民主党の「難病対策」を読んでみた! | ブロッギン敗北【ご愛読ありがとうございました】

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アウシュヴィッツが陸の上のジェノサイド、ヒロシマ・ナガサキが空からのジェノサイドだったとすれば、水俣病は海からのジェノサイドである。(栗原彬)
そして21世紀のいま、史上最悪のジェノサイドがパレスチナの地で、殺人国家イスラエルによって遂行されている…


 今日は,最大野党・民主党の「難病対策」を読んでみようと思います。

 民主党のマニフェストでは,10の分野で主要政策が述べられています。その中から「難病対策」に関わる部分をピックアップしていきます。

 まず「01|経済」の分野で,「成長戦略」という項目の中に次のような記述があります。


●研究予算の増額・一体的な運用を図るとともに、医薬品・医療機器の審査の迅速化を進めるため、臨床研究拠点の拡充、医薬品医療機器総合機構の機能強化を進め、ライフ産業の基盤を強化します。

●研究大学の増強、国際的な研究拠点の充実、研究者の処遇改善などの研究基盤整備を行い、再生医療、バイオ、ICTのイノベーションの推進、海洋、宇宙の開発・利用を進めます。



 ここは,成長戦略の一環として医療分野の産業基盤や研究基盤の整備を行うことを表明した箇所ですが,難病にも直接・間接に関わるものと思われます。「医療品・医療機器の審査の迅速化」とか「臨床研究拠点の拡充」,「再生医療」などが推進されることは難病患者にとって望ましいことですし,是非とも進めてほしいと思いますが,ただ成長戦略として行われるというところで自ずから限界が出てくるのではないかと思います。産業として成り立たない場合は予算がつかないでしょうからね。このように成長産業を興し育てるという成長戦略的立場を医療や医薬品開発に持ち込むのではなくて,国民の命と健康を守る国家事業として難病の研究基盤整備は行われるべきだという風に私は考えています。すべての病気が成長産業としてマーケットメカニズムに乗るはずはありませんからね。難病の研究基盤を整備するという方針自体にはもちろん賛成です。それから,機能を強化すると言っている「医薬品医療機器総合機構」という独立行政法人は何モノなんですかね。ちょっとよくわかりませんが,この組織にも,先ほど言ったような成長・利益優先ではなく,患者の命を救うという使命を持って任に当たってほしいと思います。ちょっと偉そうなこと言いました。

 次に,難病対策を成長戦略としてでなく,社会保障として取り上げている部分を引用します。「02|社会保障」分野の「医療」という項目の中です。


●難病対策をさらに拡充します。高額療養費制度の拡充により、治療が長期にわたる患者の負担軽減を図ります


 「さらに拡充します」の「さらに」が何を内容としているのか,よくわかりませんが,とにかく難病対策の拡充を宣言してくれたことは,公明党と同じく評価したいと思います。それから,高額療養費制度の拡充に言及してくれたことも評価に値するでしょう。難病や長期慢性疾患の患者は必然的に治療が長期にわたり,したがって費用もかさみます。長い療養生活において,お金の問題は患者にとって切実な問題であり,そのことに配慮したこの一文は,大変有難く感じました。公明党とは,この一文で決定的な差が出たような気がします。昨日も引用しましたが,公明党のマニフェストには次のように書かれていました。


●難病関連2法(難病医療法、改正児童福祉法)に基づき、難病対策を大きく前進させます。あわせて、効果的な治療方法の研究・開発を促進します


 最初のセンテンスは,両党どちらも社会保障としての難病対策を推進すると言っているわけですが,第二センテンスが違うわけです。公明党では話が研究開発の方に飛んじゃってるのに対して,民主党は,あくまで社会保障としての難病対策で一貫しています。たかが一文ですが,公明党の勉強不足,不誠実,ウソが透けて見えます。

 とはいえ,これは公明党と比較した場合の評価であって,民主党の難病対策自体,これだけでは十分とは言えません。もう少し見ていきましょう。

 「04|女性・共生」の分野で,「障害者」という項目において「難病患者」という言葉が出てきます。


●障害種別や程度、年齢、性別を問わず、難病患者も含めて、安心して地域で自立した生活ができるよう基盤整備、人材育成に取り組みます。

●障がいのある人もない人も共に生きる共生社会を実現するため、障害者差別解消法の実効性のある運用をめざします。



 ここでは,障害者も難病患者も安心して暮らせる生活基盤の整備ということを謳っています。非常に重要な指摘だとは思いますが,如何せん,これだけでは抽象的すぎて,何をやろうとしているのか,具体像が見えてきません。それでも,わざわざ「難病患者」と明記してくれた点は,評価したいと思いますね。そこで,「障害者差別解消法」の運用ということなんですが,これは障害者手帳のない難病患者も対象となるんでしょうか。再来年の施行だから,まだはっきり決まっていないと思いますが,是非その方向で検討してもらいたいと思います。上の2項の流れでいくと,民主党は難病患者も含める方向で考えてくれてるようにも見えますが,どうなのでしょうか。それとも,「障がいのある人もない人も」とだけ言って,「病気のある人もない人も」とは言っていないから,その方向では考えていないのでしょうか。ここだけでは判断できませんね。ともあれ,障害者差別解消法の実効ある運用によって,障害者や難病患者に対する差別のない社会,共生社会を築く第一歩になれば,と私も願います。ちなみに,個人的な経験から言うと,治らない病気があるために就職を差別される,というか就職が不利になったりできなかったりする現状は,何とか改善してほしいなと思います。難病は障害者の法定雇用率に含まれないので,就職が極めて困難です。若い患者さんのためにも,病気を理由に就職が不利にならないような法制度の整備(障害者差別解消法の運用)と,あとは社会や職場の理解・協力をお願いしたいところです。

 ちょっと話が逸れましたが,民主党の難病対策は大体以上です。自民党や公明党と比べて,発想や方向性はいいのですが,具体性が足りません。具体的だったのは,高額療養費制度の拡充という点だけでしょうか。したがって,このマニフェストだけでは支持するに足る情報と説得力に欠け,信用が置けないという感じがします。民主党のマニフェストには,もっと大胆で革新的な改革案,もっと細やかな配慮の行き届いた政策案を期待していたのですが,期待はずれでした。というのも,前回2013年の参院選のマニフェストとほとんど内容が同じだからです。ここまで書いてきておいて今さらという感じですが,上に書いた難病対策もほぼ前回と同じ内容です。全体的には,むしろ前回の方がわかりやすい紙面構成になっていたように思います。例えば社会保障分野におけるキャッチ・フレーズは,前回では「いのちを大切にする社会へ」でしたが,今回は「一人ひとりを尊重し共に生きる社会をつくる」となっています。どちらが良いとは言い切れませんが,前回は「いのち」の部分を赤で強調していて,私としては前回の方がインパクトが強くて良かったように思います。

 今回は準備時間が足りなかったということでしょうか。それにしても野党としてのチャレンジ精神が足りないというか,本気で自民党に代わる政権をつくろうといった意気込み,野心を民主党のマニフェストからは感じ取れませんでした。マニフェストも一冊の本,作品と考えれば,知識・情報を伝えるだけでなく,そういう感情や意志に訴える部分も大切だと思うのです。誰が書いたのか知りませんが,経済政策の三本柱にしてもアベノミクス三本の矢と変わり映えしませんし,原発政策でも「原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ再稼働」とか,自民党との対抗軸がはっきりしないショボい内容と表現ばかりで,これでは読者の気持ちを動かせられないでしょう。マニフェストがすべてではありませんが,とりあえずこのマニフェストだけで判断すると,民主党は政権交代どころか,そのうち野党第一党の座も危うくなるかもしれませんね。

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