1年の終わりということで、今月は胸に秘めた思いを放出すべく、もうひとつ番外編をしたためてみようと思います。


今や付録付きの雑誌というものは珍しくなく、児童誌のペーパークラフトや年末の家庭誌にお決まりの家計簿などは遠い過去のものになっています。
女性誌の付録のフェイスローラーとか、有名ブランドのポーチのクオリティが話題に上がったこともありましたっけ。


カーモデルまわりでもこの傾向は顕著で、各号に1台ずつミニカーが付属する「○○名車コレクション」系と、毎号数点のパーツが付きそれを最終号まで組み立てると1/10程度の大型モデルが完成する「○○をつくる」系が2大勢力になっています。


そのうち「コレクション」系雑誌の付録に付くミニカーは、過去には1/43スケールが主流で後に1/24スケールという大きめのものが出ました。
そして現在ではTLVと肩を並べるディテールの、1/64スケールミニカーが付録の雑誌まで刊行される盛況振りです。


そんな中、昨年静岡県で6号まで先行販売され、今年5月に全国販売されたのが朝日新聞出版発行の「トミカ歴代名車コレクション」誌です。
子どもから大人まで広く知られているトミカが付録だとあれば、コレクターとして手を出さずにはいられません。


ただしフルコレクションではなく、レギュラートミカ黎明期に名を連ねていた車種のみをつまみ食いです。
そこで今回はいつものような個々のモデルのレビューではなく、シリーズ全体に対して思ったことを独断たっぷりに書き綴ってみます。


入手したのは
トミカ歴代コレクション
第1号 フェアレディZ 432
第3号 トヨタ2000GT
第6号 コスモスポーツ
第7号 ブルーバード SSSクーペ
第9号 クラウン パトロールカー
第13号 コロナマークⅡ ハードトップ
の6品です。

 

 



トミカのごく初期モデルのリメイク版6車種。新金型である点とクラウンがノーマル車ではない点を除けば、そこそこ及第点と言えるでしょう。

 

 


はじめに出版に際して告知された記述を記しておきます。
『「トミカ歴代名車コレクション」は、50年以上にわたってトミカを世に送り出し続ける株式会社タカラトミーが、これまでに発売した1100以上の車種のなかから、トミカを語るうえで欠かすことのできない歴代の名車60台を厳選。
現存する貴重な金型を使用したボディに、オリジナルのカラーリングを施したスペシャルなトミカとして紙箱に収め、マガジンとともに毎号1車種ずつお届けしていくシリーズです。』
とのこと。

 

 



知名度のあるトミカを付録にし同種他誌と差別化を図った「トミカ歴代名車コレクション」。前途洋々に見えた商品だったのですが…。

 

 


ではまず付録のトミカについて。
今回ジブンが購入した6品はいずれもトミカ誕生初期にリリースされていた車種ですが、近年のトミカ各製品の慣例に漏れず新金型によるリメイクモデルとなっています。
もうこの段階で、頻繁に活用されている新金型に対し「現存する貴重な金型を使用」とは言えないのではないのか、と疑念を抱いてしまいました。


ディテールは過去品と変わりなく色違いに留まりますが、レギュラートミカではこれが通常のバリエーション展開なので異論のない範囲です。
ボディカラーはこのシリーズ独自のもので、通常品では見られなかったカラーリングになっています。
ただし旧金型モデルの同型車で見覚えのあるカラーばかりで、目新しさはあまり感じないのが正直なところです。


その中で黒ボディのコスモスポーツは新旧金型を通しても初登場で、コレクションに変化を与えるモデルと言えます。
コスモらしいカラーかどうかは疑問が残りますが…。
もう1品、赤ボディ黒ルーフに白内装のコロナマークⅡもぜひとも手元に置きたいモデル。
というのは旧金型のマークⅡが現役モデルだった頃のカラーリングのうち、唯一復刻されていなかった仕様なのです。

 

 



ジブンはトミカ30周年の時の6台セット用ケースにディスプレイしています。たいしたモノでなくてもすごく見栄えがするのが不思議です。

 

 


ところで「オリジナルのカラーリング」のニュアンスですが、本来オリジナルとは起源とか大元を意味するはず。独自という意味合いでオリジナルというのは厳密には不適当と言えます。

野暮な物言いになってしまいましたがオリジナル(独自)のカラーリングをウリにしながら、コロナマークⅡについては本家に存在したカラーリングと同一なのは何故なのでしょう。クラウンパトロールカーはボディカラーを変更するわけにいかないので理解できますが…。

言葉尻にこだわると、オリジナル(独自)ではないカラーリングを施されたコロナマークⅡがいちばんオリジナル(起源)っぽく、コレクター受けしそうに思えました。


続いて冊子についてです。
雑誌として売られる商品なのでトミカよりこちらが主役のはずですが、視覚的にも存在感に欠けるのはこの手の商品のあるあると言えます。
記事の内容もこう言ってはナンですが、実車についてもトミカについても関連書物で何回も語られて来たレベルに終始しており、見た目と同様に薄っぺら感が否めません。


特に肝心なトミカについての記述は、最も重要であろう新旧金型のモデルがあることに触れられておらず、過去品の紹介でも旧金型モデルのバリエーション品として新金型モデルが扱われているありさまです。


このような新鮮さと正確さが欠如していることに加えて、一部のコレクターからは価格に見合ったクオリティが見られないとの、割高感を指摘する声も聞かれます。
確かに窓枠やフロントグリル、テールランプなどに彩色があり、細かいエンブレム類もタンポ印刷で再現された近年のトミカを見慣れてしまうと、何故500円の通常品に可能なことが約2000円もするトミカにできないのか、理解できないのかも知れません。


別の視点から見ると、デアゴスティーニ社発行の「日本の名車コレクション」誌が1/64スケールのホビーミニカーを付録にしながら2199円であることを考え合わせると、確かに割高感は否めませんけどね。


この件については、各車種の当時のモデルに寄せた彩色に仕上げていると解釈すればノープロブレムと思われます。
実際に新しめの車種には細部の彩色が施されていますし。


「トミカ歴代コレクション」はこのレビューを書いている2023年12月現在で第15号まで販売されています。
そのシリーズ15台中、金型改修や新金型によるリメイクモデルが12点、ドリームトミカなど派生シリーズの仕様替えモデルが1点、通常品として売られなかったイベントモデルなどの仕様替えモデルが1点となり、純粋なレギュラートミカ出自のモデルは1点だけになっています。
このように本来のトミカに無縁だったモデルばかりのラインナップでは、どの辺が「歴代」なのかわからないですよね。

 

 



静岡県での先行販売時と全国販売開始後の、以降のラインナップ紹介。相変わらず派生シリーズ出自と思しきモデルが名を連ねているのが分かります。

 

 


そして、なんと、ついに。
批判ばかりのレビューになってしまい心苦しいなと思っていた矢先、出版元から2024年2月発行の第20号をもって休刊になるとの告知がありました。
理由は諸般の事情だそうですが、がっかり半分やっぱり半分が正直な感想です。
新金型を現存する貴重な金型と騙ったり、本家にあるカラーリングをオリジナルと称したり。明らかにトミカを知らない担当者が企画した付け焼き刃的な内容の商品では、コアなコレクターにもライトなコレクターにも響かなかったのだと推測します。


最後に、もしいつか復刊することがあればこういうのを望む、という妄想をひとつ。
トミカを生産する金型は、破損などに備えて複数個が作られると聞いたことがあります。
そこでもしひとつでも金型が残っていて生産が可能であれば、13番コルトギャランGS、17番チェリーX1、18番ギャランΛ、69番マークⅡ2600グランデ、74番ローレルSGX、75番ブルーバードG6・E-L、99番ルーチェAPなど、再生産に恵まれなかったモデルを取り上げるとか。
これこそ「現存する貴重な金型」を謳うにふさわしいモデルになり得ると思うのですがね。
あっ、できるのなら既にやってるだろ、というごもっともな声はナシで…。


では今回はこの辺で…。