衝撃だった。
子供の頃から親しんできた、コロッケ屋が廃業するなんて。
数日前に訪れたときは、おおばちゃんはなにも言ってなかったのに。
今は、1個80円になっているが、子供の頃は30円で、小遣いでも買えた。
あの時から、おばちゃん一人で切り盛りしていた。
もう、幾つになるんだろう。
毎日、休むことなく店を開けているなんて、考えたら凄いことだ。
一日、何個のコロッケを揚げるんだろう。
仕込みも大変だろうな。
昔も今も、味は変わらない。
俺は、社会人となった今でも、おばちゃんのコロッケを買いにいく。
この味がなくなるのは寂しい。
俺は、決心した。
「おばちゃん、やめるんだって?」
「もう、歳だからね。腰も痛いしさ」
「俺が、この店を継ぐよ」
「なに言ってんだい。こんな店を継いだって儲かりゃしないよ。食べていくだけでやっとさ。あんたには、将来があるだろう」
「この味をなくさないようにするのが、俺の将来さ」
おばちゃんの目から、大粒の涙がこぼれた。