「近頃の若いもんは」

 大森部長の口癖だ。

 なにかある度に、その言葉を口にする。

 酔えば、若い社員にこんこんと説教する。

 でも、大森部長には、自分の意見がない。

 社長の言いなりで、社長の顔色ばかり窺っている。

 そんな大森部長が、「近頃の若いもんは」というのは滑稽だ。

 部長の言う、近頃の若者は自分を大切にする。

 上司の顔色を窺うなんてご免だし、仕事に関係がない。

 残業するから優秀な社員と思っているのもナンセンスだ。

 少なくとも、俺はそう思う。

 部長は、未だに飲みニケーションが大切だと言う。

 なんで、自分の時間を削ってまで、しかも行きたくないのに金まで払って、そんな付き合いをしなくてはならない?

 まったく、馬鹿げた考えだ。

 会社なんて、給料に見合った働きをすればいいだろう。

 そう思うのだが、それじゃ駄目らしい。

 あったく、昭和の人間って困ったもんだ。

 今の時代、終身雇用の保証なんてないのにな。

 だから、日本経済は浮上できないんだよ。