「驚いたか? まあ、驚くのも無理はなかろう。しかしな、情報官だけではちと弱いんでな、実行部隊の頭にオガタを据えようってわけだ。これで、内調も我々の意のままとなる」

「こんな奴に、桜井さんの後釜が務まるわけがないやろ。桜井さんも舐められたもんやで」

 驚きから醒めた悟が、吐き捨てるように返した。

 自分の置かれた状況を、まるで意に介していないようだ。

「何だと、この野郎」

 今にも悟を撃ちそうになった緒方を、スコットが手で制した。

「この状況で、よくそんなことが言えたもんだな。さすが、カレンが見込んだ男だと褒めてやろう。しかし、お前がそんなことを心配する必要はない。そろそろいいだろう、せめてもの情けだ。お前は、カレンの銃であの世に送ってやる」

 そう言って、スコットがカレンの銃を拾いあげ、緒方に渡した。

 それを受け取った緒方は、残忍な笑みを浮かべて銃口を悟に向けた。

「へへ、このときを待ってたせ」

「相撃ちに見せかけようって魂胆か」

 緒方に銃口を向けられても、悟は動じることなく、スコットに鋭い視線を浴びせている。

「そうだ。お前はカレンを裏切り、いきなりカレンを撃った。カレンは撃たれながらも反撃した。誰も疑うまいよ。ま、あの世で仲良く喧嘩でもするがいい」

「お前には全弾ぶち込んでも足りないが、そういったわけで、一発で勘弁してやるよ」

 今にも引鉄を引こうとする緒方を、悟が広げた掌を突き出して制した。

 自分の命が風前の灯だというのに、妙に落ち着いている。

「最後に、もう一つだけ聞かせてくれへんか。爆弾はどこにあんねん」

 態度と同様、声も落ち着いていた。

 緒方は、悟の質問など無視して引金を引こうとした。

 その腕を、すんでのところでスコットが押さえた。

「それを聞いてどうする?」

 絶体絶命の状況に置かれているというのに、命乞いよりも質問をする悟に興味を覚えたのだ。

「ほんまに、カプセル型の爆弾なんてあるんかと思ってな。あんたはあると言ったけど、現物を拝まんことには信用できへん。それがわからんと、死んでも死にきれへんわ」

「呆れた男だな」

 言いながらスコットが、ジャケットの左ポケットから小さなビニール袋を取り出した。

「これさ」

 言った瞬間、銃声が轟いた。