14万人がみた“革命的Ustream放送”「激笑 裏マスメディア~テレビ・新聞の過去~」の裏側
3月23日14時10分配信 ITmedia News
●NHKの放送記念日特番にぶつけた「ネット裏放送」
この「激笑 裏マスメディア~テレビ・新聞の過去~」は、Ustreamでの生放送を1年ほど前から行っている「ケツダンポトフ」のそらのさんによる放送だ。Twitter+Ustreamの世界では日本でナンバーワンと言える存在で、裏側を含めた全てを放送する「ダダ漏れ」として、著名人インタビュー・イベント取材・発表会取材などを毎日行っている。
今回の生放送には、ネットメディアの世界をリードする著名人ばかりが集まった。司会はメディアジャーナリストの津田大介氏、元ライブドア社長でのSNS株式会社ファウンダーの堀江貴文氏、ジャーナリストの上杉隆氏、オープンソース開発者でアルファブロガーの小飼弾氏、「切込隊長」としておなじみの山本一郎氏、そして飛び入りとしてドワンゴ会長の川上量生氏が参加。これだけ豪華な顔ぶれが集合するのはめったにないことだ。
当初の内容はシンプルで、NHKの放送記念日特番として同日に放送された「激震 マスメディア ~テレビ・新聞の未来~」にツッコミを入れようというもの。ケツダンポトフ・そらのさんの放送では、以前に「朝までダダ漏れ討論会」として、「朝まで生テレビ」風の討論番組が田原総一朗・津田大介氏の司会で行われている。その時も7000人近くの視聴者があったが、今回の放送はさらに増えてピーク時で1万人以上、トータルで14万ユーザーが視聴。その時点ではUstream世界ナンバーワンの視聴者数となった。日本でのUstream放送では、おそらく歴代ナンバーワンだろう。
●2日前に発案、収録場所は小飼氏自宅で2時間前に決定
著名人が6人も集まった討論会だけに、準備や中継設備もさぞ大変なものと思うかもしれない。しかし実情は笑ってしまうほどの、ぶっつけ本番だ。アイデアが出たのはわずか2日前で、Twitterに出ていたNHK特番の広告に「これの対抗をやったら面白いかもね」というつぶやきから始まっている。上杉隆氏がタイトルを決め、参加者がフィックスしたのは前日だった。
そして収録場所はギリギリまで二転三転し、最終的に小飼弾氏の自宅に決まったのは、なんと放送スタートの2時間前。小飼氏の自宅マンションのリビングルームから、視聴者14万人オーバーの放送ができてしまうのだから衝撃的だ。
こんなぶっつけ技ができるのは、やはりTwitterの力が大きい。企画が出るのはTwitter、内容を固めるのもTwitter、集合場所を伝えるのもTwitter。リアルタイムウェブだからこそできる離れ業だと言えるだろう。
さらに驚くのは、この生放送を現場で行っているのは、そらのさんたった一人だということ。カメラ・PC・三脚などの収録セットを担いで現れ、そのまま一人で中継してしまう。ケツダンポトフを運営しているソラノートのオフィスではスタッフ1人がサポートしているものの、現場にはそらのさんしかいない。放送では他のスタッフがいるように見えたかもしれないが、あれは取材陣(といっても筆者を入れて二人のみ)が雑用を手伝っている状態だ。
●放送禁止用語炸裂のフリーダム放送
第1部は午後9時30分からスタートし、NHKの特番にツッコミを入れていく。討論の内容をもとにするのだが、残念ながらNHKの映像・音声は流すことができない。そこで出演者がイヤホンで聞きながらのトークとなった。
ここの内容は、ぶっちゃけて言ってしまうと「飲み会」だ。テレビを見ながらのトークなので断片的だし、基本的にはツッコミとなるためだ。上杉隆氏が「記者会見を開放しないのがメディアの構造自体に悪影響を及ぼしている」と真面目に言うそばから、山本氏が「○○!」と不穏当な発言をしたり、小飼氏が「○○○!」とテレビでの放送禁止用語を連発してしまう。これで放送が成り立ってしまうのもUstreamの面白さだろう。
グダグダな流れでも臨場感は伝わるし、メンバーがメンバーだけにちょっとした一言でも面白さがある。この時点で視聴者が7000人を突破し、用意されたハッシュタグへの書き込みが多すぎて、現場ではTwitterを追えない状況となった。
NHKの放送終了後は第2部として、参加メンバーが討論する形となった。ただしこれも台本は一切ない。第2部をすること自体も、司会の津田氏が「これNHKの放送中は収拾がつかないから、放送終わってからちゃんと討論をやろう」と放送中に言って決まったもの。なんともフリーダムな放送だが、それでも成り立ってしまうのは、裏側をすべて見せる「ダダ漏れ」というコンセプトと、司会の津田氏の仕切りがうまいからだ。
●トラブルで1時間停止後も視聴者数1万人
NHKの特番が終わったと同時に、放送中に参加メンバーが電話をかけ始める。NHK特番に出演していた人に、こちらへの合流を呼びかけるためだ。それに応じて、なんとニコニコ動画でおなじみのドワンゴ・川上会長が、NHKから収録現場の小飼氏の自宅にかけつけてくる。
ところがここでUstream中継にトラブルが起こった。あまりに視聴者数が増えたためか、Ustream中継ができなくなってしまったのだ。無料アカウントの状態だと7000~8000人でロックがかかってしまうようで、中継が30分程度止まってしまった。
急きょニコニコ生放送もやろうとなったのだが、午前0時を回っているため公式チャンネルを放送できるスタッフはいない。そのためニコニコ動画のユーザー生放送で有名な伊予柑氏にヘルプを頼んでタクシーで駆けつけてもらい、そこからはUstreamとニコニコ生放送の2本立て中継となった。
この時点ですでに深夜0時半ごろなのだが、Ustreamで7000~8000人、ニコ生で2000人弱の視聴者がいて、ピーク時には1万人前後が視聴していた。特に後半部分で堀江氏がライブドア時代の戦略と反省を語り出した部分、そして川上氏がモバイルでの可能性を語った部分では、Twitterでも大きく注目された。
●反省点も多数だが、歴史的生放送であることは間違いない
ただし問題点もいくつかあった。アルコールが入ってしまったため、不穏当な発言も出てしまったこと(それ自体もUstreamの面白さだと思うが)、そしてTwitterとの連携がうまくいかなかったことだ。
司会の津田氏はTwitterで「『ダダ漏れ』やgdgd(筆者注:グダグダのこと)が悪いんじゃない。俺もそういうのは好きだし。でもかけた看板との著しい齟齬とか、インタラクティブ性を謳っておきながら、視聴者のTLの拾い上げができない感じが、朝ダダ以降多くてそれが俺には辛い」とつぶやいている。
あまりに視聴者が多く、TL(タイムライン:Twitterでのつぶやき一覧のこと)が飛ぶように流れて追いつかないのだ。またTLから拾って出演者に伝えて進行する役(テレビで言うフロアディレクター)がいないので、どうしても視聴者からの声を放送に反映できない。Ustreamやニコニコ生放送では、見る側からのレスポンスをダイレクトに放送に反映できるのが最大のメリットであり魅力でもある。それがうまくいっていないのは今後の課題と言えるだろう。
しかしながら、今回の放送が歴史的快挙であることは間違いない。Ustreamでは日本一と思われる視聴者数となったこと、そしてマスメディア対ネットという構図で行われたNHKの放送に、ネット側が革新的なスタイルで対抗したことは快挙と言える。討論の内容はもちろんのこと、今回の放送をすること自体が既存のマスメディアに対する、ネットからの反論・アプローチになったと思う。今後もUstreamのムーブメントに注目したい。