泡姫日記~風俗嬢の戯言~in Ameblo -27ページ目

お仕事は、ゲーム?

客をあたしに夢中にすることに、あたしは夢中だった。

相反するけれど、

目の前の見ず知らずの男に夢中になることにあたしは夢中だった。

落ちない客ほど面白い。つかめない客ほど面白い。

ある意味ゲーム。

あたしったらもうそんなゲームに無我夢中。


人の好みっていろいろあるから、外見で客のストライクゾーンに

入ることが出来なければ、とにかく客の求めるものを模索するわけだ。


甘えてみて反応の悪い客には、凛とした姿勢で向き直る。

気取ってみて引く客には、気さくに話しかけてゆく。

ソープにロマンを求める客(たまにいる)には、

寒い笑いは隠しつつ、

ワイングラスを手にロマンティックを演出する。

長嶋さんフリーク(ひとりいた)には、全く知らない野球の話に

退屈さなんてみせずに、興味津々な反応をしてあげる。

どうしてもつかめない客には、いろんな引き出しを引っ張り出して、

とにかく、相手を知る努力をする。


相手を知ろうと試行錯誤してゆくうちに、

ついにM男くんであることに行き着いたり、

ついさっきまで、いかつい顔をしていた会社社長が、

「あたしももちゃん。一緒に下着買いにいこ」

なんて言い出したことすらあった。帰り際に

「こんなところで本当の自分出すこと出来るなんて思わなかった」

なんて言われて、最高点でゲームクリアしたあたしは、

有頂天になったりしたもんだ。


たった2時間で手ごたえを掴むことは難しい。

けれど、難しければ難しいほど、クリアしたくて仕方ない。

あたしのお仕事は、対人リアルゲーム?

あたしは女優。

そう恵まれてもいないこの体を駆使して、

それぞれの客のそれぞれに持つ理想の時間・理想の女を、

あたしは演じる訳である。


笑っちゃうほど純潔で上品なあたし。

猫なで声で寄りかかるとぼけたあたし。

挑発的な視線で腰を揺らすあたし。

ありもしない母性もどきで客を包み込んじゃうあたし。

ただただ淫乱なだけのおつむの弱いあたし。

聡明そうだ。なんて言われちゃう知ったかぶりのあたし。


その時々の客の欲求を満たすため、様々な女を徹底的に演じる。

どれもがあたしのようで、どれもあたしじゃない。

すべての客の要望を、素のあたしで受け止め受け入れていたら、

あたしの神経はあっという間に散っている。

どれもあたしじゃない。

決して悟られることなく、演じ続けている誰かを、

あたしは知らない。

そうして時に混乱して、あたしは自分を失ってしまう。

逃げ出した飼い犬を探すように、本当の自分を探すあたし。

女優でないあたし。

どこ?

いつかセレブに。

――いつになったらセレブな生活を送れるのかしら。

りょうこがずっと考えてきたことだ。


風俗で働くことに限界を感じ始めたのは32歳を目前とした頃だ。

目も当てられないくらいすっかり落ちぶれて、

店に必要とされなくなってから、仕方なく引退・・・

そんな無様な引き際は演じたくなかった。

一回りも年が違うのではないかと疑いたくなるような新人が次々と入店してくる。

まだ常連客もいて、指名の数もそこそこ取れている内に、惜しまれながら辞めていきたい。

そんな幻想を抱いて店に辞めることを伝えたら、あっさり受け入れられて、底なしに落ち込んだ。

底を確認するまもなく生活費の方が底をつき、年をごまかして潜り込んだラウンジで、今の夫を見つけた。

決して、妥協したわけではない。打算はあった。

製薬会社の営業で、店ではいつも医者の接待だったけれど、同伴しても金回りは悪くない。

探りを入れたら収入だって申し分なかった。

――潮時。

それがりょうこの出した答えだ。

りょうこの思い描いていた’セレブ’とは違うけれど、’安定・安泰’そんなものは手に入る気がした。

34歳になる春、りょうこは花嫁になった。


――いつになったらセレブな生活を送れるのかしら。

りょうこは今も考えて続けている。


夫には借金があった。

前の女と別れる時に持ち出された預金通帳から預金は全額引き落とされ、

カード類は限度額いっぱい使用されていた。


――いつかセレブな生活を送れるはずだわ。

りょうこは今も信じている。

熱い湯でローションを溶かしながら、

見知らぬ男の精液をかき出しながら、

50%オフの牛肉を買い物カゴに入れながら、

りょうこは今も信じている。


【この物語はフィクションです】

ひとりエッチ。

ひとりエッチとはなんぞよ。

指や道具を使って自分で自分を快感に導くこと(我が脳内辞書)。

女子でひとりエッチをしている割合はいかほどか。

1割か、2割か。

わたくし的には、「まぁ7割は固いな」と決めてかかっている。

飲み屋で「あたししたことな~い」なんてブリブリしながら言われると、

疑念を抱きたくなる、毎度。

「あたしするけど、普通に」

なんて言うと、

「エー」

なんて、ひかれちゃう。

「なんか汚いんだもん」

-ちゃんと洗ってないのか?

「馬鹿みたいじゃない?」

-気持ちよいじゃない?

「虚しくない?」

-ほっとけ。


それはさておき、あたしにはひとりエッチを始めた頃の記憶が

全くない。

「ちょっと罪悪感を覚えながら親に隠れて大事な部分に手を伸ばす」

というような、思春期にありがちな思い出がない。

つまり物心ついた頃にはしていたのだ。

日常生活で普通にこなす、お風呂や歯磨きと同じレベルにあった。

(赤ん坊の頃に実父があたしのお豆ちゃんを可愛がっていたという、

ありがちなようで、あまり明かされない事実については、

またいつか書いちゃうのだろうけど)


セックスでいくら可愛がってもらっても、

1日5人の男と対戦しちゃっても、

欲求が収まってくれなければ、自分で処理するしかないでしょ。

あたしの手より上手な男ってのも、極極まれだしさ。

ご病気のようで。

以前、一目見て「はい、ご病気!」と断言出来る持ち物ご持参の客に遭遇した。

「どうしたの、これ?」

と聞くと、

「同系列店のヘルスで生本番させてもらったらうつった」

と、彼は説明した。そして、

「今日はその復讐に来たのだ」 とも、おっしゃられた。

なんと愚かで可哀想で、バカな男だろう。

あたしは誰も知らないけれど、とても親切だ。

「これ性器ヘルペスね、おやまぁ、尖圭コンジローマかもね、おしっこすると痛いの?

尿道に雑菌も入ってるかしら、クラミジアかもね、 早く病院行って薬もらってね、

ウイルス感染してるから治っても潜伏しちゃうわね」

と丁寧に教えてあげて、近辺で評判のいい泌尿器科まで教えてあげた。


ソープランドの頃は表向き、「性病検査を義務付けてる」としながら、

診断書の提出なんて、催促されたことはない。

あたしは自分のためにちょくちょくやってはいたけれど、昨日の検査で陰性だったとしても、

今日の直前の客によって感染してるかもしれないのだ。

風俗で楽しむにはリスクが有る。

それを理解した上で、楽しんで頂きたいものだ。


ちなみに上記のお客様、

消毒して、ゴム付けて、

手コキでしっかり抜いて差し上げましたので、ご安心を。