「もう、こんなことに巻き込まれるのは、ええ加減うんざりなんや。カレンと一緒にいる限り、ずっとこんなことが続くやろ。それに、スコットはカレンを裏切ったら一億円くれるっていうし」

「そんな、本気で言ってるの? サトルがお金で私を裏切るなんて、そんなわけないわよね」

 悟に微笑みかけたが、ショックのあまりうまく笑みを作ることができず、カレンの顔は引き攣り、声もうわずっていた。

 悟はそれには答えない。

 ただ、苦渋に満ちた顔をしているだけだ。

 スコットはそんな二人の様子を、さも楽しそうに眺めている。

「信じたくない気持ちはわかるがな、所詮、人間とはこういうものなんだ。この世界で生きてきたお前には、痛いほどよくわかっているはずだろう」

 スコットがうすら笑いを顔に張り付けたまま、哀れむような目をカレンに向けた。

 そして、小馬鹿にした口調で続ける。

「我々の世界ではな、人を信じるなんてことはしちゃいかんのだ。信じられるのは、自分と金だけさ。人を信じるなんて馬鹿なことをした奴は、早死にする運命にあるんだ」

 カレンは何も答えない。

 ただじっと、自分に向けられた銃口に目を向けている。

「せめてもの慰めに、お前が唯一人愛した男の手であの世に送ってやろう。サトル」

 スコットが左手を上げた。

 その瞬間、悟の銃が火を吹いた。

 悟は、しっかりと目を開けてカレンを狙い撃った。

 轟音と共に、カレンが腹を押さえて蹲った。

 押さえた指の隙間から、血が滴り落ちてきた。

「あ~あ、素人はこれだからな。一番狙い易いとこなんだが、腹を撃たれると、すぐには死ねないんだよな」

 苦しそうに蹲るカレンを冷ややかな目で見下しながら、スコットがさも楽しげな口調で言う。

 しゃがみ込んでカレンの髪を掴み、カレンの顔を自分に向ける。

「しかし、苦しみながら死んでゆくのが、お前にはお似合いだ」

 楽しげな声から、一転して憎しみの口調に変わった。

 もう、スコットを睨むだけの気力が残っていないのか、カレンは虚ろな目をして喘いでいるだけだ。