軽いネタバレもあるので、映画を観てから読んだほうがいいかも😉




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小児がんを患い、わずか12歳で生涯を終えた森上翔華さんの実話を基に製作された映画『神さま待って!お花が咲くから』が現在公開中だ。今回は、本作に出演の北原里英さんと、松村克弥監督に独占インタビューを敢行。撮影の裏側から、北原さんの素顔まで、たっぷりとお話を伺った。(取材・文:福田桃奈)




「救いがないように見せる力がある」
強く生きた少女の物語
「見せない力」の誤記


ーー重い題材ではありましたが、それを感じさせないようなコメディタッチな構成やキャスト陣のエネルギッシュな表現で、エンターテイメントとして楽しむことのできる作品でした。プレス資料によると、実際に小児がんのため12歳で生涯を終えた、森上翔華さんが闘病中に完成させた絵本にまつわるニュースをプロデューサーの“とめぞう”さんが観たことから、この企画が立ち上がったそうですね。そこから松村監督にお話があったのは、どのタイミングだったのでしょうか?

松村克弥(以下、松村)「今回のもう1人のプロデューサー渡辺健一さんにお声がけいただいたんですけど、渡辺さんとは、2008年に起きた秋葉原通り魔事件をモチーフにした映画『ALL NIGHT LONG-誰でもよかった』(2009年製作)というホラー作品を製作した時から親交があったんですね。

僕はあまり現場で口出しをしない方でして、今回は子供さんたちが多い現場だったので、ガミガミ言うと子供が萎縮しちゃうというのもあって、渡辺さんが『松村監督なら、あまり怒らないから』と選んでくれたそうです。

あとは、よくドキュメンタリーを撮っていたこともあり、ヒューマンな作品も多く製作していたので、そういうテイストも気にいってくれたんだと思います」

ーーー実際に監督されることが決まった時は、どんな心境でしたか?

松村「実は、こういうジャンルは初めてでして…。今までは、男性の名優さんたちが出演する作品が多かったので、子供たちの映画を撮ったことがなく、『どうやろうかな?』と思いましたね。でも、北原さんがお世辞でも何でもなく、僕のイメージを超えてやってくれたのが、とにかく感激でした」

北原里英(以下、北原)「わー嬉しい!」

ーー北原さん演じられた脇坂和美(通称:ワッキー)は、若いながらも優秀な小児科医ですが、シビアでクールな性格のため、“氷の小児科医”と呼ばれている役です。今回の役は、難しかったと思いますし、演じていて辛い気持ちになることも多かったのではないかと思いますが、この役が決まった時、どんなことを感じましたか?

北原「まず台本を読んだら凄い泣いちゃって…。でも、ただ泣けるだけじゃなくて、とても良い話だなって思ったんです。

実は、この物語には“救い”が無いんですよね。でも主人公の翔華の笑顔が、“救いがないように見せない力がある”。

そして、私が演じたワッキーの気持ちもめちゃくちゃ分かったんですよ。こういう性格になってしまうのは、お医者さんを続けていたら仕方がないし、本当は心温かく、助けたい想いが強いけど、それを表に出さないことも凄く理解出来たので、難しそうということは無かったんですけど、それを出演シーンの中で上手く表現できるのかどうかという心配はありました」

ーー演じるにあたり、どんな風に役作りをされましたか?

北原「劇中に出てくる医療用語は調べたんですけど、結局何も分からなかったので、改めてお医者さんって凄い仕事だなと思いました。

ワッキーに関しては、感情を押さえ込んで生きているタイプだと思うんですけど、そこには押さえ込まなきゃいけないほどの大きな感情がないとダメじゃないですか。

この撮影が2年前の秋頃だったんですけど、ちょうどその頃舞台をやっていて、感情を出している時期だったんですね。普段はあまり感情的に生きていないので、そういう時期に撮影できたのは、とても良かったなと思います」

ーー物語の終盤で、ワッキーが初めて感情を露わにするシーンが登場しますが、そのシーンを演じるにあたり、気持ちの作り方など、どういう準備をされましたか?

北原「そのシーンが一番不安で、そこをちゃんと描かないと意味がないから、出来なかったらどうしようと、1日中そのシーンのことを考えてる時間が多かったです。

私、子供が大好きで、現場に子供がいると凄く嬉しいので、コミュニケーションを取りたかったんですけど、今回はそんな余裕が自分にはなくて、残念で心残りなんです。

それだけそのシーンに対して気がかりだったんですけど、撮影が始まったら、看護師役の畑下園恵(通称:ハッシー)を演じた大関れいかちゃんが、ちゃんとお芝居を受け取ってくれているのを感じたので、それに救われました。自分1人じゃなく、れいかちゃんが一緒に気持ちに寄り添ってくれたのが助けになりました」


「自信に繋がった」
初タッグでの監督からの言葉


ーー今回、お二人は初めてタッグを組まれたと思いますが、お互いの印象はいかがでしたか?

松村「北原さんは、目に説得力があるから、嘘がないし、見ていて伝わる。それは、カメラに向けてもそうですし、相手役に対してもですよね。

最後のシーンで、本作のタイトルを暗示させるセリフを言う場面があるんですけど、あそこは現場で痺れ、スクリーンで見た時につい泣きました(笑)」

北原「撮影が終わった時に、直接言いに来てくださって、凄く嬉しかったです。それまではそんなにコミュニケーション取ってなかったんですよ(笑)」

松村「ダメなのよ(笑)。コミュニケーションを取らないことで、ある意味緊張感を保つところもあるんですけど、北原さんは何も言わなくてもイメージを分かってくれるから、だからこそ、そんなに会話はしなかったんですよね」

北原「最後に来てくださって、『凄い良かった』って話してくださったのが本当に嬉しかったので、この撮影は心に残ってますね。自信に繋がったというか…。

、自分に自信がないし、その中でもお芝居が一番自信なくて。好きすぎて本気だから『この程度でやっちゃいけない』と思うことが多かったんですけど、褒めていただいたことで自信になったので、とても記憶に残ってます」

ーー最後にワッキーが看護師さんから伝えられる大切なセリフがありましたが、急遽現場で変更されたそうですね。

松村「そうなんです。監督補さんの助言もあり『このままではワッキーは終われない』と思ったんです。

現場で自信がない事も多々あるけれど、あの時現場で思いついたセリフは、『よく思いついたなぁ』と思いますね(笑)。看護師役の2人も良かったし、北原さんもお二人とも積極的にコミュニケーション取られてましたね」

北原「そうですね。共演シーンが多かったし、れいかちゃんの役とは幼馴染という設定だったので、昔から友達だったように過ごせたらいいなと心がけました」

ーー北原さんは今までも多くの作品にご出演されています。先ほど『自信がない』とおっしゃっていましたが、普段演じるにあたり、どんなことを意識されていますか?

北原「その時演じる役や、その時期の自分のマインドによっても変わるんですけど、最近先輩に言われた言葉があって、『普段生きてて緊張する場面以外で緊張することはないから、お芝居で緊張するのは変だ』と言っていただいたことに対して『確かに!』と思って。

ピアノの発表会のシーンだったら、発表会に対する緊張はいいけど、例えば、お母さんとの食卓のシーンで、監督から『本番!』と言われたら、普通だったらやっぱり緊張しちゃうじゃないですか。でも、本当ならお母さんとのたわいのない会話をするシーンだったら、緊張してる時点で嘘なわけで…。だから先輩にそう言われてから、なるべく緊張しないことを目標にやってます」

ーースタッフや共演者、さらにカメラがある前で演じるのって凄く緊張しますよね。緊張しないために、実践してることはなんですか?

北原「めっちゃ普通ですよ…。深呼吸です(笑)。緊張すると息の仕方を忘れるので、深呼吸をするのと、最近やってることは、役を演じると役名があるじゃないですか。でもその時与えられたものだから、正直馴染みがないんですね。でも本当だったら、その名前と共に人生を歩んできたわけだから、名前を書くようにしています。たとえ書くシーンが無かったとしても、自分の名前として染み込ませるために、役名を名前として捉えるということをやっています」

ーー今後、どんな役を演じてみたいですか?

北原「現場に子供がいる環境が凄く好きだし、真っ直ぐに向かってきてくれるから、自分のお芝居も影響を受けて真っ直ぐになるんですよ。しかも子供に伝えようとすると、不純物を排除して伝えないといけないから、“余計なことをしない”みたいな、お芝居をする上での自分の課題と合ってる気がするので、子供とお芝居したいですね。あとは、年齢的にもお母さん役を今後増やしていけたらいいなと思います」

ーー最近、ハマっていることはありますか?

北原「スパイスカレーを作るのが趣味で、コロナ禍以降からカレー作りはずっとやってます」

ーー最後に、本作を観る方にメッセージをお願いします。

北原「一見すると、絶対泣ける話だし、悲しい話のように見えるんですけど、この映画って本当にただのお涙頂戴じゃなくて、観た人が前向きに、明日からちゃんと生きたいって思える映画になっているので、この映画が明日を生きるパワーになってくれたらいいなと思いますし、としては親子で観てもらえたらいいなと思うので、沢山の方の考えるきっかけになったらいいなと思っております」

松村「プロデューサーのとめぞうさんが、9割は笑い、1割は感動と言っており、ただ可哀想な面だけじゃなく、小児がんという厳しい現実と向き合いながらも、ひたむきに明るく生きた翔華さん自身のリアルな面も描かせていただきました。

僕は普段自分の撮った映画を『ああすれば良かった、こうすれば良かった』と反省してしまうので、基本的には観ない方なんですけど、今回の映画の舞台となった広島県福山市で、先行披露上映会があった際に、初めて大きなスクリーンでみなさんと一緒に観たんですね。そしたら、本当に多くの方が感動してくださっているのを感じたんです。色んな世代の人に広がる可能性のある作品になるんじゃないかと思うので、多くの方に観てもらいたいです」
(取材・文:福田桃奈)


【作品情報】
新倉聖菜
北原里英 / 布川敏和 渡辺梓
秋元帆華(TEAM SHACHI) 坂本遥奈(TEAM SHACHI) 大関れいか 夢空
城之内正明 とめぞう 小泉光咲(原因は自分にある。) 上村佳里奈
曽我廼家寛太郎 高畑淳子 竹下景子

企画・プロデューサー:とめぞう
監督:松村克弥 脚本:桜風涼(渡辺健一) 音楽:長谷川哲史
主題歌:手嶌葵「はなまる」
挿入歌:本田美奈子.「1986年のマリリン」/ 麻友「今日は昨日より、素敵な今日で」
配給:フューレック 配給協力:LUDIQUE
製作:一般社団法人 海と空キネマ
製作協力:株式会社フューレック 翔華ちゃんの映画を成功させる会