「本当のことなの?」
ターニャが驚いてカレンを見る。
「やっぱり、そうなんや」
一瞬しょげ返った悟だったが、直ぐに開きなおって、ターニャの前に立ちはだかった。
「もう、なんでもええわ。聞いたやろ、俺を殺したらターニャも地獄行きや。さあ、どうすんねん」
自棄気味な口調で、悟がターニャに迫る。
たじろいだターニャが、一歩後ずさった。
「自棄にならないで。そんなものは、私と一緒に国へ帰れば取り除いてあげるから。ね、だからそれをこっちに渡して。ううん、あなたが持っていてもいいわ。私と一緒に、国へ帰りましょ」
ターニャは何とか悟を説得しようと優しい笑顔を造り、口調も優しく宥めにかかった。
「嘘よ。ヒューストン、サトルを苛めないで」
鋭い、カレンの声。
「もう、ええよ。俺を慰めてくれようとしてるのは嬉しいけどな。俺は、潔く運命を受け入れることにするわ」
悟はどこか投げやりな口調になっている。
「何、大袈裟なことを言ってるのよ。ヒューストンだってこの世界の人間よ。咄嗟に話を合わせただけに決まってるじゃない」
怒るような口調で悟に言って、カレンがヒューストンを睨んだ。
「もう少しでターニャと交渉できたかもしれんのに、そんなにサトルが大切なのか」
ヒューストンが恨めしそうな顔をして、カレンを見る。
「ええ、いくら助かるためといっても、サトルを傷つけたくないの」
ヒューストンは、カレンの瞳に殺気が宿っているのを見てとった。
「わかったよ。カレンの言う通りだ。お前の体の爆弾のことなんか、わしが知るわけもない。どういう経緯があったかしらんが、あれはターニャに信じ込ませるために咄嗟についた嘘だ」
やれやれといった顔で、ため息まじりに言う。
「おいおい、勘弁してくれよ。お前らの恋愛ごっこに付き合わされて命を落とすなんて御免だぜ」
桜井が閉口した口調で、恨めしげにカレンを見た。
「あなたも落ちたものね。サトルと出会うまでは私のライバルだと思っていたけど、こんなに軟弱になるなんてね。もう、あなたには用はないわ。この世から消えなさい」
ターニャが愛想をつかしたように言い、カレンに銃口を向けるや発砲した。
その瞬間、カレンが驚異的な速さで横に飛んだ。
標的を失った銃弾は、空しく壁にめり込むだけであった。