「俺さ、ネットのセールでこれ買ったんだ」

「お、いいもん持ってんじゃん」

「だろ、これで千円だぜ。しかも、送料込みでよ」

「まったく、おかしな世の中だな」

「なんで?」

「普通はよ、送料だけでもそれくらいかかるぜ、なのに、千円のものを届けるのに送料無料なんてあり得ないだろ」

「いいだろ、安ければ」

「おまえね、そう言うけど、運送屋さんはな、トラックの代金や、整備代や、ガソリン代、それに人件費でいくらかかると思う? それなのに、大手の通販会社は売って利益を上げるために、送料無料なんて謳って運送屋に無理を強いているんだぞ」

「森下よ、おまえの言うことくらい、俺にもわかってるよ。だけどな、どれだけ運送屋が泣こうが、俺には関係のないことさ。俺は、安ければそれでいいのさ」

「岩田よ、おまえみたいな奴が大勢いるから、いつまで経っても不景気から脱却できないんだぞ。今に、手痛いしっぺ返しが来るぞ」

 森下の言うことは、当たっていた。

 あまりにも、大手の通販会社が運送業者に無理を強いたため、多くの運送会社が倒産する憂き目にあい、そうでなくても運転手のなりてが激減した。

 それがため、物流は滞り、これまでみたいに翌日配達なんて到底不可能で、送料も著しく上がっり、自分さえよければいいという人間に跳ね返ってきたのだ。