その原因は、実に些細なものだった。

「小太郎!!ねえって!」
「…ッ.なんだよ。うるせぇ」

 昼休みに俺を弾んだ大声で引き留めて来たのは幼馴染みの新山桜。と
俺、椎ノ木悠は弁当箱を片手にし、もう片手で耳を塞ぐと渋々振り向く。

「あのさ、今度これ行かない?」

そう言って桜が見せてきたのは
「奇跡の天才芸術家!弓良幸太展」と書かれているチラシだった。

「ゆ、ゆみよし……?幸太は読めるがこれ何て………」
「はあっ!?あんたこの人知らないの?゛ゆら゛よ!ゆーらっ!」
「はあ……」

 どうやらあれは「ゆら」と読むらしい……芸術やら美術何て興味ないし、まして名前なんてもっと興味ない……
なのに、まさか読めないだけでそんな言われ方するなんて誰が予想するか……
色々と疑問を抱きながらも俺は再びチラシを見る。
 場所は俺達の住む柏木町にある美術館。歩いても行ける距離だし、昔から馴染みのある場所だ。
どうやら桜はこれの為に俺を巻き込みたいらしい……

「……拒否権は…?」

 俺は恐る恐る聞く。幼馴染みだし分かってるんだ。拒否権何て無い。
でも、聞くだけ聞いた方が気が楽になれる。
質問に対する答えはすぐ出た。

「無いわよ。どうせあんたは暇でしょ?」
「ま、まあそうだが………」

こうして俺は、桜に連れられ出掛ける事になったのだ。