骨盤MRIのT2強調矢状断像を次に示す。この疾患でみられる症状はどれか。2つ選べ。

a.排尿痛 b.月経痛 c.過多月経 d.外陰部痛 e.帯下の増加

正解:b,c

 

<今回の要点>

①子宮内膜症病変が子宮筋層内に存在する病態を子宮腺筋症という

②子宮腺筋症では子宮壁が肥厚する

③子宮腺筋症は強い月経困難症の原因となる

 

これは子宮腺筋症ですね。

子宮腺筋症は子宮内膜症の一形態で、病変が子宮筋層内に存在する場合をいいます。

筋肉は、横紋筋・平滑筋・心筋の3種類がありますが、子宮筋層は平滑筋で構成されています

横紋筋は骨格筋を、平滑筋は内臓筋を構成します。

心筋は心臓の筋肉ですね。

平滑筋は↓下図のように紡錘形です。

↓実際、子宮筋層を顕微鏡で見てみると、下図のように細長い筋細胞で構成されているのが分かります。青紫の楕円形の物質は核ですね。

↓ちなみに、子宮内膜はこのように見えます。輪っかになっているのが腺組織ですね。

子宮内膜は分泌腺を多数有しているのでこのようになります。この中が分泌液で満たされるわけです。

↓ということで、子宮腺筋症はこうなります。子宮平滑筋の中に内膜腺組織が混在していますね。

 

続いて、MRIも特徴的なのでコメントしましょう。

本問のMRIのT2強調像では主に子宮後壁に点状の高信号を多数認めますが、これが子宮内膜腺です。

T2強調像で高信号を呈するのは漿液や粘液ですから、腺組織から出る分泌液を反映しているんですね。

実際、子宮内膜も同じ高信号になっているのが分かると思います。

あと、子宮の腹側で押しつぶされている膀胱内部も、尿なので高信号ですね。

では、選択肢をもう一度見てみましょう。

 

この疾患でみられる症状はどれか。2つ選べ。

a.排尿痛 b.月経痛 c.過多月経 d.外陰部痛 e.帯下の増加

 

a.排尿痛

排尿するときに痛いということは、尿路に何らかの病変がなくてはなりませんが、それはなさそうですね。

腫大した子宮が膀胱の上に乗っかって圧迫するということはありますが、それは頻尿を引き起こすことはあっても、排尿痛の原因にはなりません

 

b.月経痛

まずはなんといってもこれです。月経痛はかなり強くなります。

そもそも月経痛とは、プロスタグランジンの過剰産生によるものと考えられています。

組織が障害を受けると、細胞からアラキドン酸が放出され、最終的にプロスタグランジンになります。

これが痛みの原因物質です。

さらにプロスタグランジンは子宮を収縮させる作用もあるので、剥離した子宮内膜を排出するのにも一役買っているわけです。

子宮腺筋症は内膜組織が多いので、通常よりもプロスタグランジンの産生が多いと考えられ、月経痛も強くなるというわけです。

 

c.過多月経

これも多いです。子宮内膜が剥離する子宮内腔面の面積が広くなるため、それに伴う出血も多くなるからだと思われます。

 

d.外陰部痛

外陰部が痛いということは、外陰部に病変がなくてはなりません。仮に内膜症病変が外陰部にも発生していれば痛いでしょうが、そんな話は聞いたことがありません。

 

e.帯下の増加

帯下とは、腟から排出される分泌物のことですが、どこから分泌されるかというと、腟・子宮頸部・子宮内腔・卵管、のすべてがあり得ます。炎症が起これば血管透過性が亢進して浸出液が出ますから、腟炎や子宮頸管炎があれば当然帯下は増加しますし、癌があっても同様です。

また、炎症がなくても帯下が増加する場合もあります。

たとえば、排卵期には子宮頸管からの分泌液が増えます。精子を受け入れるため、泳ぎやすい環境にしているんですね。

あと、卵管が遠位部で閉塞している場合(卵管水腫)も帯下が増えます。というか、普段は変わらないのですが、卵管内に貯留した分泌液が、ふとした拍子に一気に出てくるということです。

子宮腺筋症は、月経期以外には炎症は起こらないので、帯下の増加はないです。月経期はきっと帯下も出ているんでしょうが、なにせ血液の方がずっと多いので、帯下の増加として自覚することはないです。

 

というわけで、正解はb,cです。

 

次回は「109I58 子宮筋腫」です。

(次回の問題)

109I58

48歳の女性。2回経妊2回経産婦。月経痛を主訴に来院した。5年前から子宮筋腫を指摘されている。最近、月経時の下腹部痛が強くなったため受診した。月経周期は26日型、整。持続10日間。血液所見:赤血球340万、Hb6.0g/dl、Ht26%、白血球4200、血小板33万。骨盤MRIのT2強調矢状断像を次に示す。子宮摘出術を行うこととした。それまでの管理として投与すべきでないものはどれか。

a.鉄剤 b.止血剤 c.鎮痛薬 d.エストロゲン e.GnRHアゴニスト