9月30日読了


還るべき場所/笹本 稜平

¥1,943

この小説は間違いなく私の愛読書になり、ずっと持ち続ける一生の本になることだろう。


文庫落ちしていないのでハードカバーで486ページの長編をカバンに忍ばせ、ちょくちょく読むことができない。


しかし、笹本稜平という小説家は2010年の私の中で間違いなく「お気に入りNo.1」の作家になるだろう。


前に読んで本ブログで紹介した「フォックス・ストーン」 は傭兵上がりとフリーライターが遭遇するサスペンス。


本作は主人公が新進気鋭の登山家で、友人と恋人と挑戦したK2で恋人を失い、登山に対する情熱を失っていたが、友人が立ち上げた会社で企画した公募登山の手伝いをすることになる。


公募登山のメンバーには一代で会社を大きくした大手メーカーの会長がいる。


この会長と会長に登山を指南した秘書、主人公の言葉がとても深い。



「希望は向こうからやってくるとは限らない。迎えに行くのを待ってる希望もある。前へ進めば、必ず開ける未来がある。」


「人間は夢を食って生きる動物だ。夢を見る力を失った人生は地獄だ。夢はこの世界の不条理を忘れさせてくれる。夢はこの世界が生きるに値するものだと信じさせてくれる。」


「どんな目標への挑戦でも、いや人生そのものに対しても、絶望というピリオドを打つのは簡単なことだ。しかしそれは戦い抜いての敗北とは意味が違う。絶望は戦いからの逃避だよ。あるいは魂の自殺行為だ。」


本当に深い言葉だ。本書の中でこの言葉を読むと本当に胸が熱くなる。


また、非常に近い存在だった人を「自殺」という失い方をした私にとって、その人が夢を失っていたのか、絶望していたのかと思い起こしてしまった。


1年に一度は手にとって読みたくなる名作。


笹本稜平氏、さらに著作をまた買ってしまった...