「その前に、銃を捨てて両手を上げろ。お前の可愛い旦那が殺されたくなければな。わかっていると思うが、そっとだぞ。少しでもおかしな真似をしたら、お前の愛しいサトルは、即座にあの世行きだ」

 スコットの言葉とともに、緒方の銃口が悟の頭に強く押し当てられる。

 緒方は、悟を撃ちたくてうずうずしているようだ。

 カレンはスコットから目を離さずに、ゆっくりとした動作で腰から銃を引き抜き、そっとしゃがんで銃を床に置いた。

 銃を置くと、静かに立ち上がり両手を上げた。

「いい子だ」

 スコットが満足気に頷く。

「どういうことか、説明してくれる」

 カレンが静かな声で、もう一度促した。

「説明してやりたいのは山々だが、このままお前と話していると、どういう反撃をしてくるかわからんからな。悪いが、直ぐにあの世へ行ってもらうことにするよ」

 スコットが、手にしていた銃をカレンに向けた。

「その前に、もう一つだけ面白いものを見せてやろう」

 そう言うと、悟に顎をしゃくった。

 悟は頷くと、机の下に入れていた手を出した。

 その手には銃が握られている。

 その銃口が、ゆっくりとカレンに向けられた。

「サトル、あなた…」

 カレンが絶句した。

 カレンの目は、驚きのあまり見開かれている。

「これは、一体、どういうことなの」

 カレンが困ったような顔をして、スコットを見た。

「見ての通りさ。サトルは、お前を裏切ったんだよ」

スコットが、さも楽しそうに笑う。

「うそ! サトルが私を裏切るなんて、そんなことあるわけないじゃない」

 カレンは悲鳴に近い声を上げ、駄々っ子のように激しく首を振った。

「ねえ、冗談なんでしょ。サトル、悪い冗談はやめてよ」

 縋るような目で悟を見る。

「ごめんな、カレン」

 精一杯の誠意か、悟はカレンの視線を申し訳なさそうに受け止めた。

「どうして?」

 カレンの声が震えている。