白球が、高々と舞い上がる。

 これでゲームセットだと、誰もが思った。

 甲子園での決勝戦。

 点差は一点。

 ツーアウト二・三塁。

 緊迫した試合だった。

 平凡なライトフライだ。

 このフライを取れば、ゲームセットだ。

 だが、緊張感のせいか、気が緩んだのか、一度グラブに当たった玉がこぼれた。

 応援席から悲鳴があがる。

 ライトを守っていた選手は膝を折り、投手はマウンドで泣き崩れた。

 過去に、大事な場面でエラーをして負けた学校はいくらでもある。

 そして、エラーをした選手が誹謗中傷を受けて、引っ越しや転校を余儀なくされた事例もある。

 勝負において、勝敗は大事だ。

 しかし、エラーした選手をそこまで責めて追い詰めるのはいかがなものか。

 誹謗中傷する者は、当事者ではない。

 一人の人間の人生を捻じ曲げる権利は、誰にもない。

 プロなら野次を浴びてもしかたがないが、高校野球はそうではない。

 誹謗中傷するのではなく、なぜ応援してやらないのか。