もうそんなところまで彼女のことが愛おしくて仕方がない状況にまで陥っていたのだ。
そんな彼女を苦しめたくない・・・。彼女の辛い顔はもう見たくない・・・。もう、彼女を抱いちゃいけない・・・。
しかし、今後どうやって彼女と接していけばいいのだろう。何か、お互いにとって、何より彼女にとって一番いい方法はないものか。
考えよう。とにかく考えよう。結論が出るまで、しばらく彼女との距離を少しだけとってみよう。いつになるかわからないけど・・・。
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