まさか、こんなことが本当にあるなんて。

 突然の、激しい雨。

 近くにあった、閉まった店の軒先に避難して雨宿り。

 俺が駆け込んだすぐ後に、一人の女性が駆け込んでくる。

 俺と同年代か、少し年上か。

 とても色っぽく、大人の女性という感じだ。

 白いブラウスに、紺のタイトスカート。長い、濡れた髪。

「よかったら、どうぞ」

 俺は、鞄から包装されたタオルを取り出し、女性に差し出した。

「あ、これ、得意先に暑中見舞いとして配っているタオルなんで清潔です。よかったら、何枚もありまよ」

 女性がにっこりと微笑み、礼を言ってタオルを受け取った。

 それから、お互いの仕事のことを話し出した。

 彼女は、とても聡明で、活発で、素敵な女性だ。

 雨がやんだ。

 俺はもっと話したかったが、迷惑になるといけないと思い「じゃ」と言って、小走りにその場を去った。

 翌日、彼女が会社に尋ねてきた。

 タオルの包装紙に、社名と俺の名前が書いてあったのだ。

 それから、彼女との交際が始まった。