アベコベノミクス | ブロッギン敗北【ご愛読ありがとうございました】

ブロッギン敗北【ご愛読ありがとうございました】

アウシュヴィッツが陸の上のジェノサイド、ヒロシマ・ナガサキが空からのジェノサイドだったとすれば、水俣病は海からのジェノサイドである。(栗原彬)
そして21世紀のいま、史上最悪のジェノサイドがパレスチナの地で、殺人国家イスラエルによって遂行されている…


 以前予告したことなのだが,訴訟の準備や母親の入院問題などさまざまな事情が重なってブログに向かう時間的・精神的余裕がなく,今後更新が滞ってしまうであろうことをお許し願いたい。しかしブログに書きたいことは募りストレスが溜まりっぱなしである。今日もかなりぞんざいな内容になると思うが,言いたいことは言ってスッキリしたい。

税制改革の環
 しつこく消費税増税問題なのだが,世論調査によれば50%以上もの人が消費税増税に賛成だそうだ。本当なのかと目も耳も疑ってしまう。「反対は反逆である」という全体主義的な状況が国民を覆い始めているのだろうか。だとしたら憂慮すべき事態である。私の周りの良心的なブロガーさんたちには,今回の増税や経済対策の決定に少なくとも懐疑的であるか反対の人が多い。いろんな立場からの批判的意見があるが,前も書いたように私は,社会保障と税の一体改革の必要を認めるけれども,その税とは消費税だけであるはずがなく税制改革全体の中で消費税増税を位置づけるべきであり,その点からすれば所得税や法人税,相続税の改革が先であると考える。所得税は累進性強化によって増税されるべきだし,減税され続けてきた法人税は引き上げられるべきである。また証券優遇税制が今年で打ち切られるにしても,その税率は20%よりもっと上げるべきだし,資産課税も強化されるべきだろう。

所得の再分配こそ大切
 政府の立場にある者,あくまで所得の再分配という観点を堅持すべきであり,消費増税の前にまずは格差是正,不公正税制の改革を先行すべきだと思う。社会保障も広く所得の再分配機能を果たす制度にほかならず,その所得再分配制度の全体像の中で社会保障制度改革も税制改革も位置づけられて実施されていかねばならない。消費税の増税が逆進性を強化するものであることは言うまでもない。その逆進性は社会保障の充実によって十分補填できるという考え方も成り立つが,それはあまりにも国家経営として非効率でないか。税制全体の改革により,ある程度格差是正,所得の再分配を実行できるのならば,それを先行すべきだし,そういった然るべき税制改革の後に消費税率は引き上げられるべきだろう。国債の残高を含めた国の借金が1000兆円を突破したとして,財政健全化を口実に消費税増税やむなしという国の宣伝に惑わされてはいけない。国家財政の問題は行財政改革さらには議会改革の中で解決していかねばならない課題である。なのに公務員改革も議員定数削減も先延ばしし,消費税大増税だけを先行実施するのだから,財政赤字のつけを全部国民が負う格好である。

法人税減税の埋め合わせとしての消費増税
 安倍首相のやろうとしていることはあべこべである。社会保障と税の一体改革という建前から出発しながら,消費税増税と同時に,法人実効税率引き下げを画策して何とか復興特別法人税の前倒し廃止を決定してしまった。つまり消費税増税は社会保障とか財政再建に充てられるのではなくて法人税減税の埋め合わせという位置づけを与えられてしまっているのである。ここに安倍の財政観というか経済観がくっきりと表れている。それは大企業・経団連に便宜を図り,そこを起動点にして経済を成長させようというものであるが,そこには有効需要の視点は抜け落ちている。安倍の考えでは,復興特別法人税の廃止によって企業がその内部留保増加分を労働者への分配に回し,かくして賃上げ→消費拡大→企業の生産拡大→経済成長という好循環を描いているのだろうが,企業が復興特別法人税の廃止による内部留保増加分を労働者に還元するという保証がどこあるのだろうか。また同じく,廃止分を設備投資に回して企業の活性化に繋がる保証がどこにあるのか。企業がそれをするのだったら,これまでの減税ですでにやっているはずだ。法人税減税など,すでに270兆にものぼる企業の内部留保がさらに膨れ上がるだけのBad Governmentだ。一方,私たちに課せられている復興特別所得税は25年間取られ続ける。これを廃止するというなら,個人消費が拡大するという図式を描くこともできよう。法人税の引き下げで潤うのは一部大企業の懐だけだ。

ブロッギン・エッセイ~自由への散策~
(9/22付「しんぶん赤旗」から借用)


あべこべのデフレ原因論
 安倍の課税政策も経済政策も日本経済に悪影響を与えるだけのものである。アベノミクスの金融緩和を唱導するリフレ派(マネタリストの亜流)の多くは,デフレの原因が賃金下落ではなく金融緩和の不徹底にあり,デフレこそが賃金低下の原因であると説くが,これも全くあべこべの議論である。日本のデフレ不況の原因をひと言で片付けることはできないけれども,私は前にも書いたように,日本の不況は国内市場の縮小を根っこに持っていると考えている。それは一つには人口減少,特に生産年齢人口の急速な減少と深く関係している。さらに投機資金の流入による円高など複合的な要因が絡んで現在の不況を作りだしていると考えられる。少なくともここで言えるのは,通貨量の増加論者は今の不況の原因構造には近づけないということである。インフレもデフレも貨幣量によって決まるという考えに胡座をかき,それゆえデフレは貨幣を増やせば解決するという結論を引き出してくることが,いかに安易で事実に基づいていないかはこれまで何度か書いた。

国内市場に起因するデフレ
 マネーサプライの変化が物価水準を決定するのではない。逆で,物価や所得水準の変化が社会に出回る貨幣量を決定するのである。リフレ派連中は原因と結果を取り違えている。つまりマネーサプライというものは,経済内部の経済活動にもとづく貨幣需要によって内生的に生じるものであって,貨幣需要から独立して外生的に増加させうるものではないからである。通貨量→物価ではなく,物価&所得→通貨量という因果関係を押さえることが肝要である。だから,貨幣量増加の原因たる物価と所得の決定メカニズムを理解することが必要であり,そのことによってデフレの真の原因を明らかにすることができるだろう。また,通貨供給をケチったことがデフレの原因だとするリフレ派の議論がいかに稚拙であべこべなものであるかがわかるだろう。長くなるのでこれ以上は述べないが,少なくとも,デフレの原因は国内経済内部(有効需要)の構造にメスを入れなければ明らかにできないのであり,その意味では一つには賃金構造の歪み(非正規雇用の増加や賃金格差の拡大など)が景気に重大な影響を与えていると考えるのは妥当であろう。

インフレ期待の信仰
 金融緩和を主張するリフレ派の中にはデフレの原因を賃金下落に求める多少まともな論者もいるようではあるが(池田信夫など),それは労働力の流動化という狙いがあってのことではないだろうか。彼らは労働市場を需要と供給の関係で理解しようとし,できるだけ規制を撤廃し労働市場を徹底的に流動化すれば均衡に達すると信じ込んでいる。そしてリフレでインフレ期待が高まれば,景気は好循環軌道に入り賃金は増加するだろうと考える。デフレの原因を賃金下落に求めるにせよ,そうでないにせよ,所詮リフレ派はインフレ期待を抱かせることさえできれば実体経済を改善できると思い込んでいるにすぎない。リフレ派の議論はインフレ期待に対する一種の祈りに近い。こんな非現実的な議論は到底信用できるものではないだろう。

リフレ政策は不況の構造を変えられない
 経済は人間の営みであり,人々の活動の動機や期待は多様で不確実なものである。それを一律のものと考え,その方法論的個人主義の観点から市場にすべてを委ねれば均衡(調和的な経済状態)が達成されるというリフレ派やマネタリストの議論は,一見科学的で美しいものではあるけれども,事実との懸隔は甚だしい。彼らの主張に則ってリフレ政策が進んでいくならば,人間が深く関わる医療,福祉,教育などの分野にも限界的にマーケットメカニズムが導入されて,改革という名の下に犯罪的な影響が日本経済に及ぼされるだろう。リフレ政策は構造に触れるものではあり得ない。結局のところ,リフレ派に先導されるアベノミクスの帰結は,企業の内部留保をさらに積み上げ,労働市場の流動化(解雇特区の創設や日雇い派遣の解禁など)で労働者の状態を一層不安定なものにするだけである。とりわけ日本経済にとって致命的なのは,中間層の崩壊である。

不確実性に向き合った議論を
 経済を論ずる者にとって大切なのは,理論の美しさではない。ファクトファインディングの上に立って理論を展開し,社会にとって有意義な結論を導き出すことである。今,安倍政権の下で次々と立案されているリフレ的,ネオリベ的な政策を見ていると,ファクトファインディングという意味ではあまりにも思慮が浅く,困難で複雑な現実に向き合っていないように思う。

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