鈴木清写真展に行ってきました
ここのところ写真から離れていたのと、
いままでめったにお目見えしなかった作家の写真展ということもあり、
久しぶりにどきどきして写真展の会場に向かいました。
鈴木清さんの写真集の発表された順番にそのうちの何点かずつと、
最後の方にはその中の一部写真集のダミーや、
以前に行われた写真展のレイアウト案などが展示されていました。
大変特徴的だったのは、
会場中央に歴代の写真集が置いてあり、そこには白手袋が・・・。
お客さんはおもむろにその白手袋をはめて写真集に見入るのでした。
あんなに展覧会で本を見ている人が多いところを、
わたしは見たことがありません。
これは、出された写真集のほとんどが数量限定の自費出版だった、
という鈴木さんの活動を大変象徴的に物語っています。
作品自体もとてもすばらしく、
私の脳みそは、あっちに飛ばされ、こっちに行き、
過去に引きずりこまれたり、現実に引き戻されたりと、
とても長い間旅に出てきたような気分になりました。
闇から浮かび上がり、照らされた光は、
氏が物をとらえる一つの基準をうかがわせています。
たとえピントが合っていなくても、
対象がぶれていてちゃんと見えていなくても、
そこにはちゃんと存在が写っている。
「この日常の世界もエピローグのないサーカス---
街の上の舞台に仮装し、演じ、くり広げられる一人ひとりの生のスペクタクル」
----写真集「天幕の街」の採用されなかった表紙コピー
優れた作家の作品を見ていつも思うのですが、
その作品の中には、必ずといっていいほど、
写っている見かけの対象とは別の
「得体の知れないなにものか」
が写りこんでしまっているような気がします。
その時の自分の状態によってそれが反応するんですね。
久しぶりにとてもいい時間を過ごせました。
ちなみに、日本に先立ってオランダ、ドイツでこの企画があり、
結構な反響だったようです。
身近なところに、意外と大事なコトが潜んでいるのに、
案外見落としてしまうものなのでしょう。
「身の回りのコト」
を、もっと感じ取っていきたいものです。