後ろから、斬撃がきた。

 毛一筋の差で躱した。

 ゆっくりと、振り向く。

「それだけ殺気を振りまいていては、奇襲は無理だな」

 静かな声で告げる。

 目線の先には、五人の侍が立っている。

 斬撃が来るとうの前から、五人の気配は察知していた。

「天註」

 真ん中の、首領格らしき男が声を荒げた。

 今のご時勢、そう叫んで奉行や公家が殺害されている。

 それだけならまだいいが、岡っ引きまで殺されている。

 岡っ引きを殺したところで、日本がどうなるものでもないだろうに。

 要は、この輩共は、血に飢えた狼なのだ。

「おぬしらの腕で、拙者が斬れるのか」

 そう言ったが、五人の腕はあまりにも未熟すぎて、相手の腕を測れないとみえる。

 五人が一斉に斬りかかれば、どんな相手でも倒せると思っているようだ。

「天註」

 もう一度首領格がそう叫ぶと、五人が一斉に斬りかかってきた。

 一瞬後、五人は地に横たわっていた。

 五人の屍には目もくれず、近藤勇は悠然と歩き去った。