君たちはどう生きるのか
著:吉野源三郎
発行所:岩波書店
読み継がれるロングセラー。140万部。1937年に出版された後に、日中事変となり、日中の戦争が。自由な執筆が困難になっている時に、山本先生は、少年少女に訴える余地はまだ残っているし、せめてこの人々だけは、時勢の悪い影響から守りたい!と思い立った。という。深い一冊。大切なことを、改めて大切なのだ!と様々な角度から伝えてくれる。
概略
●コペル君は何かの大きな渦の中に、ただよっているような気持ちだった。「人間って、水野分子みたいなものだねえ。」叔父さん「そう。世の中を海や河にたとえれば、一人一人の人間は、たしかに、その分子だろうね。」
●とにかく、人間は自分を中心としてものを見たり、考えたりしたがる性質というものは、これほどまでに根深く、頑固なものなのだ。子どものうちは、どんな人でも、地動説ではなく、天動説のような考え方をしている。
●昔から深い智慧のこもった言葉を残しておいてくれた。だから、君もこれから、だんだんにそういう書物を読み、立派な人々の思想を学んでいかなければいけない。しかし、最後の鍵は、コペル君、やっぱり君なのだ。君自身が生きて見て、そこで感じた様々な思いをもとにして、はじめて、そういう偉い人たちの言葉の信実も理解することが出来る。ただ、書物を読んで、それを知るというわけには決していかない。
●だから、肝心なことは、いつでも自分が本当に感じたことや真実心を動かされたことから出発して、その意味を考えてゆくことだと思う。君が心の底から思ったりしたことを、少しも誤魔化してはいけない。そして、どういう場合に、どういう事について、どんな感じを受けたか、それをよく考えて見る。そうすると、ある時、ある所で、君がある感動を受けたという、繰り返すことのない、ただ一度の経験の中に、その時だけにとどまらない意味のあることが分かる。
●肝心なことは、世間の眼よりも何よりも、君自身がまず、人間の立派さがどこにあるか、それを本当の君の魂で知ることだ。そして、心底から立派な人間になりたいという気持ちを起こすことだ。
●ニュートンの林檎の話。林檎の落ちるのを見て、万有引力を思いついた。だが、林檎が落ちたことから、どうしてそんなことを考えついたのか。君たちは知っている?
●ニュートンが偉かったのは、ただ重力と引力とが同じものじゃないかと考えてついたというだけじゃあない。その思いつきからはじまって、非常な苦心と努力によって、実際にそれを確かめたというところにあるんだ。
●●ニュートンの場合、三、四メートルの高さから落ちた林檎を頭の中でどこまでも、どこまでも高く持ち上げていったら、あるところに来て、ドカンと大きな考えにぶつかったんじゃないかな。だからね、コペル君、あたりまえのことというのが曲者なんだよ。分かりきったことのように考え、それで通っていることを、どこまでも追いかけて考えてゆくと、もう分かりきったことだなんて、言っていられないようなことにぶつかるんだね。
●偉大なことを発見したかったら、いまの君は、何よりもまず、もりもり勉強して、今日の学問の頂上にのぼり切ってしまう必要がある。そして、その頂上で仕事をするんだ。
●君は毎日の生活に必要な品物ということから考えると、確かに消費ばかりしていて、何一つ生産していない。しかし、自分では気付かないうちに、他の点である大きなものを、日々生み出しているのだ。それは、いったいなんだろう。
※ナポレオンは、最初は三人の執政官の中の一人となり、次いで終身の執政官となり、とうとうフランスの共和制をやめて、自ら皇帝の位にのぼってしまった。35歳だった。だから、わずか10年の間に、かえり見る人もなかった貧乏将校の境遇から皇帝の位までひと息に駆け上ってしまった。
●人間の行いというものが、一度してしまったら、二度と取り消せないものだということをつくづく知って、ほんとうに恐ろしいことだと思った。自分のしたことは、誰が知らなくとも、自分が知っていますし、たとえ自分が忘れてしまったとしても、してしまった以上、もう決して動かすことは出来ない。
●その事だけを考えれば、そりゃあ取り返しがつかないけれど、その後悔のおかけで、人間として肝心なことを、心にしみとおるようにして知れば、その経験は無駄じゃあない。それから後の生活が、そのおかげで、前よりもずっとしっかりした、深みのあるものになる。
●心に感じる苦しみやつらさは人間が人間として正常な状態にいないことから生じて、そのことを僕たちに知らせてくれるものだ。そして、僕たちは、その苦痛のおかげで、人間が本来どういうものであるべきかということを、しっかりと心に捕らえることが出来る。
※仏像というものは、仏教思想だけから生まれて来たのではない。また、ギリシャ彫刻の技術だけで、作り出されたのでもない。両方が結び付いて、はじめて生まれて来たものなんだ。学問や芸術に国境はない。


