【バッチングの話】〜時間を生み出す方法 前編
「わぁ~。久しぶり! 本当。何年振りかねぇ。」
そんな会話から始まったランチ。
古典・水墨画のような景色が見えるレストランで
優雅なランチを経験できるのに、彼の携帯は次々となり続ける。
「今日はちょっと携帯お休みしてみれば?。」
「おっと。そうだったねぇ。 Dは携帯否定型だったか。。」
「いやいやぁ。そんなことはないよ。ただ使い方は個人個人だからねぇ。。」
【2005年 ロサンジェルス 夏】
朝起きると直ぐにメールチェック。
綺麗な「メールチェック中」のロゴが表示されたと思うと
着信98通。
「。。。。」
早朝から一通一通丁寧に返信する。
午前中、精一杯使って返信したメールは
ランチを食べ終わった頃には返信メールの嵐。
「毎日トレーニングすれば。。」
メール返信内容も効率よくなってくる。
“Good Morning“の挨拶もないまま、
ポイントだけを返信。。
「僕は社長だからいいかぁ。。」
“良い事柄も、悪い事柄も、
集中したことのみ上達する”
「今日の返信は3時間でできたなぁ。。」
「今日は2時間半。。。」
返信をすることに集中すれば、どんどん早くなっていく。
効率がどんどん上がっていく。
効率が上がれば上がるほど
世界の渦巻きに吸い込まれていく。
90通が100通へ、
150通が200通へ。。
「おぉ。今日は204通。 ラッキー日か?!」
返信をすれば、また返信が戻ってくる。
社会はそんな僕を“仕事が出来る奴”と言っていたし、
自分でも“仕事量”をこなす奴が
“仕事が出来る人”と思っていたような気がするんだぁ。
「一日の間にどれくらいの仕事を積み込めるか?」
自分は“積み込みゲーム”のプロだった。
会議、電話、電子メール。
沢山の会議をこなし、電話を左腕から話さないようにして、
世界中のクライアントからのメールを全てタイムリーに返信する。。。
全てが消化したと思えば、
おまけは、食後のデザート(テキスト・メッセージ)。
どんなに効率を上げても、
世界のニーズは収まるばかりか膨れ上がってくる。
【印刷会社社長との会話】
ある日、
ハリウッドのクライアントと最終ブランディング・パッケージを印刷工場現場までチェックに行ったんだぁ。
決して環境には良くないシンナー臭い工場で
締め切りの確認の会話をしていたころ、
当時社長であったJさんと“効率”と“締め切り”の話で盛り上がったんだぁ。
「Dさんのパッケージは先週の金曜日にいただいたので
お届け日は2週間後の木曜日になります。」
「。。。でも、印刷は一週間でできるって言ってたよねぇ。。」
彼の話では受け取り日は週一回、木曜日収集。
木曜日以降、(金・土日)は次の週の木曜日から一週間という計算になる。
「そんなんじゃ、ものすごく効率が悪くない?」という自分の質問に、
「いやいや、Dさん、実は効率は良いばかりか、、効果が400%あがりましたよ。笑」
「。。。。。」
レスポンスが悪いばかりか、心理的に感じる時間が倍以上に思えるビジネス戦略。
なぜ、効果が400%に? そんなのあり得ないじゃない?
「でも、確かに、僕もリサーチをして、友人の推薦などを考慮した結果、この場所を選んでいる。。。」
「もう少し、詳しく教えてよ。。」
その後、クライアントも巻き込み印刷会社オーナーをディナーをすることに。。
彼の話を聞いてみると納得できる。
彼は“プリントすること”が仕事である。
彼が携わるプリントはロスの中でも一流で、
クオリティー=“彼”となっている。
宣伝もろくにしない彼だけど、業界の中では知ってい人が知る人。
「そりゃぁ、沢山電話がなりましたよ。。 腕が上がれば上がるほど。。」
「印刷のレイアウトをチェックしている時に電話がなり、他のオーダーを確認して。。。」
「色合わせをしている時にまた他のオーダーがレイアウトチェクの時間だったり。。」
印刷といっても、沢山のプロセスがあり、一つ一つ、ステップを組んで1から10まで順番に作業をする。
仕事が増えるにつれ、通常朝レイアウトチェックをしていたオーダーにズレが生じて、
夜にまわす事にする。
一つズレると全てに影響がでる。。
社会はそんな“ズレ”など気にすることなく、
朝、昼、夜と新しいオーダーが入る。
一つのオーダーをこなすのに1日で出来た事が、
5つのつのオーダーをこなすのに2週間かかってしまったという。
しかも、彼は当時より倍以上の仕事量をこなしていたというのに。。
三ヶ月後、大きな問題が発生する。
典型的な“ケアレス・ミス”だ。
オーダーAの作業1をこなす間にオーダーBの作業8を同時に進行し、
作業8が終わるころにはオーダーCの作業4を始める。
しかし、
オーダーCの作業4はオーダーAの作業2を得意とするAさんの仕事なので、
5分前に注文を受けたオーダーWの作業1を始めることにする。。。。
「これじゃ、間違いが起きるのは当然だよねぇ。。」
「しかも、もっと忙しくなってくる。。。」
【バッチングの誕生。】
この“ケアレス・ミステイク”(Careless Mistake)は1つではなく、2つ、3つ。
同じ間違いを社員が続けて起こす事になるのだが。。。
みんなも経験ないかなぁ?
一つの事をしている間に、他の仕事が入ってきて。。
ボスに不平を言うと、
「マルチ・タスクができなくてどうする!」
そうなんだよねぇ。
世間では、数多くの仕事を同時にこなし、
仕事をテキパキして行動する人ほど、
“頭が良く、仕事ができる。。”
「◯◯仕事術」なんて本も沢山見かけるぐらい。。。
「。。。。。やっぱり才能が。。。」
「これが“僕ができる精一杯の実力”。。。。」
開き直った社長Jさん。
もう一度、印刷作業に大切なプロセスを一から書いて従業員に伝える。
「今日から我々は変わる。」
「僕たちは印刷のプロであり、常に自分が出来るベストを尽くしてほしい。」
「世の中が僕たちに求めていることは、最高の印刷技術であり、(パッケージングも含む)、クオリティーの高い成果品を届けることだ。」
J社長は続ける。
「どんなに多くの仕事を受注しても
成果品に傷がついていては、みんなの努力が全て台無しになってしまう。。」
「今日から僕たちが世の中にクオリティーにかかる時間を教えてあげよう!」
周りにいる社員はそのスピーチがどのようなことだったのか
何も気づいていないようだったそうだ。。
「つまり、今日から、僕たちが世界をコントロールする。。。
世の中のスピードに合わせる必要はない」
っというと昨夜書いたメモを机の真ん中に広げ、
ゲームプランを説明した。。
1 オーダーは24/7で、いつでも受注してください。
2 しかし、ファイルの受け取り日は木曜日のみ。
3 そして最初のステップ、(作業1)は必ず月曜日に行うこと。
4 一番大切な印刷作業(機械にかける事)は木曜日から土曜日まで。
5 例外は基本的に認めない。。
「それでは、お客様が火曜日に来た場合、仕事を開始するためには翌週の月曜日からという事になりますが。。」
「その通りだ。」
「そんな事をすれば、お客様に怒られますし、
誰もオーダーなんてしてくれなくなります!」
マーケティング部にとっては納得がいかない内容だったらしい。
社長Jはニコっと微笑みながらこういったんだって。
「逃げられるお客はいつでも逃がしてあげなさい。。」
「今までは、お客さんのスケジュールで私たちの仕事をまわそうとしてきたよねぇ。 だから 一番精密な印刷機だって月曜から日曜までずっと回りっぱなし。。。」
「火曜日に突然必要になったと思えば、
突然発注がキャンセルして、土曜日まで使わないとか。。。」
「先週は水曜日からずっと回りっぱなしだ。。 メンテをする時間すらない。。」
「でも実際に印刷した量を見てみると、成果品は一日24時間まわし続ければ一週間分の印刷量をこなすことができる。。。」
「つまり、2日で2週間分の印刷成果品をプリントすることができるんだよ。」
「仕事に必要な作業を分割し究極まで貯めてから、必要なエネルギーを計量し、実行する。。」
「これを “Batch Process”というんだ。」
※Batching Process(バッチ・プロセス)
Executing a series of noninteractive jobs all at one time
様々な作業を非相互作用的に集中して行い、一度で終了する仕事過程
つづく。
See ya
:D
そんな会話から始まったランチ。
古典・水墨画のような景色が見えるレストランで
優雅なランチを経験できるのに、彼の携帯は次々となり続ける。
「今日はちょっと携帯お休みしてみれば?。」
「おっと。そうだったねぇ。 Dは携帯否定型だったか。。」
「いやいやぁ。そんなことはないよ。ただ使い方は個人個人だからねぇ。。」
【2005年 ロサンジェルス 夏】
朝起きると直ぐにメールチェック。
綺麗な「メールチェック中」のロゴが表示されたと思うと
着信98通。
「。。。。」
早朝から一通一通丁寧に返信する。
午前中、精一杯使って返信したメールは
ランチを食べ終わった頃には返信メールの嵐。
「毎日トレーニングすれば。。」
メール返信内容も効率よくなってくる。
“Good Morning“の挨拶もないまま、
ポイントだけを返信。。
「僕は社長だからいいかぁ。。」
“良い事柄も、悪い事柄も、
集中したことのみ上達する”
「今日の返信は3時間でできたなぁ。。」
「今日は2時間半。。。」
返信をすることに集中すれば、どんどん早くなっていく。
効率がどんどん上がっていく。
効率が上がれば上がるほど
世界の渦巻きに吸い込まれていく。
90通が100通へ、
150通が200通へ。。
「おぉ。今日は204通。 ラッキー日か?!」
返信をすれば、また返信が戻ってくる。
社会はそんな僕を“仕事が出来る奴”と言っていたし、
自分でも“仕事量”をこなす奴が
“仕事が出来る人”と思っていたような気がするんだぁ。
「一日の間にどれくらいの仕事を積み込めるか?」
自分は“積み込みゲーム”のプロだった。
会議、電話、電子メール。
沢山の会議をこなし、電話を左腕から話さないようにして、
世界中のクライアントからのメールを全てタイムリーに返信する。。。
全てが消化したと思えば、
おまけは、食後のデザート(テキスト・メッセージ)。
どんなに効率を上げても、
世界のニーズは収まるばかりか膨れ上がってくる。
【印刷会社社長との会話】
ある日、
ハリウッドのクライアントと最終ブランディング・パッケージを印刷工場現場までチェックに行ったんだぁ。
決して環境には良くないシンナー臭い工場で
締め切りの確認の会話をしていたころ、
当時社長であったJさんと“効率”と“締め切り”の話で盛り上がったんだぁ。
「Dさんのパッケージは先週の金曜日にいただいたので
お届け日は2週間後の木曜日になります。」
「。。。でも、印刷は一週間でできるって言ってたよねぇ。。」
彼の話では受け取り日は週一回、木曜日収集。
木曜日以降、(金・土日)は次の週の木曜日から一週間という計算になる。
「そんなんじゃ、ものすごく効率が悪くない?」という自分の質問に、
「いやいや、Dさん、実は効率は良いばかりか、、効果が400%あがりましたよ。笑」
「。。。。。」
レスポンスが悪いばかりか、心理的に感じる時間が倍以上に思えるビジネス戦略。
なぜ、効果が400%に? そんなのあり得ないじゃない?
「でも、確かに、僕もリサーチをして、友人の推薦などを考慮した結果、この場所を選んでいる。。。」
「もう少し、詳しく教えてよ。。」
その後、クライアントも巻き込み印刷会社オーナーをディナーをすることに。。
彼の話を聞いてみると納得できる。
彼は“プリントすること”が仕事である。
彼が携わるプリントはロスの中でも一流で、
クオリティー=“彼”となっている。
宣伝もろくにしない彼だけど、業界の中では知ってい人が知る人。
「そりゃぁ、沢山電話がなりましたよ。。 腕が上がれば上がるほど。。」
「印刷のレイアウトをチェックしている時に電話がなり、他のオーダーを確認して。。。」
「色合わせをしている時にまた他のオーダーがレイアウトチェクの時間だったり。。」
印刷といっても、沢山のプロセスがあり、一つ一つ、ステップを組んで1から10まで順番に作業をする。
仕事が増えるにつれ、通常朝レイアウトチェックをしていたオーダーにズレが生じて、
夜にまわす事にする。
一つズレると全てに影響がでる。。
社会はそんな“ズレ”など気にすることなく、
朝、昼、夜と新しいオーダーが入る。
一つのオーダーをこなすのに1日で出来た事が、
5つのつのオーダーをこなすのに2週間かかってしまったという。
しかも、彼は当時より倍以上の仕事量をこなしていたというのに。。
三ヶ月後、大きな問題が発生する。
典型的な“ケアレス・ミス”だ。
オーダーAの作業1をこなす間にオーダーBの作業8を同時に進行し、
作業8が終わるころにはオーダーCの作業4を始める。
しかし、
オーダーCの作業4はオーダーAの作業2を得意とするAさんの仕事なので、
5分前に注文を受けたオーダーWの作業1を始めることにする。。。。
「これじゃ、間違いが起きるのは当然だよねぇ。。」
「しかも、もっと忙しくなってくる。。。」
【バッチングの誕生。】
この“ケアレス・ミステイク”(Careless Mistake)は1つではなく、2つ、3つ。
同じ間違いを社員が続けて起こす事になるのだが。。。
みんなも経験ないかなぁ?
一つの事をしている間に、他の仕事が入ってきて。。
ボスに不平を言うと、
「マルチ・タスクができなくてどうする!」
そうなんだよねぇ。
世間では、数多くの仕事を同時にこなし、
仕事をテキパキして行動する人ほど、
“頭が良く、仕事ができる。。”
「◯◯仕事術」なんて本も沢山見かけるぐらい。。。
「。。。。。やっぱり才能が。。。」
「これが“僕ができる精一杯の実力”。。。。」
開き直った社長Jさん。
もう一度、印刷作業に大切なプロセスを一から書いて従業員に伝える。
「今日から我々は変わる。」
「僕たちは印刷のプロであり、常に自分が出来るベストを尽くしてほしい。」
「世の中が僕たちに求めていることは、最高の印刷技術であり、(パッケージングも含む)、クオリティーの高い成果品を届けることだ。」
J社長は続ける。
「どんなに多くの仕事を受注しても
成果品に傷がついていては、みんなの努力が全て台無しになってしまう。。」
「今日から僕たちが世の中にクオリティーにかかる時間を教えてあげよう!」
周りにいる社員はそのスピーチがどのようなことだったのか
何も気づいていないようだったそうだ。。
「つまり、今日から、僕たちが世界をコントロールする。。。
世の中のスピードに合わせる必要はない」
っというと昨夜書いたメモを机の真ん中に広げ、
ゲームプランを説明した。。
1 オーダーは24/7で、いつでも受注してください。
2 しかし、ファイルの受け取り日は木曜日のみ。
3 そして最初のステップ、(作業1)は必ず月曜日に行うこと。
4 一番大切な印刷作業(機械にかける事)は木曜日から土曜日まで。
5 例外は基本的に認めない。。
「それでは、お客様が火曜日に来た場合、仕事を開始するためには翌週の月曜日からという事になりますが。。」
「その通りだ。」
「そんな事をすれば、お客様に怒られますし、
誰もオーダーなんてしてくれなくなります!」
マーケティング部にとっては納得がいかない内容だったらしい。
社長Jはニコっと微笑みながらこういったんだって。
「逃げられるお客はいつでも逃がしてあげなさい。。」
「今までは、お客さんのスケジュールで私たちの仕事をまわそうとしてきたよねぇ。 だから 一番精密な印刷機だって月曜から日曜までずっと回りっぱなし。。。」
「火曜日に突然必要になったと思えば、
突然発注がキャンセルして、土曜日まで使わないとか。。。」
「先週は水曜日からずっと回りっぱなしだ。。 メンテをする時間すらない。。」
「でも実際に印刷した量を見てみると、成果品は一日24時間まわし続ければ一週間分の印刷量をこなすことができる。。。」
「つまり、2日で2週間分の印刷成果品をプリントすることができるんだよ。」
「仕事に必要な作業を分割し究極まで貯めてから、必要なエネルギーを計量し、実行する。。」
「これを “Batch Process”というんだ。」
※Batching Process(バッチ・プロセス)
Executing a series of noninteractive jobs all at one time
様々な作業を非相互作用的に集中して行い、一度で終了する仕事過程
つづく。
See ya
:D