大地が、揺れた。

 いや、揺れているのは俺か。

 それほど、衝撃を受けた。

「そうか、おめでとう」

 それだけ絞りだすのが、やっとだった。

 笑顔を作ったつもりだが、うまく作れたかどうかはわからない。

 俺と愛美は同い年で幼馴染で、家も隣同士だ。

 小さな頃から兄弟同様に育ってきたが、そんな愛美に恋愛感情を抱いたのは、高校生になった頃だ。

 しかし、好きだとは言い出せなかった。

 それを言うには、あまりにも身近すぎたのだ。

 そして、二十半ばを迎えた今、愛美から結婚するとの報告を受けた。

 愛美に彼氏がいるなんてまったく知らななかった俺には、晴天の霹靂だった。

 もしも、高校の時に告白していればどうなっただろう。

 いや、それを考えても始まらない。

 俺としいては、愛美の幸せを祈るだけだ。

「優も、いい人が見つかるといいね」

 俺の心境など知らない愛美は、あどけない笑顔でそう言った。

「ああ、見つけるさ」

 うまく作れたかわからない笑顔で、俺はそう応えた。