昨日の深夜にたまたま標記の番組を最後の20~30分だけ見たのだが,そこで感じたことをここにメモっておこうと思う。
番組の内容は,およそ8.5メートルある腸には体中の免疫細胞の7割が集中していて,腸はいわば人体の「免疫本部」とでも言える働きをしているという話だった。そして,体を守るために腸内でコントロールされているはずの免疫細胞が,腸内細菌との関係で「暴走」することにより,いろんな重篤な自己免疫疾患やアレルギーを引き起こすのだという。
私はこの腸の免疫メカニズムをちゃんと理解しているわけではないけれども,この番組で説明されていることが実感としてとてもよくわかった。自分が腸に難治疾患を抱えていることも関係しているのかもしれないが,やはりお腹の調子が悪いときは風邪をひいたり湿疹ができたりするなど体のいろんなところに支障が出て,体全体の免疫力が落ちているのを実感するのである。お腹の具合が悪いと,精神的にも不安定になって集中力が欠如し,仕事や読書の能率もはっきりと落ちているのがわかる。逆にお腹さえ安定していれば,健常者と変わらず顔色もよく,体全体の細胞も活性化しているような感じで,ひとしなみやる気も出る。
腸が免疫力を司っているというのを日々,直に感じているのだが,多くの人はそうでもないかもしれない。これは病人の役得と言っていいのかわからないが,とにかく上の番組で解説していたことが,頭というよりは体で,お腹で,納得できた。なお昔,炎症性腸疾患の権威である医師が「自覚症状が一番大切だ」というようなことを言っていたのを思い出して,その意味がわかったような気がした。当時は「自覚症状が大切」とは医学も医療も頼りないなと感じたものだが,しかし体の状態のわずかな変化でも感じ取れるセンシビリティや感覚はやはり大切だ。
病気に関してだけなく,日常生活を生きていく中でも実感や自覚症状というものは大切にしていった方がよいと思う。人体のことがそのまま経済社会にあてはまるわけではないが,やはり自分の生活が苦しくなっているかどうかという実感は大切だ。苦しいと感じても,自分だけの責任として我慢したり無理をしたりすることは,問題を悪化させるだけである
私は一国の経済状態を判断する上で人々の生活実感が一番大切だと思っている。いくらGDPが増えても株価が上がっても雇用が改善しても,人々の生活実感が伴わないものは疑ってかかる必要がある。というか,私たちの生活実感と乖離したデータは大概が眉唾物といっていい。おまけにそういうデータや公式文書が政府機関によって都合よく改ざんされる世の中である。一体何を基準にして経済状況を判断していいのかわからなくなるが,そういう中で,やはり一番信用できるのは「自覚症状」=生活実感なのである。個々の生活実感に近いものを示すデータとして,個人消費や実質賃金などがあるが,これも,これほど格差が開いてしまった現状では多数の下層労働者の生活実感を反映したものとは言い難い。
エンゲル係数というのは,ある意味で最もわかりやすく人々の生活水準を示すものと言えるが,政府や御用経済学者らは,アベノミクスが始まって以来エンゲル係数が上昇し高止まりしている現状を生活水準の低下とは認めようとしない。「生活スタイルの変化だ」と詭弁を弄する始末だ。このように生活困窮化が明らかなデータが出ても,時の権力に都合よく解釈されてしまえば元も子もない。結局はどんなデータが出てもどうにでも解釈されてしまうのである。ちなみに,近年では小中学校の社会科教科書からエンゲル係数についての記述が消えた。.
どうも最近の政府発表の経済データはいかがわしいものが多い。また,そのデータの解釈も恣意的で偏っているものが多い。だからこそ何より人々の生活実感,報われない生活者の声を大切にしたいと思うのである。自覚症状に少しでも異変があれば医師に訴えるように,日常生活で少しでも苦しいと感じれば声を上げて社会に訴える。簡単なようで難しいことだが,これは人体でも社会でも大切なことであろう...。
