先日スノーデンの映画について書いたときにカード統合の動きについても少し触れたが,昨日モブ・ノリオさんがブログで,図書館利用カードをマイナンバーカードに一体化させようという国の動きに警鐘を鳴らしていた(モブ・ノリオ ブログ ~Ministry Of Brainwash~)。全く同感である。今日はモブさんのブログを補足・敷衍する形で,それがいかに危険なのかを簡単にコメントしておきたい。
下のページに,高市早苗a.k.a.ジャパニーズ・ファシストがポイントカードのマイナンバーカードへの統合を指示したという記事がある。すなわち「各種ポイントカードや銀行、図書館、商店街などのカードをマイナンバーカードに一本化しようというもので、来年春以降の実現を目指す」と。
「総務省 ポイントカード一本化を検討へ」
すでに,任意ではあるがマイナンバーが銀行口座に紐付けられることは決まっているし,さらに各種ポイントカードがマイナンバーと関連づけられるとなれば,個人のお金のやり取りや購買履歴がビッグデータとして国家当局に収集可能となる。また,すでに指定難病の管理にはマイナンバーが利用されているし,再来年には医療分野全般にマイナンバーが使われることが検討されている。個人の財産だけでなく,病歴や通院履歴などの身体情報も国家に筒抜けとなるわけである。
さらに大きな問題は,図書館利用カードをマイナンバーに関連づけようとしていることだ。それはいったい何を意味しているか。単刀直入に結論を言えば,それは憲法が保障する「内心の自由」の侵害にほかならない。
戦前,特高警察は図書館の貸し出し履歴を国民の思想統制のために利用した。その反省から,戦後は公共図書館では貸し出し履歴を保存しないことになっている。誰がどんな本を借りて読んでいるかは,その人の思想傾向や主義主張,趣味嗜好などが分かる重大な個人情報である。そういう極めて重要なプライバシーが,マイナンバーカードへの統合によって国家や行政に掌握されるわけである。モブさんが言うように,《図書館で本を借りるという行為》が,そのまま《「私はこういう本を借りていて,こういう人間です」と国家に申告する行為》につながるとは,異常というほかはない。そんな情報を国家や行政に教える必要がどこにあるのか。
私がTUTAYA図書館などの民間図書館に反対するのも,民間業者に蓄積された「内心の自由」に関わる個人情報が漏洩して,思想統制や差別・排斥に利用されることを危惧するからである。
たとえばイスラームの過激思想に感化された人間を探し出すという名目で,図書館のビッグデータからイスラーム関係の本を借りた人間を調べ上げて,尾行,身辺調査をするという事態も当然予想される。
私は少し前から,些細な揉め事がきっかけで地元の図書館と「冷戦」状態にあるため,最近はあまり本を借りていないのだが,先日,目取真俊の本を一冊借りた。たとえば,沖縄の基地反対運動に賛同する者を割り出すためには,ビッグデータから,こういう目取真さんのような沖縄の市民運動家の本を借りた人物を調べ出せばよいのである。そうなれば,たちまち私も監視対象になる。
マイナンバーカードに図書館利用カードを統合することの隠された真の目的は,思想統制にほかならない。すなわち図書館利用カードから集められたデータを元にすれば,国家権力に批判的な思想を持っている人物を特定してパージし,その社会的影響力を削ぐことは十分に可能となる。そうなれば,国民の内面を国家に都合のよい価値観(国家神道・皇国史観)へと作り変え,皇国青年・乙女を大量生産してゆくという戦前的な事態も視界に入ってくる。現政権が目指す最終地点はここにある。
このようなマイナンバーの運用は絶対に許してはいけないし,そもそもこうした危険性のあるマイナンバー制度は廃止すべきだ。
以前は「はだしのゲン」が図書館から撤去されたり,右翼的な文献が司書の判断で除籍・廃棄されるなどの事態も,一部の図書館で発生した。今後はそういう蔵書の選別・統制の動きも出てくるだろう。教科書や教育現場でかなり国家統制が進んでいる上に,図書館の本も自由に読めなくなるとすれば,人としてもう終わりだ。多様な本がなくなり読めなくなれば,個人としての人格の陶冶も教養・知識の習得も見込めなくなり,知性や批判的理性の欠けた凡庸な人間ばかりがつくられていくだろう。
以上のようにマイナンバー制度は,個人の経済活動・身体・精神にわたって,あらゆる自由を根こそぎ奪う危険性を孕んでいる。すなわちマイナンバー制度によって憲法と人権は実質的に破壊される。緊急事態条項によって人権制限を厭わない自公政権だから,この動きは早晩,実施に移されるだろう。というか,もう来年春には一部実施となるのだ。この流れは何としても阻止しなくてはならない。そのためにも参院選で自公政権に打撃を与えたい。
安倍や高市などの和製ファシストの牛耳る自公政権が続けば,それほど遅くない時期にマイナンバー制度が国民の自由や権利を大幅に奪う日が必ずやって来る。監視国家というディストピアは遠い未来の話ではなくなってしまったのである...。