下の詩は昔,中学国語の教科書に載っていた詩で,個人的には授業をするのに大変苦労した思い出がある。教える側がちゃんとその光景,実態を思い描いていないと,生徒に教えられないからだ。そんな個人的な思い出はともかく,先日の原民喜とともに,この峠三吉は,永久に忘れることのできない原爆詩諸篇を私たちに遺した。特に峠の作品はどれも原爆憎悪・戦争反対の感情がストレートに反映されており,読む者にもその意思が直に伝わってくる。
原や峠の作品によって,「コレガ人間ナノデス」「にんげんから遠いものにされはてて」という原爆被災の人類的意味が,詩の言葉で私たちの胸に深く刻みつけられたのである。
仮繃帯所にて 峠 三吉
あなたたち
泣いても涙のでどころのない
わめいても言葉になる唇のない
もがこうにもつかむ手指の皮膚のない
あなたたち
血とあぶら汗と淋巴液(リンパえき)とにまみれた四肢(しし)をばたつかせ
糸のように塞(ふさ)いだ眼をしろく光らせ
あおぶくれた腹にわずかに下着のゴム紐だけをとどめ
恥しいところさえはじることをできなくさせられたあなたたちが
ああみんなさきほどまでは愛らしい
女学生だったことを
たれがほんとうと思えよう
(略)
何故こんな目に遭(あ)わねばならぬのか
なぜこんなめにあわねばならぬのか
何の為に
なんのために
そしてあなたたちは
すでに自分がどんなすがたで
にんげんから遠いものにされはてて
しまっているかを知らない
(略)
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