3652 伊坂幸太郎エッセイ集 ★★★☆☆

¥1,365
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次々と映画化もされている、今人気の作家、伊坂幸太郎のエッセイ集です。
伊坂さんの作品、全部読んだわけじゃないけど、今まで読んだ中では、「重力ピエロ」、「チルドレ
ン」などが好きです。
伊坂さんの小説は、基本的にはミステリーなんだけど、深刻な場面や切羽詰まっているはずのシ
ーンでも、登場人物の会話とか主人公の思考が何か呑気というか、余裕がある
というか、読んでる方もあまりドキドキしないというか・・・安心して読めるんですよね。笑
文体が独特だからですかね。語尾なんかも、
やばいぞ、と、思う。
みたいな感じ?笑
全体的に、さらっとしているというか。
さくさく読めてしまいます。
あとは、ドロドロした人間関係とかが一切ないのがいいです。
こういう爽やかで、でも軽くはなくて、全部が全部、ハッピーエンドってわけじゃないけど、希望の
ある終わり方のお話が多くて、しかも面白い作品の多い作家さんって、意外といない気がします。
年配の方にはあんまり受けない気もしますが・・・
勧善懲悪で、わかりやすいお話が多いし。
でも小説って、娯楽のためのものだと思うから、深いテーマとか、問題提起とか、メッセージ性の
あんまりないものでも、面白ければ、それで良い気がします。
言葉を楽しむためのもの、お話を楽しむもの、教養のためのもの・・きっと皆、色々分けて、楽しん
でいるんだろうなと思いますし。
話が逸れました。
伊坂さんの小説で、逆にあまり好きではなかったのは、「ラッシュライフ」、「魔王」、「砂漠」でし
た。好きじゃなかったというより、記憶に残っていないものですね。
私的には、長編より短編の方が、外れがない気がします。
「チルドレン」、「死神の精度」、「終末のフール」、「フィッシュストーリー」、どれも面白かったです。
「フィッシュストーリー」以外は連作です。
あと伊坂幸太郎と言えば、作品間の、登場人物のリンクですよね。
1回目は見逃していても、2回目に読むときに気がついたりして、ちょっと得意な気持ちになった
り します。笑
ちなみに私は、黒澤さんが好きです。
黒澤ファンの方には、「フィッシュストーリー」の『サクリファイス』がお勧めです。
さて、「3652」の感想です。
所々、くすっと笑えて、今までの小説の裏話的なものもあって、なかなか面白いです。
ただ、面白いのですが、あくまでも小説のファン向けっていう感じです。
エッセイとしては、やっぱり本職の人たちの方が面白いです。
って当たり前か。笑
一つ一つのエッセイがかなり短いので、通勤通学時の電車の中とかで読むのに良さそうです。
私が印象に残ったのは、「心を広く」、「青春文学とは?」という題のふたつです。
「心を広く」という題のものは、「とても狭量なんです、と告白をしてしまいます。」という文から始ま
り、黒澤清監督の『アカルイミライ』という映画がとても気に入っているが、コンクールでは受賞し
て欲しくない、なぜなら、「あれは僕の映画だ。誰にも見せたくない」という歪んだ愛情が先に立っ
てしまうからだ、などと、自分の心の狭さをユーモラスに書いた内容です。
共感してしまいました。笑
誰にも見せたくない、とまでは思わないけど、この映画は友達や家族とじゃなくて、ひとりで観たい
っていう時、あります。
なんか、すごく好きなものだからこそ、感想が全く違うとか、あんまり好きじゃなかったと言われた
りしたら、現実に引き戻されるというか、自分の中で完結している世界観みたいなものが壊れてし
まうんじゃないかって思うんですよね。
伊坂さんが言ってるのは、ちょっと違う意味かもしれないけど。
「青春文学とは?」というのは、いくつかの問いに、伊坂さんが答えています。
「『青春文学』とはどんなものだと思いますか?」
「僕にはきっと、特別あつらえの人生が待っている」と無根拠に思っている若者の話ではないでし
ょうか。
「『青春』とは何だと思いますか?」
「僕にはきっと、特別あつらえの人生が待っている」と無根拠に思っている時期のことではないでし
ょうか。
わぁお。私思ってるかも。笑
いや、そこまではさすがに思っていませんけど(笑)、このまま死ぬまでそれなりに幸せに暮らして
いけるんじゃないか。とは思ってます(*^^)
・・・甘いかな?
でも、誰もが通る道みたいなので、気にしません。笑
このエッセイ集の題、「3652」というのは、ちょうどデビュー10年目に出すから、365日×10年とうる
う年2回で、3652日、という意味だそうです。
本の内容は2000年から2010年にかけて雑誌などで連載したものをまとめたようです。
エッセイのテーマは、音楽(ロック)、映画、小説(自分のも他人のも)、家族(主にお父さんネタ)な
どが多かったと思います。
伊坂幸太郎ファンは楽しめる一冊だと思います。
