物質上、人工人為の進歩のみを以てせバ社会ハ暗黒なり。デンキ開ケテ世見暗夜となれり。・・・日本の文明、今や質あり文なし、知あり徳なきに苦しむなり。悔改めざれバ亡びん。今已に亡びツツあり。否已に亡びたり。
昨日は佐々木力さんの『東京大学学問論 《学道の劣化》』という本を読んでいて、上の田中正造の言葉に出会い、ハッとさせられました(p.246)。まさに現代の日本を予見するかのような言葉だったからです。「ゲンパツ開けて日本ハ暗黒なり!」
この言葉は、亡くなる年(1913年)の日記に記されたもののようですが、恥ずかしながら私は知りませんでした。日露戦争を経て電気が本格的に普及し始めた100年前、そのときすでに近代文明とその自然観に対し、根本的な疑問と批判を抱いていたことは、本当に驚かされます。私たちは、この正造の言葉に耳を傾け、真の文明とは何かを真剣に考え続けなければならないと思いました。
《東京電力が中部・東海エリアの家庭向けに発表した「プレミアムプラン」は、電気をたくさん使う方ほどお得になるプランです。目安としては、毎月の使用量が400kWh以上、電気代にして1万円以上。》
(「電力自由化比較ナビ」より)
(「電力自由化比較ナビ」より)
一方、「電気を使うほどおトクになるかも?」とかいう、上の東電のアホな広告バナーを見て、もう怒りを通り越して呆れ果ててしまった。100年前の田中正造から何も学んでいないどころか、5年前の原発事故すらもう忘れてしまっているかのようなキャッチコピーと料金プランです。消費者・市民が原発事故後、節電に努める中で、絶対に許せない経営態度です。正造が言うように、技術や知識はあっても哲学やモラルが全くもって欠けています。本来なら電気を使わない人ほど得にならなきゃいけません。新自由主義的な競争社会では、それはなかなかできませんが、しかしこういう闇雲な競争や利潤追求が公害や放射能汚染など取り返しのつかない事態を招く元凶であるわけです。21世紀の経営者に求められているのは、そういう長い先の未来や広い環境社会を見渡すセンスなのだと思います。その意味で、事故のことを何も悔い改めようとしない東電は即刻解体されなければなりません。
そして、私たち市民も意識を大きく変えていかないといけないでしょう。すなわち、田中正造が100年前に主張した「真の文明」論に謙虚に耳を傾けるなかで、経済的合理性(効率)や便利さを追い求める今の生き方を問い直し、新たな生き方を見いだしていかないといけないと思うのです...。
最後に、もう一つ別の正造の言葉を引いておきたいと思います。これも佐々木さんの本から知ったものですが(p.256)、この正造の精神でもって東電や原子力利権に立ち向かっていきましょう。
最弱を以て最強ニ当るにあり。