今回は産婦人科専門医試験の問題です

 

卵胞発育について誤っているのはどれか。

a.FSHは芳香化酵素活性を促進する。

b.FSHは顆粒膜細胞に作用する。

c.LHは莢膜細胞に作用する。

d.LHはアンドロゲン合成を促進する。

e.LHはTSH産生を促進する。

 

正解:e

 

顆粒膜細胞莢膜細胞について、少し掘り下げます。

 

卵子は上図のように、顆粒膜細胞層と莢膜細胞層で包まれていますが、単に囲っているだけではありません。

最外郭の莢膜細胞はLHレセプターを有しており、ここにLHが結合すると、莢膜細胞内でコレステロールからアンドロステンジオン、テストステロンが作られます。顆粒膜細胞はFSHレセプターを有しており、ここにFSHが結合すると、アンドロステンジオンがエストロン(E1)に、テストステロンがエストラジオール(E2)に変換されます。

 

このときに働くアロマターゼという酵素も覚えておきましょう。

乳癌治療ではアロマターゼ阻害薬(レトロゾール)を使用することがありますが、乳癌の中にはエストロゲン依存性に増殖するものがあり、アロマターゼの働きを阻害することでエストロゲンの発生を抑えることができるからです。

 

莢膜細胞層におけるLHの作用は複雑で、排卵前と後で振る舞いが変わります。

排卵前は青矢印の通りで、どんどんテストステロン産生の方向に進むのですが、排卵後は打って変わってP450c17を抑制するようになります。

これによりプロゲステロンからアンドロステンジオンへの変換が抑制され、プロゲステロンの分泌が増えるというわけです。

 

では選択肢をもう一度見てみましょう。

 

卵胞発育について誤っているのはどれか。

a.FSHは芳香化酵素活性を促進する。

b.FSHは顆粒膜細胞に作用する。

c.LHは莢膜細胞に作用する。

d.LHはアンドロゲン合成を促進する。

e.LHはTSH産生を促進する。

 

a:芳香化酵素とはアロマターゼのことなので、〇です。

b,c:上の図のまんまです。どっちも〇です。

d:アンドロゲンとは、男性ホルモンの総称で、テストステロン、アンドロステンジオン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)のことですので、〇です。

e:TSHと関連があるのはプロラクチンですね。TRHがプロラクチン放出因子なので、原発性甲状腺機能低下症ではTRHが上昇し、プロラクチンも上昇します。ただ、LHとは関係ないです。プロラクチンについては、高プロラクチン血症の問題で詳しく解説します。