『日本レジスタンス俳句撰』(編集・マブソン青眼) | ブロッギン敗北【ご愛読ありがとうございました】

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アウシュヴィッツが陸の上のジェノサイド、ヒロシマ・ナガサキが空からのジェノサイドだったとすれば、水俣病は海からのジェノサイドである。(栗原彬)
そして21世紀のいま、史上最悪のジェノサイドがパレスチナの地で、殺人国家イスラエルによって遂行されている…


 先週,フランス出身で長野市在住のマブソン青眼さんから掲題の句集を送っていただき,一通り読んでみた。本書の序文によれば,1940年代初頭,太平洋戦争へと突き進む当時の時勢や軍事政権を批判する句を作ったとして,治安維持法違反容疑で若手俳人計44名が特高警察に検挙された。数ヶ月におよぶ尋問や拷問の末,うち13人が懲役刑を受け,消息不明になった俳人も少なくないという。

 本句集は,こうした軍国主義の犠牲になった俳人たちの作品をまとめたものであるが,それとともに,戦前における俳壇の統制・弾圧という,あまり知られていない事実を伝える資料にもなっている。当時と同じように言論統制が進められつつある今だからこそ,戦前に自由を守ろうと筆で抵抗した俳人たちがいた事実を知ること,そして彼ら・彼女たちの作品を詠むことは,すぐれて現代的に意味のあることのように思う。

 本句集には,マブソン青眼さんによる序文に続いて,弾圧された俳人たち計18人の各経歴と各作品四句が,日本語とフランス語で紹介されている(だからフランス語の勉強にもなります(^-^)/)。タイトルに「レジスタンス」と冠したのもフランス人らしいセンスで,「束の間」とはいえ日本でも抵抗運動(レジスタンス)があったことを暗示するグッド・ネーミングだと思った。また,各俳人には写真ではなく,銅版画の肖像画が付いていて,手作り感満載の句集である。

 なお,まだ残りがあれば,一冊2000円で送ってくれます(送料無料)。問い合わせはマブソン青眼さんまで。


 昼寝ざめ戦争厳と聳(そび)えたり   藤木清子

 どれにも日本が正しくて夕刊がばたばたたたまれゆく  栗林一石路

 一兵士はしり戦場生まれたり   杉村聖林子

 戦争が廊下の奥に立ってゐた   渡辺白泉



 弾圧事件が進行中でも,かつての俳友や才能ある俳人が次々と犠牲になっていく最中でも,一貫して(高浜)虚子はその弾圧を行っていた軍部に対して,自発的に礼賛しつづけたことが最大の問題である。(本書p.17)

 軍国主義が再び勢いを見せているこの頃こそ,1940年代に弾圧された俳人の名誉回復と弾圧に協力した俳人の責任追及を果たすべきであろう。二度とあのような大戦の道を歩むことがないように。(本書p.18)



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