昨晩,記事を投稿しようと思ったのだが,緊急メンテとかで叶わず,今日に繰り越してしまった。朝っぱらから書くのも恥ずかしい話なのだが,最近,といってもここ数年のことだが,何だかとても涙もろくなってしまった。先日もテレビでPリーグ(女子プロボーリング)の決勝戦を中継していて,何とはなしに観ていたのだが,10回の最後の投球を投げる前に優勝が決まった選手が突然泣き出し,しかも泣きながら投げた最後の投球がストライクになって大泣きしたのを見ていて,こっちももらい泣きしてしまった。昨日の中日新聞に載っていた浜矩子さんの投稿記事によれば,「もらい泣きは大人の感性」ということらしいので(それに対して安倍=トランプは幼児的だと毒突いていた),遅まきながら大人としての感性が成熟してきたということだろうか。
ところで先週,掲題のドラマを四半世紀ぶりくらいに観たのだが,前に観たときは泣かなかったと思う。しかし今回は胸にじーんと来て,泣くのをこらえるのに必死だった。これも,先日書いた第4話(「港町に男涙のブルースを」)と同様,監督は神代辰巳なのだが,神代作品としては意外な面が出ていたように思う。
神代監督といえば,セックスを仲立ちにして男女のやるせない情感を描写するのが十八番(おはこ)なわけだが,本作では濡れ場は一切なく,子どもをメインにしてメルヘンな世界,牧歌的な雰囲気をうまく描き出していた。遺書を残して死んだお母さんを外国に行っていると信じている女の子(なつめ)を中心に話が進むのだが,実は神代監督の作品では,主人公がかつて遺児や孤児であったパターンが多い。前にレビューした映画「一条さゆり濡れた欲情」もそうだったし,神代監督とのコンビが多かったショーケンも実生活において複雑な出自を持っていた。恵まれない環境の中で生まれ育ちながらも,逞しく生き抜いていく男女の姿を情感たっぷりに,コミカルなタッチも交えながら表現していくのが,神代監督の真骨頂。
今回もそんな神代監督の演出が光る!いつも通り,役者に歌わせる歌(今回は「おーママママー」のフレーズが印象的なテンプターズの「お母さん」)が効果的だったし,農村の風景描写やロードムービー的なカットも素晴らしかった。
ドラマ終盤,水谷豊が畑を耕しながら
「コミューン作って,3人で住もう」
と言うシーンは,本作で最も心温まる場面だった。時代は70年代,日本にもまだそんな理想を語れる精神的な豊かさがあったのだなと,いにしえの昭和を懐かしく思った。
そして別れは,あっけなくやってくる。やり切れなさが残る・・・。夕日をバックにショーケンと水谷豊の二人が十字架を立て,絵を添えるシーンは美しくも,切なくて胸がしめつけられる。哀しいけれど,その哀しすぎる結末にこそ燭のような希望を見出したい。そんな美しいラストシーンだけは,四半世紀たっても記憶に残っていた。
今の時代では絶対に許されない残酷な最後なのだが,ハッピーエンドしか作らなくなった時代というのも気持ちが悪い。タバコも吸わなくなった品行方正なキャラクターとハッピーエンドに馴れすぎてしまった私たちは,逆に感情も想像力も硬直劣化してしまったのではないだろうか。
そんな心の貧しい現代では,コミューン的な発想も行動も出てこないでしょうね。「貧しい」というセリフが本作のキーワードになっています。物的環境は貧しくとも,精神的なつながりを大切にすることの豊かさが感じられるドラマでした。古き良き昭和の名作,☆百個です!!!
それから,今回は井上バンドのBGMはなく,バッハのプレリュードなど全編にクラシックが流れる異色の作品...
番組詳細BS12トゥエルビ