原発は国家の狂気 | ブロッギン敗北【ご愛読ありがとうございました】

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アウシュヴィッツが陸の上のジェノサイド、ヒロシマ・ナガサキが空からのジェノサイドだったとすれば、水俣病は海からのジェノサイドである。(栗原彬)
そして21世紀のいま、史上最悪のジェノサイドがパレスチナの地で、殺人国家イスラエルによって遂行されている…


 今日も非難されることの多い記事だと思うが,あえて書く。

 昨日も少し触れた。震災後,「人間の存在の尊厳」が侵され続けている現実。3.11を境に,人が普通に生活していた所から人がいなくなった。そこにいたはずの人々は避難を強いられ,慣れない土地と住宅に否応なく暮らす。すなわち3.11以後,住み慣れた故郷に住むという当たり前の権利が奪われ,人の尊厳がなおざりにされ続けた。昨日の中日新聞「社説」が書いていた。「人は町とともに,町は人とともに生きる」。その通りだと思った。

 原発の事故対応に関しては,私自身,人の命や健康,将来を第一に優先して,放射線量の高い地域からはできうる限り避難すべきだと考えてきた。福島だけでなく,東北,関東さらには日本全体の問題として。そういう考えは今もあるが,しかし他方で,人の暮らしや故郷への思いも同じくらい大切にしなければならないと思い直すようにもなった。どちらかに優先順位が与えられるという問題ではないだろう。問題なのは,線量数値によって一律的に避難を強制する国など行政側の対応である。避難を大前提にした対応ではなく,できる限り速やかなる住民の帰還を考えた実態の調査・対策・支援を望む。

 チェルノブイリ原発事故でも,移住を望む人々と住み続けることを望む人々との間で意見が二分されたが,結局住民は強制移住を余儀なくされた。それを考えると,日本も旧ソ連と同じく,住民の多様な意思や権利を無視した社会主義国家ではないのかとも思えてくる。

 社会主義国家・ソ連はチェルノブイリ原発事故で滅んだ(と私は思っている)。国民がソ連と原発の存続を許さなかったからである。国民は原発事故によって国が狂っていることにようやく気づいたのである。スターリンのころはまだ気づかなかった。国に逆らえば殺されたが,おとなしく何も言わず抵抗しなければ殺されない可能性は高かった。そういう計算ずくが通用した。スターリンの人格は国家と結びついていたけれども,国家そのものではなかった。というのはスターリンが死ねば国家も滅びるということではなかったし,ブレジネフが書記長になればブレジネフ的な独裁国家ができ,ゴルバチョフが指導者になればゴルバチョフ的な国家になったからである。だが原発事故は違った。それは有無を言わさず人々から故郷を奪い,国土・海・空を汚し人を住めなくした。独裁者によって一部の国民が殺されるだけのことではない。国民全体,国土そのものが国家によって集団自決を強いられるという危機感を国民は抱いたのである。それが人々を大規模な集会やデモに向かわせ,戦車の大砲と対峙しても国民は抵抗をやめなかった。そして,「緑の世界」を中心にした反原発運動がソ連の解体,共和国の独立を導いた。そう言って大袈裟ではない。

 私はチェルノブイリ原発事故からソ連崩壊までの顛末を見ていて,国と原発が一心同体であり,区別できないものであることを学んだ。スターリン時代はスターリンが間違っていたが,チェルノブイリ事故は国家そのものが狂っていることを示した。原発事故は国家の狂気の表れだから,国家はできるだけその狂気を隠そうとする。その狂気に国民が気づくかどうか。ソ連ではペレストロイカ・グラスノスチが進む中で事故情報が開示されていったが,日本はソ連より情報統制が厳しい。マスコミによる洗脳も圧倒的である。

 今,日本の各地で原発事故に備えての地域防災計画が策定されつつある。いまだ原発事故の影響で故郷に戻れない人々が多くいて,人間の尊厳が奪われている中で,各自治体がまるで国の一機関のように原発再稼働に向けて進んでいる状況は,普通の感覚からして尋常なものとは言えない。今も放射性物質が日本を覆うなか,景気浮揚で国民を浮かれさせ,原発再稼働を当然のように決め込んでいる政権は絶対に許されるものではない。冷静に考えて,原発を止めることしか原発事故に備える防災計画などないだろう。原発事故は起こったら終わりなのだ。原発事故の防災計画という表現自体が形容矛盾である。国民は国家がトチ狂った用語法を使って狂気を発動していることに気づくべきだ。そして「人間の存在の尊厳」を脅かす不正義に対しては戦わなくてはならない。四半世紀前のウクライナの人たちのように。3.11は3.11であるだけでなく,4.26とも深くつながっていることを,今日の日に改めて強く思う。

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