気持ちは「通じる」もの | てにを舎の考具 考える日本語®

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日本語を学びなおしてみると、今まで気づかなかったルールや魅力が見えてきます。
少しだけことばに意識を向け、日本語について考えてみませんか。

私の気持ちがあの人にやっと通じた
といえば、長年思い続けていた彼(あるいは彼女)に対する自分の気持ちが伝わったことを意味します。

このときはけっして「わたしの気持ちがあの人にやっと通った」とは言いません。


また、発声練習のときなどではよく、「もっと声が通るように」という指導されていますが、
「もっと声を通じるように」とは言いません。


「通る」と「通じる」。同じような意味を持つ言葉でも微妙に異なるニュアンスがあるようです。


「通る」も「通じる」も、両方共通して持っているのが、一定の経路を移動するという意味です。


「通る」は電車が通る、犬が通った、人ひとり通らない道のように、ある方向から他の方向に動いていくようなときに使われます。また「試験に通る」のように事柄に対しても使われますが、この「通る」もやはり、受験→合格 というある方向への移動を意味が含まれています。
『日本語練習帳』の中で、大野晋氏は「通るはまっすぐに突き抜けていくこと」と表現しています。


一方、「通じる」は、東京まで道路が通じた、神社に通じた小道、意味が通じたなど、2つの場所や物事の間が経路などでつながっていることを意味しています。
大野晋氏は「通じるは…を通路としての意味で、その道は細くてもいい」と言っています。


冒頭の例文、「私の気持ちがあの人にやっと通じた」は、いろいろな紆余曲折がありながら、時には大胆に、時には控えめに、いろいろな“通路”を使った結果、たどりついた」という気持ちが含まれています。だから、「通じる」であって、まっすぐ突き抜ける「通る」ではおかしな表現に感じるわけです。


「もっと声が通るように」は、声がまっすぐに届くようにという意味が含まれるので、この場合は、「通る」を使ったほうがよいということです。