反日デモが突き付けるものは | ブロッギン敗北【ご愛読ありがとうございました】

ブロッギン敗北【ご愛読ありがとうございました】

アウシュヴィッツが陸の上のジェノサイド、ヒロシマ・ナガサキが空からのジェノサイドだったとすれば、水俣病は海からのジェノサイドである。(栗原彬)
そして21世紀のいま、史上最悪のジェノサイドがパレスチナの地で、殺人国家イスラエルによって遂行されている…


先に角を打ってしまった!
 尖閣諸島の国有化に抗議する反日デモが中国全土に広がり,一昨日の柳条湖事件81年目の「国恥日」でおそらくはピークに達したと見られるが,収束の気配はない。国有化によってこういう事態を招くことは,中国という国についてある程度研究し情報収集していれば予測がついたはずである。わが読者さんの上手い喩えを借りれば,将棋で全く読みを入れずに頭の弱い大駒の角を打ったようなものである。現政権の中国外交は,昨年末,野田首相の訪中を南京事件の日に調整するなど,お粗末で思慮を欠くものと言わざるを得ない。

決めなくていいことを決める政治
 石原都知事の挑発・謀略にまんまと乗せられて,オリンピックによるナショナリズム高揚の熱気冷めやらぬ中,野田政権は早々に国有化を決めてしまった。もちろん,そこにはアメリカの強い干渉があったことは容易に想像できるが,それにしても胡錦涛主席による国有化反対の意思表示があったAPECの直後,そして「国恥日」の直前。最悪のタイミングである。決めなくていいものを夙に決め,決めなくてはならないものをいつまでも先送りする。目先の利害にとらわれて大局を完全に見失い,政治の優先順位が転倒した結果である。

政治の役割
 しかも,この事態に至っても在留邦人12万人は見捨てられたまま,何の外交上の対策もとられていない。日本人の生命と財産を守るのが日本政府の役目のはずだが,ここでも「想定外」とか「自己責任」という責任逃れをするのだろうか。中国の産業の近代化を助け,また奨学金や環境整備などで中国に社会貢献してきた日本人や日本企業を早急に保護・支援することが,政治の役割であり,そのためにも政治家はあらゆる外交ルートを使って中国に働きかけ,できれば野田首相が胡錦涛と直接話し合うべきだ。こうした緊急事態にはそれ位の指導力が求められるのであり,決められる政治とか政治主導とかは本来,そういうものではないか。

解決不能の領土問題
 尖閣諸島の領有権(財産権)については保留するが,その施政権(信託統治)は日本にあると私は理解しているが,ややこしくなるので,今日はこの点については触れない。とにかく尖閣をはじめ領土問題は,国際法だけで簡単に解決のつく問題ではない。中国は1943年のカイロ宣言を盾にするのだろうし,日本はサンフランシスコ平和条約や沖縄返還協定を根拠にその領有権を主張するだろう。資源も絡む領土であるから,お互い決して譲らないだろう。特に力による実効支配が幅をきかせている,この東アジアでは,竹島や北方四島の問題もそうだが,国際法による解釈だけでは解決は不可能だ。現実的には国連を仲立ちとした共同管理の方向に進むしか,紛争を避ける方策はないだろう。そうしなければ,いずれ戦争になるほかない。

今こそ歴史の清算を
 作家の高村薫が言うように(9/18中日新聞・夕刊),中国の全土的な反日デモを受けて,今こそ日本は「主体的で孤独な歴史の清算」を求められていると見るべきである。すなわち過去の侵略戦争を日本政府として謝罪し反省すること,そして道義的立場から十全な補償をすることである。日本人が真正面から過去に向き合わない限り,中国人も韓国・朝鮮人も未来に向けて日本と共に進もうとはしないだろう。先の戦争を未だに侵略戦争と認めない政治勢力が少なからず国内に影響力をもち,有力政治家が中国への強硬論を平気で放言する国に対して,アジア諸国が信頼を寄せることはない。

中国人の反日感情
 今回,中国の反日デモがこれだけ大規模化し過激化したのは,根底に過去の侵略戦争の問題があるからにほかならない。いわゆる15年戦争の中で日本軍は中国の領土を侵略し,夥しい人数の中国人を犠牲にした(しかもその多くは虐殺死)。その過去を正視せず,その贖罪を否定しようとする日本人が,1千万人もの同胞を殺害された中国人にどう映るか。中国人の反日感情というものは,確かに「反日教育」や「愛国教育」に根ざしている面もあるが,それと同時に,子どもの頃から犠牲者の体験を直接・間接に聞いて育ってきたことにも由来する。日本人が広島・長崎の被爆者や空襲の被害者の声を聞いて戦争の悲劇を学んできたように。

戦争の記憶と未来と
 戦争の記憶は時間の経過によって薄らいでゆくものであってはならず,永遠に語り継いでいかねばならない。日本にとって戦争の罪責と贖罪は永遠に消えることのない不変のテーマである。日本がその重たいテーマを背負って中国やアジアと向き合う時,その時はじめて領土問題にも解決の光が差しこむものと思う。その光を呼び込むのは,中国でも韓国でもない。ましてやアメリカではない。日本自身なのだ。


*********************************
   ※パソコン用ペタこちら↓↓↓
ペタしてね
   ※携帯用ペタこちら↓↓↓
ペタしてね

   ※メールはこちらまで!eijing95@gmail.com

アメンバー募集中