『ヒロ君、いつもより楽しそうね。』
「あったりまえだよ!だって、今度の冬祭りのメインだよ!?」
走っていくちーくんをみて、お姉ちゃんがびっくりしたように目を丸くする。冬祭りは、夏祭りの次に大きなお祭りで、年越しをする前の準備をする。今年中に叶えたいこととか、やりたいこと、そういうのをはっきり紙に書いて、篝火で焼くのが伝統だ。
「すごいよね!私も、負けないように踊りの練習するんだぁ。」
太鼓と競演する演舞は、舞手をくじ引きで決める。私は去年も外れちゃって、まだやったことがない。でも、ここに住む女の子の、叶えたい夢の一つには絶対入ってる。勿論、真剣に取り組んでいる踊り場の人からしか選ばれない。
『ちよの舞、綺麗だものね。始めてみたときはびっくりしちゃった。』
「そんなことないもん!あーちゃんの方が上手だよ。」
初めてお父さんとお姉ちゃんの前で、踊り場の人なら誰でも出来る舞を舞って見せたときの事を思い出す。あの時は、まだ男の人が怖くって、変なところで鈴を鳴らしちゃったんだ。それでも、上手いとほめてくれたお姉ちゃんには、その時懐いた。あーちゃんとは、私より四つ年上の隣のお姉さんで、一昨年に冬祭りで舞を踊った。一階踊ると、もう二度とできないから、あーちゃんは今回のくじ引きには入っていない。
『確かに、彩さんは身長もあるし手足も長いし。でも、ちよにはちよにしか出来ない舞があるでしょ?』
「うー・・・、千鶴っていうのは私が一番っておばあには言われるけどなぁ。」
『あら、じゃあ今度はそれ、見せてね。』
ぽん、と手を合わせてお姉ちゃんは笑うと、聞こえてきた太鼓の音に耳を澄ます。
「あ、これ秀ちゃんだ。」
お姉ちゃんには分からないみたいだけど、小さい頃からちーくんと聞いてる私には、誰がどの音か直ぐにわかる。ちーくんだったら尚更。ちーくんも、私の舞う、鈴の音はすぐに分かるっていってた。
「今度はちーくん。やっぱり上手だよね!」
『うーん・・・、上手なのは分かるけど、誰がどれかはわかんないかも・・・。』
こういうとき、お姉ちゃんは損してると思う。お姉ちゃんだけじゃない。お母さんも、お父さんも。