「そうね。あなたも教えてくれたことだし、私も教えてあげるわ。スコット、裏切り者があなただということはわかっていたのよ」

「何だって、いつわかったんだ」

「ハイ、ハイ。教えてあげるから、そう慌てないの。最初はね、私もあなたを信じていたのよ。なんたって、実の兄だものね。だから、裏切り者はヒューストンじゃないかと思ったわけ。彼なら、私を抹殺したい理由もあることだしね。でもね、考えてみるとおかしな事に気付いたのよ」

「おかしな事?」

「だって、ヒューストンだったら、わざわざ日本に来る必要なんてないじゃない。本部にいたほうが安全でしょ。本部にいたって私の居所は掴めてるわけだし、赤い金貨とも連絡を取る方法はあるはずよね。ヒューストンとしては、あまりにリスクが高すぎると思ったわけ。それでね、私の隠れ家を教えるとき、あなたとヒューストンに別々の隠れ家を伝えたの」

「別々の?」

「そうよ。隠れ家が一つだと思い込んだのはあなたの勝手だけどね、私が、そんなに甘いわけないじゃない」

 スコットの悔しそうな顔を見やりながら、カレンが続ける。

「そうしたら、あなたに教えた隠れ家だけをカンパニーの奴らが襲ってきたでしょ。 これで、裏切り者があなただってことがはっきりしたわけよ」

「そんなことで、私が裏切ったと判断したのか。私は、ヒューストンの部下だ。ヒューストンに報告するのは当たり前だろう。ヒューストンがやらせたとは思わなかったのか」

 カレンが、憐れむような目でスコットを見た。

「あなたって、自分で頭がいいと言っときながら、本当はここが足りないんじゃない」

 言いながら、スコットの頭を銃口で小突いた。

 スコットは屈辱を露わにして全身を震るわせた。

「お前は、私自らの手で殺しておくべきだった」

 凄まじい目つきでカレンを睨みながら、低い声で絞り出すように言った。

 そんなスコットを無視して、カレンは先を続けた。

「いい、頭がいいと自負しているあなたに教えてあげるけど、もしヒューストンが裏切り者だったら、ヒューストンに教えた隠れ家だけか、両方の隠れ家が襲撃されていたはずよ。それが、あなたに教えた隠れ家だけが襲われたんだもの。誰が裏切者なのか、馬鹿でもわかるわよね」

 カレンの言葉は辛辣で容赦がない。

 それだけ、スコットに裏切られたことに腹を立てているのだろう。

 だが、悔しそうに顔をしかめるスコットを見つめるカレンの表情は、満足気な様子は微塵もなかった。

 それどころか、どこか悲しそうだ。