「まあ、いい。オコーナーにはヒューストンの命令だと言って、、暫く身を隠すように指示したのさ」

「それで、カレンが動くように仕向けたんやな。そして、カレンを騙してヒューストンを始末させ、ヒューストンの後釜に座ろうってつもりやったんか。その立場を利用して、赤い金貨でも重要なポストに就こうと、そういうことか。ロシアに情報を流したのもあんたか?」

「その通り。ただ、ロシアには情報は流していない。ターニャが出てきたのは誤算だったがな。どうだ、いい考えだろう。もっとも、途中から気が変わって、お前に始末させることにした。その方が、数段楽しめるからな」

 悟はそれには何も言い返さず、「オコーナーはどこや?」と尋ねた。

「カプセル爆弾の威力を試すために、山林の養分になってもらった。こいつが、その役をやってくれたよ」

 スコットが、緒方を顎でしゃくってみせた。

「あんた、俺のことを売国奴や言うてたな。自分はどうなんや。恥ずかしくないんか」

 悟が緒方を横目で見ながら、軽蔑を含んだ口調で言った。

「金でカレンを裏切ったお前に偉そうに言われたくはないが、まあいい、どうせ直ぐにあの世に送ってやるんだ。教えてやろう、あんなものは、桜井を信用させるために言ったことだ。どうだ、なかなかの演技だったろう」

 緒方は悪びれもせず、平然と言い放って、またもや下卑た笑い声をたてた。

「俺はな、安月給で命の危険と隣合わせのこの仕事に、いい加減うんざりしてたんだ」

「桜井さんが聞いたら、泣くやろな」

「フン、桜井なんて、愛国心に凝り固まった、時代遅れの堅物じゃねえか。自分一人が国を守っている気になりやがって。俺から言わせりゃ、国家の忠犬に過ぎないくせによ。いいか、人生ってのはな、楽しむためにあるんだ。そのために必要なのは金だ。この仕事が終わったら、俺の懐にはたんまり報酬が転がり込むことになっている。その金で、暫く遊んで暮らしてやるぜ」

 緒方が吠えた。

「それで、あんたも赤い金貨に入ったんか?」

「まだ入っちゃいないが、そのつもりだ」

「そう、うまくいくかな? あんたも、俺みたいに消されるんとちゃうか」

「お前と違って、俺は役に立つんだよ」

 緒方が鼻で笑い、自信ありげに言った。

「そうだ。こいつには、まだ遣い道がある。お前たちのあとで、サクライも始末するつもりだ。オガタには、その後釜に納まってもらう」

「それで、内調も操ろうってか」

「何も、オガタが操る必要はない。トップが我々の仲間なんだからな」

「なんやって」

 驚きのあまり、悟はそれ以上言葉が出なかった。